新型コロナウイルスの感染拡大にともない、全土でロックダウン(都市封鎖)が行われているイギリス。南西部ウェールズにある町、ランディドノーでは予期せぬ形で「ロックダウンの反動」が表れた。
近くの丘から、野生のカシミアヤギが群れで降りてきたのだ。
外出制限により人が出歩かなくなった町では、ヤギが自由気ままに行動している。
道路を塞いだり、人家の生垣を食べたり、教会の敷地内の芝生でくつろいだり…。通りを歩いてウィンドウショッピングを楽しんでいるかのようにも見える。
マンチェスター・イブニング・ニュースの動画プロデューサー、アンドリュー・スチュアート氏のツイートが拡散され、ネット上で話題になった。
ツイートに添付された動画には、生垣を頬張り優雅に歩き回るヤギたちの姿がおさめられている。
「月曜のヤギ最新情報。また戻ってきた。全く気にしていないご様子」
「自分たちが何をしているか、自覚があるみたい。生垣をランチにしたあと、教会の庭へ寝に行ってしまった」
地元の言い伝えでは、ペルシャ(現イラン)の王が1837年、ビクトリア女王の戴冠記念にヤギを贈った。そのヤギの子孫が町近くのグレートオーム岬の丘に生息しているのだという。
しかし地元の歴史家イブ・パリー氏は、贈られたヤギは、すでに丘にいた群れに加わっただけだと考察している。
いずれにせよ、住民はヤギの存在を尊重しながら関係を築いてきた。とはいえ、難しい面もある。
「(みんなヤギは大好きだけど、ヤギは町を荒らすんだ」。住民のティム・ガーバットさんは語った。
「綺麗に植えた植物が全部食べられてしまって、そこら中にフンもする。しかもかなり頻繁にね」
別の住民、サイモン・ケンドルさんは「ヤギの匂いは良いとは言えない」と、不満を漏らす。
「消臭剤なんて、絶対に使っていないだろうしね」
ケンドルさんは、普段ヤギの群れがいるグレートオーム岬の丘の近くに10年住んでいる。
彼の最大の不満は、匂いのほかにある。それは、ヤギたちの「こだわり」が非常に強いこと。
有毒な成分を含むスイセンには、ヤギたちは「絶対に触れない」と語る。
「本当に選り好みするんだ。とにかくローリエ(月桂樹の葉)が好きで、うちのローリエを残さずむさぼり食う」
「きっと焼いたら美味しいんだろうけど、僕はしないよ」と冗談まじりに話した。
ランディドノー出身で、町の薬局に勤めるサンドラ・リッカーズさんは、ヤギたちの後を追っている。彼女はヤギの侵攻をそこまで気に留めていない様子だ。
「明日、一緒に自撮り写真を取ろうと思う」と、まるでスターの追っかけをするかのように語った。
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子