体を張ったパフォーマンスで物理学を教える教授 生徒が撮影した動画がネット中で話題に

    69歳のデイビッド・ライト教授は、実験やスタントをふんだんに用いた授業で、「科学に興味があるわけではない」学生たちの心を鷲掴みにした。授業の様子をおさめた動画がツイッターで話題になっている。

    デイビッド・ライト教授は、1バージニア州にあるタイドウォーター・コミュニティ・カレッジに1974年に来た時、45年後も同じ大学で教鞭を執っているとは想像していなかった。

    「大学院を出た後の、最初の仕事でした」と69歳のデビッド・ライト教授はBuzzFeed Newsに話した。

    「その後の人生で、ずっと同じ場所にいるとは考えてもみませんでしたが、素晴らしい場所でした。本当に楽しく仕事をすることができましたよ」

    そして今も楽しく教鞭を執っているライト教授は、学生たちを惹きつけるために、これまでに常に新しく創造的な方法で講義を行ってきた。

    ライト教授の概念物理学の講義を受講する学生の多くは、教育学または健康科学の専攻で、彼らはこの講義を必修科目または選択科目として受講している。

    「私の講義を受けている学生の多くは、エンジニアでもなく、科学に興味があるわけでもありません。これまでの人生で、常にうまいこと物理学を避け続けてきた学生なのです」とライト教授は話した。

    ライト教授は数学の問題を解いたり、科学の原理を議論したりするのではなく、実演を通して科学の驚異を実証する講義を行っている。液体窒素を使って学生にアイスクリームを作ったり、空気の抜けた風船を講義室に飛ばしたり、炎を発生させたりと、エンターテイメント性が高い。

    「こういうパフォーマンスすると、学生は非常に食いつくんです」。ライト教授は話した。

    「まず最初に、これから起こる可能性のあることについて話します。その後、デモを行います。デモの後で、なぜこのような現象が起こったのかについて議論します」

    「私は、物理学の法則が現実の世界にどのように適用されるかを、学生に示そうとしています。そして学生たちも、物理学の法則を目の当たりにできることを本当に楽しんでいるようなのです」

    ライト教授の講義を専攻の必修科目として受講している学生の1人で、超音波検査専攻の2年生、エリカ・チャーチさんに話を聞いた。

    「最初は、少し不安になったこともあります」

    「最初の講義の日、先生は割れたガラスが敷き詰められた上を歩いていたんです。ちょっとこの先生おかしいんじゃないの?とも思いました。講義でこんなことをする教授って、これまでに見たことがなかったものですから」

    そしてチャーチさんは、ライト教授の「スタント講義」を学期中ずっと撮影していた。そして12月12日、編集してまとめた動画をTwitterに掲載した。

    動画はネット中で人気となり、24時間で1000万回以上視聴されることとなった。

    Y’all need to see this video collage of all the crazy things my Physics Professor did this semester😭. He’s in his 70s and is still doing all of this for us🥺💛

    「みんなこの動画見て。物理の教授が今学期やってたクレイジーなこと😭彼は70代なんだけど(実際は69歳)、私たちのためにまだこんなとをやってくれるの🥺💛」

    「もうスマホがひっきりなしに鳴り続けています」とチャーチさん。

    「ライト先生は、SNSでもものすごい数のファンがいるんですよ」

    @its_riccaa All that energy and enthusiasm, I bet y’all learned and retained all kinda information. This is how you inspire future generations

    「このエネルギーと情熱で、生徒たちは多くを学んで忘れないと思う。これこそが未来の世代をインスパイアする方法だ」

    @its_riccaa @__Tay2x This is a man who genuinely loves to teach people 😍🥺

    「教えることを心から愛している人だね😍🥺」

    そして、チャーチさんは押し寄せるいいねとリツイートの波に対処しながら、ライト教授にメールを送り、教授がネットで大人気になっていることを伝えた。そして、ライト教授はチャーさんチに次のような心温まる返信をしたのだ。

    「教えてくれてありがとう。素晴らしい学期でした。素晴らしい生徒たちのおかげですね」

    ネットで大人気になったことについて、ライト教授は「本当に素晴らしいです。これ以上ないくらい素晴らしい」とBuzzFeed Newsに話した。

    「全くたまげましたよ」

    「これまでにずっと、多くの人に科学の面白さを伝えたいと思っていました」とライト教授。

    「私は、多くの人に科学に興味を持ってもらうことが自分の人生における使命だと思っているので、今回のことは本当に私が望んだ結果で、またエキサイティングで楽しいものです。私は自分の講義を受講している学生に科学に興味を持ってもらおうと頑張って来たのですが、まさかこれほどの規模になるとは思ってみませんでした」

    「おそらくこの動画を見た人の中に、ああ、やっぱり物理学って勉強しておくべきなんだな、実際の現象に関わっている、楽しい物理学のことをもっと知ってみようと思う人が出てくることでしょう」

    ライト教授のデモンストレーションから、物理学の法則についていくつか説明してもらった。

    ライト教授が敷き詰められた釘の上に横たわっている。

    「これが圧力の原理です」とライト教授は語り始めた。

    「私の背中は、400本の釘と触れています。釘の数が非常に多く、それぞれの釘にかかっている私の体重は極めてわずかなため、釘による圧力で私の皮膚が傷つくようなことはないんですよ!でも、もしもこの釘が5本だったら、とんでもなく痛いことになるでしょうね」

    今度はホッピングで跳ねている。

    「ホッピングに乗りながら、自由落下について説明しています。自由落下とはつまり、重力以外の外力が自分の体に作用していない状態のことです」

    「テーマパークのドロップタワーやジェットコースターに乗ったり、地球を周回している時などの自由落下の状態にいるときは、無重力の状態になります。アインシュタインは、同じような落ち方をしていることから、その効果に関する限りでは、自由落下は無重力状態と同じことだと言いました」

    「実験室で自由落下の状態になることは難しいですが、この時の私はホッピングに乗ってジャンプしています。これが、自由落下の状態です。自由落下の状態では、まるで無重力状態のようになります。さらにこの時の私は、間抜けな道化師の帽子をかぶっています。そして私が自由落下の状態にあるとき、この帽子の飾りが宙に浮くのです」

    「こういうパフォーマンスを行えば、ただ口で説明するよりも、学生はずっと覚えてくれるようになるのです」

    スケートボードに乗って巨大パチンコも再現。

    「これこそが、ニュートンの第二法則です!」

    「この法則は、力は加速度に比例するというものです。学生たちにバンジーコードを握ってもらい私は『しっかり握ってなさい』と指示しています」

    「各側で3人~4人の学生が、コードを持っています。スケートボードを少し引っ張るだけでは、加速は弱くなります。なので思い切りスケートボードを引っ張ります。そしてバンジーコードを限界まで引っ張って放せば、本当に大きな加速でスケートボードが動いていくのです」

    「そして次に、学生の1人に私と一緒にカートに乗ってもらいます。力はさっきと同じですが、質量はさっきよりも大きくなります。そのため、加速はそれほど大きくはありません」

    「したがって、このパフォーマンスで力が大きいと加速が大きくなり、また質量が大きいと加速が小さくなるという原理を説明しているのです」

    ライト教授にも、学ぶことの楽しさを伝えてくれた先生がいる。

    「私にとっては、それは私が小学6年生のときの先生でした」

    「その50年後、先生の所に行って、『自分が人に物を教える仕事を選んだのは先生の授業を受けたのがきっかけだった』と伝える機会があったんです」

    「この先生は本当に楽しくて、また関連を持たせて授業をしていました。なのでこの先生の授業を受けながら、自分も人に物を教える仕事に就きたいと考えるようになったんです」

    そして今学期に、ライト教授によって学ぶことを楽しさを教えてもらった1人が、動画投稿者のチャーチだ。

    これまでに物理の講義を取ったことの無かったチャーチさんは、最初にライト教授の講義を受ける時は不安だったという。しかし学期を終えて、チャーチさんはライト教授のおかげで「A」の成績を取ることができた。

    「ライト先生のおかげで、勉強は退屈である必要はなく、また一部の先生は本当に学生のことを考えて講義をしているということが分かりました。本当にライト先生には感謝しています」とチャーチさんは話した。

    「大学の教授が自分の仕事に情熱を持っているというのは、素晴らしいことだと思います」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。