ウクライナで難民問題を取材していた米記者、銃撃を受けて死亡

    亡くなったブレント・ルノーさんは、難民問題に焦点を当てたプロジェクトを米タイム誌と共同で取り組んでおり、ウクライナに滞在していた。タイム誌は彼の死を受け「ジャーナリストが安全に取材できることが必要不可欠」と声明を発表している。

    ウクライナ、キエフ近郊のイルピンで現地時間3月13日、米国人ジャーナリストのブレント・ルノーさん(50)が、銃撃を受け死亡したと地元当局が発表した。

    ルノーさんは映像製作者としても活動していた。2014年には兄弟のクレイグさんと共に、シカゴの公立校を退学させられた感情障害を持つ生徒に焦点を当てた作品「Last Chance High」で、アメリカの優れた放送作品に送られるピーボディ賞を受賞していた。

    Two men in suits on the red carpet

    ルノーさんと一緒にいた別の記者も、銃撃を受けた。地元当局はロシア軍による攻撃だとしている。

    キエフ地方警察本部のアンドリュー・ネビトフ本部長は、自身のフェイスブックで、ルノーさんのパスポートと記者バッジなどの写真を公開し、コメントした。

    「ジャーナリストという職業は危険を伴います。ルノー氏はロシアの巧妙さ、残酷さ、無慈悲さを浮き彫りにしようとして、命を落としました」

    ルノーさんは、世界の難民問題に焦点を当てたプロジェクトを米タイム誌と共同で取り組んでおり、ウクライナに滞在していた。

    タイム誌のエドワード・フィルセンタール編集長とイアン・オレフィス会長は、声明を発表した。

    「私たちの心は、ルノー氏の愛するすべての人と共にあります。ウクライナで今起きているロシア軍の侵攻と人道的危機を、ジャーナリストが安全に取材できることが必要不可欠です」

    ルノーさんは、過去に米ニューヨークタイムズ紙にも寄稿していた。ニューヨーク・タイムズのクリフ・レヴィー副編集長は、自身のツイッターに投稿した。

    「ルノー氏の死はあまりにも大きな損失です」

    「彼のような勇敢なジャーナリストが、ロシア軍のウクライナ侵攻による破壊と苦しみを目撃し世界に伝えるために、多大なリスクを負っています」

    彼の死を受け、政治界のトップやジャーナリズム界もさまざまな声をあげている。

    ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はCBSニュースに対し、ルノーさんの死は「驚きであり、恐怖である」と語った。

    「我々はウクライナ側と協議し、ことの経緯を見極めるとともに、調査をすすめ適切に対処します」

    フランスのマクロン大統領も、ルノーさんの死を受け、自身のツイッターを更新した。

    Today, a US journalist was killed in Ukraine. Before him, others have been targeted, murdered, injured or kidnapped. Our thoughts are with all those journalists driven by courage and an ideal: the freedom to inform. This freedom is fundamental to our democracies.

    Twitter: @EmmanuelMacron

    マクロン大統領のツイート:

    「今日はアメリカのジャーナリストがウクライナで殺されました。彼の前にも、多くのジャーナリストがターゲットにされ、殺害され、怪我を負わされ、誘拐されました。私たちの気持ちは、勇気と理想、つまり情報を届ける自由によって突き動かされた、全てのジャーナリストと共にいます。この自由は私たちの民主主義にとって基本となるものです」

    非営利団体「Committee to Protect Journalists(ジャーナリスト保護委員会)」でプログラム・ディレクターを務めるカルロス・マルティネス・デ・ラ・セルナさんは、ルノーさんの殺害を非難し、犯人は法の下に裁かれるべきだと主張した。

    「ブレント・レナード氏の死亡を受け、驚きと悲しみを感じています。ロシア軍のウクライナ侵攻は決して受け入れられるものではなく、国際法にも反しています」

    「ウクライナにいるロシア軍は、ジャーナリストや民間人への攻撃を直ちに止め、ルノー氏を殺害した人は責任を取るべきです」


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:吉谷麟