「肉食性の性感染症」は、聞こえほど怖くはない

    ドノヴァン症は、生殖器の潰瘍、組織の損傷を引き起こすが、アメリカではまれな病気で、それほど「肉食性」ではないかもしれない。

    ドノヴァン症という性感染症をご存知だろうか。

    先日来、インターネットでニュースを追っている人であれば、人肉を喰い、性器が「腐って、もげる」という恐ろしい響きの性感染症について読んだことがあるかもしれない。

    率直に言おう。「肉食」の「性感染症」。同じ文脈で聞きたくない言葉だろう。では、いったいこの病気は何なのか、私たちは心配する必要があるのだろうか。

    この感染症、ドノヴァン症は、処置をしないと性器に潰瘍ができ、醜い傷跡を残す、と専門家はBuzzFeed Newsに答えているが、発症はまれで、実は多くの医師が「肉食」と定義しているものではない。

    ことの発端は、イングランド北西部サウスポート在住の女性(推定年齢:15~22歳)がドノヴァン症と診断されたことをオンライン薬局Chemist-4-U.comが発見した、と地元紙〈リバプール・エコー紙〉が報道したことだった。

    だが、検査で確定診断がされたか、地元の保健当局に報告されたかは、未だ定かではない。Chemist 4 Uに問い合わせたが、すぐには返事はもらえなかった。

    英イングランド公衆衛生サービスに問い合わせたところ、広報担当者からは次のような回答が得られた。

    「ドノヴァン症は、主に、熱帯の国々、アメリカ大陸、南部アフリカ、オセアニアで発生しており、イギリスで診断されたり、報告されたりすることは非常にまれ」とのことだった。

    この性感染症は、いくつかの国で報告されているが、アメリカではまれである。

    アメリカで報告されるドノヴァン症の例は、毎年100例に満たない。だが、2016年にアメリカで報告されたクラミジアの例は、159万例あった。

    アメリカでのドノヴァン症の報告例は、旅行者が国をまたいで罹患する場合や、アメリカに持ち帰る例が殆どだ。米国国立医学図書館(NLM)によると、この疾患は、インド、パプアニューギニア、ガイアナ、ブラジル、中央オーストラリア、南部アフリカでよくみられるとのことだ。

    「つまり、アメリカ国内で普通の人が罹患する感染症ではないのです」と米・性の健康協会(ASHA)の広報担当者はBuzzFeed Newsに話している。ドノヴァン症が一般的な地域に旅行する場合は、自分自身と将来の性パートナーを守る措置を取ることができる。

    ドノヴァン症を放置すると、広がって組織を壊す性器潰瘍ができる。「肉食」と呼ばれているが、肉を食べているわけではない。

    ドノヴァン症は、鼠径部肉芽腫とも呼ばれており、クレブシエラ・グラヌロマティスという細菌によって引き起こされる感染症だ。

    特徴は、性器潰瘍や触ると痛い傷で、梅毒やヘルペスと同じカテゴリーに属する、とASHAの広報担当者はBuzzFeed Newsに話している。口淫での感染はまれで、コンドームを使用しない性交で感染する。

    米国国立医学図書館(NLM)によると、潰瘍は、小さな赤い吹き出物から始まり、通常は痛みはないが、怪我をするとすぐに血が出る、とのことだ。症状は感染から1~12週間で現れ、初期のドノヴァン症は、潰瘍ができる別の性感染症、軟性下疳と間違われることがある。放置されると、潰瘍は悪化し、腫れと傷跡が恒久的に残る。

    いいニュースはないのかって? 治療可能だ。米国国立医学図書館(NLM)によると、通常はアジスロマイシンやドキシサイクリンなどの抗生物質を数週間、もしくは潰瘍が治るまで服用する、とのことだ。

    だが、再発する可能性があり、人によっては、何年も経ってから潰瘍が再発する場合があるため、フォローアップの検査が重要になる。

    だが、「肉を喰う」という部分はどうなったのか?

    この感染症に関連する病変は、広がり、生殖器の組織周辺を損傷させたり、破壊したりする。そのため、組織を壊死させる。これは、他の細菌感染を治療しない場合でも、同じことが起きる。

    ドノヴァン症は、壊死性筋膜炎や、私たちが一般的に肉食の疾患として知っているものとは異なる。後者は、A群レンサ球菌によって引き起こされることが多い重篤の感染症で、柔らかい組織を破壊し、四肢欠損や死をもたらす。

    「『肉食』という言葉を使って説明するのは、間違いなく人目を引きますが、完全に正しいわけではありません」とASHAの広報担当者は話している。

    パニックになる必要はない。でも、安全なセックスを心がける必要があることには変わりなく、性感染症(STD)にかかるリスクを減らすために、検査は受けるべきだ。

    そう、治療しないと、ドノヴァン症は長期にわたって残る損傷を及ぼす。もっと一般的な感染症であるクラミジア感染症や淋病もまた、治療せずにいると、(不妊症などの)長期にわたる損傷を与える、とASHAの広報担当者は指摘している。

    性感染症を防ぐには、コンドームを使い、定期的に検査を受け、感染してしまったら、どんな性感染症でもできる限り早く治療を受けるべきだ。

    避妊具を使わずに性行為をした場合、新しい性パートナーができた場合、複数のパートナーがいる場合、性感染症のリスクがあったかもと感じた場合、医師に検査の相談をして欲しい。

    症状があったら検査を受けるべきだが、性感染症の多くは症状がない。だから、大丈夫だと思っても、定期的に検査を受けることが重要だ。

    そして、性器に潰瘍や爛れを見つけたら、医師の診断を受けること。自己判断は禁物だ。だが当面は、パニックにならないで、安全な性行為を楽しんで。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan