平成から受け継がれた平和への思い 令和最初の追悼式で天皇のお言葉は

    戦争への反省の思いを上皇さまから受け継ぎ、より国民の目線に立つ。そんな思いがにじむ「お言葉」だ。

    令和で最初の全国戦没者追悼式が8月15日、日本武道館で行われた。

    今年の最大の注目は、臨席される天皇陛下の「お言葉」だった。

    1960年生まれで戦争を直接経験していない陛下が、あの時代をどう思われるのか。その上で、令和はどのような時代になるのか。その重要なヒントが、そこにあるからだ。

    今年のお言葉

    本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

    終戦以来74年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思う時、誠に感慨深いものがあります。

    戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

    受け継がれた思い

    令和最初の天皇の「お言葉」は、平成時代で最後の追悼式だった2018年の天皇(現・上皇さま)の「お言葉」のほとんどを、そのまま受け継いだ。

    戦争への「深い反省」と犠牲への「深い悲しみ」を表明し、戦後の平和と繁栄への努力を讃えつつ、その苦難に思いを寄せる内容となっている。

    なお、「深い反省」という表現は、上皇さまが戦後70年の2015年追悼式から加えられたものだ。

    一方で目立つ違いは、「国民のたゆみない努力」という部分が「人々のたゆみない努力」に変わったことだ。また、「苦難に満ちた往時をしのぶとき」が「多くの苦難に満ちた国民の歩みを思う時」となった。

    戦争に対しては、深い反省に立ち二度と繰り返さないと誓い、慰霊を続けるという、上皇さまの姿勢をしっかりと受け継ぐ。

    そして、「国民」から「人々」へと言葉を置き換える。逆に「苦難に満ちた往時をしのぶとき」は「苦難に満ちた国民のあゆみ」とし、だれが苦難に耐えたのかを明確にし、より国民の目線にたつ。

    今年の「お言葉」から浮かんできたのは、陛下のこんな戦争への思いと、社会との距離感だった。

    陛下は5月1日の「即位後朝見の儀」で、平易な言葉遣いで語られた。5月4日の即位後初の一般参賀では、「皆さんからお祝いいただくことをうれしく思い、深く感謝いたします」と述べられている

    平成最後の追悼式でのお言葉(2018年)

    本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

    終戦以来既に73年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。

    戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

    昭和天皇の最後の追悼式でのお言葉(1988年)

    本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に際し、親しく全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、戦陣に散り、戦禍にたおれた数多くの人々やその遺族を思い、今もなお、胸がいたみます。

    歳月の流れははやく、終戦以来すでに43年、この間、国民の努力により国運の進展をみましたが、往時をしのび、誠に感慨深いものがあります。

    ここに、全国民とともに、我が国の発展と世界の平和を祈り、心から追悼の意を表します。