「象徴」の意味探るCNN 見方分かれる韓国 そして皇位継承は? 日本の「時代の変化」を報じる各国の目

    海外メディアは日本で起きた「時代の変化」をどう報じたのか。

    天皇の代替わりとともに、平成から令和へと元号が変わった日本。2019年5月1日を持って「時代が変わった」日本を、元号のない海外のメディアは、どう報じたのか。

    「象徴」とは何か

    CNNは上皇となられた前天皇陛下が退位礼正殿の儀で「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」と語られた「象徴としての天皇」の意味を伝えた。

    「他国の君主と異なり、天皇は国家元首というよりも国家の象徴であり、日本の天皇は政治的権限を持っていない」と説明。

    「改革者と受け止められていた父のように、新天皇は自らに、神格を伴うものというよりも、機関としての役割を見いだしている」「新天皇は父を見て学んだと発言しておられる」というハーバード大学の日本史研究者アンドリュー・ゴードン教授のコメントを紹介し、これからも上皇が切り開かれた戦後の「象徴天皇」の姿を守っていくという見方を示した。

    両陛下への新たな期待

    また、CNNのウイル・リプリー記者と京都外語大のナンシー・スノー客員教授が5月1日午前の皇居前からの生中継で、雅子皇后について「将来を嘱望された外交官で、ハーバード大を卒業している。女性の役割を広げることが期待される。その力がある」「陛下もずっと皇后を支えてきた。お二人はロールモデルになり得る」と語り合った。

    歴代の天皇が受け継ぐ「三種の神器」の解説の記事も多く出た。香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニングポストだ。神道に基づくものだとしたうえで、「ほとんどだれも実物を見たことがない」とした。英BBCは詳しい解説を日本語版でも提供した。

    歴史認識を巡る緊張関係

    もう一つの論点は、歴史認識を巡る緊張だ。

    英BBCは「天皇陛下、その人間らしさ」(原題=Akihito: The Japanese emperor with the human touch)という記事で、上皇陛下が「教育を受けていた時期のどこかで、陛下は強固な平和主義者となり、それは現在も続いている」「目立たないように、しかし強い意志をもって、陛下は繰り返し歴史修正主義者たちに対する軽蔑心を表してきた」とした。

    その具体例として示したのが、戦後70年の2015年8月と、2004年秋の園遊会でのエピソードだ。

    安倍首相は2015年8月14日、「先の大戦では、三百万余の同胞の命が失われました」「これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和がある。これが、戦後日本の原点であります」という談話を出した。

    陛下は翌8月15日の全国戦没者追悼式で「発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました」というお言葉を語られた。

    BBCは、陛下が「お言葉」で「戦争の犠牲の上に今の平和がある」という前日の首相の発言内容を否定したというテンプル大学日本校のジェフ・キングストン教授の見方を紹介し、「テレビ中継を見ていた何百万人もの日本人にとって、それは疑いようのない批判だった」とした。

    2004年10月の園遊会では、棋士で東京都教育委員だった故・米長邦雄氏が「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と語った。

    「陛下は静かに、だがきっぱりとこう言って、その委員を諭した。『強制になるということではないことが望ましい』」

    韓国は関係改善に動く?

    韓国の保守系紙朝鮮日報は、文在寅大統領が前天皇陛下に書簡を送ったと4月30日に発表した韓国外交部(外務省)の報道官が、会見で天皇を表す言葉として韓国で通常使われる「日王」ではなく「天皇」という呼称を用いたうえ、書簡でも文大統領が「天皇」と記したと説明。

    「文大統領が德仁皇太子の天皇即位を機に、歴史問題をはじめ国防・経済など全方面で悪化している韓日関係の改善を模索しているのではないかとの観測も出ている」とした。

    また、同紙の李河遠・東京特派員はコラムで「生前退位決定は大変賢明な決断だった。30年前の昭和天皇の死去による暗うつとした雰囲気の中で平成時代が始まった時とは違い、最近の日本は新たな機運にあふれている。20年間の不況を経てよみがえった経済を再び停滞させたくないという意志が感じられる」と記した。

    その上で、「多様性よりも画一性の方が大きく見える国を、韓国がまねる必要はない。しかし、象徴に過ぎない天皇の交代儀式を通じて内部の確執を最小限に抑え、広く未来について語る点には注目すべきだ」「過去に縛られ確執を拡散する国と、前を見据えて走っている国の差が大きく広がるのはあっという間だ」と締めくくり、韓国社会の方に注文を付けた。

    韓国でのもう一つの関心は、今後の日本政治の動向だ。

    左派系のハンギョレ紙は、新しい天皇陛下について「政治性向や憲法観はほとんど知られていない」「新しい天皇が父のように安倍首相の暴走を牽制する『見えない防波堤』になるのは難しいという見方が優勢だ」との見方を示した

    中国共産党の機関紙・人民日報日本語版は上皇陛下について「1992年に訪中したほか、中国の党と国家の指導者と会見を重ねて、中日関係の発展促進に積極的な貢献をした」とする中国外務省報道官のコメントを伝えている。

    「令和」の先は

    「令和」時代の先に起きる皇位継承を巡る報道もある。ロイター通信は「そして3人が残った」と題し、皇位継承問題に関する記事を配信した。

    令和の代替わりに伴い、男子皇族の皇位継承権者が3人しかいないことに触れたうえで、近い将来、女性天皇を巡る議論が再燃する可能性を示した。