米国のブッシュ元大統領が死去　日本軍、サダム・フセインと戦った激動の人生を伝える10枚の写真

アメリカ合衆国第41代大統領のジョージ・H・W・ブッシュ氏が11月30日（米国東部時間）、死去した。94歳だった。

若い頃は海軍パイロットとして日本軍と戦い、長男のジョージ・ウオーカー・ブッシュ氏はその後、第43代大統領となった。

H・W・ブッシュ氏の歩んだ時代を、写真で振り返る。

ブッシュ氏は1924年に生まれた。父プレスコット氏は銀行家で、のちにコネチカット州選出の上院議員（共和党）となった。

1941年の真珠湾攻撃で、米国は日本との戦争に突入した。

ブッシュ氏も海軍のパイロットとして第二次大戦に従軍。太平洋戦線で日本軍と戦った。

1944年9月2日には小笠原諸島沖で日本の対空砲火を受けて乗機を撃墜され、米軍の潜水艦に救出された。

この写真で海上から引き上げられようとしているのが、当時のブッシュ中尉だ。

1946年、母校イエール大学のジャージを着て、長男のジョージ・ウォーカー氏を膝の上に抱く。

この長男は2001年、第43代米国大統領に就任することになる。

戦後は石油産業で働き、政治家に転じた。1976年には中央情報局（CIA）長官となり、当時のフォード大統領（右側）にブリーフィングを行った。

1981年に発足したレーガン政権で、副大統領に就任した。

レーガン政権は、減税による供給面の刺激や競争の促進などの経済政策「レーガノミクス」を進めた。

共和党内での予備選でレーガン氏と大統領候補指名を争ったブッシュ氏はレーガノミクスを「ブードゥー経済学」と批判したが、副大統領となってからは、それを推進する立場となった。

1989年に大統領に就任。この年12月、地中海のマルタでソ連のゴルバチョフ書記長と会談した。

両首脳は、第二次大戦の終結後、長らく続いた、米ソを軸とする東西冷戦の終結を宣言した。

それは同時に「米国一強時代」の幕開けでもあった。

隣国クウェートに侵攻したフセイン政権下のイラク軍に対し、多国籍軍を結成して戦争を行った。湾岸戦争と呼ばれる。

米軍は圧倒的な強さを見せ、イラク軍は敗走。戦闘は短期間で終わった。

しかし、戦争には思わぬ副作用があった。

この時に母国サウジアラビアへの米軍駐留に反発したのが、後に国際テロ組織「アルカイダ」を率いることになる、オサマ・ビンラディンだ。

かつてアフガニスタンでの対ソ連戦線でイスラム義勇兵を率い、米国の支援を受けていたビンラディンは、これを期に反米意識を強めた。

そして長い潜伏と準備を経て、2001年9月11日に米同時多発テロを起こすことになる。

その時、米国大統領の座にあったのは、長男のジョージ・ウォーカー・ブッシュ氏だった。

ブッシュ氏は幼い頃からブロッコリーが大嫌いだった。

「小さい頃から大嫌いだったけど、母親に食べさせられた。私は今や大統領だ。もうブロッコリーは食べない」と宣言。

大統領専用機の機内食メニューからもブロッコリーを追放してしまった。

これに反発した米国の青果業組合がホワイトハウスに大量のブロッコリーを寄贈した。

出てきたのは、大統領本人ではなく、妻のバーバラさん。

「私は喜んで頂きます」「しかし、母親にもできなかったことを私ができるとは思いません」と、ブッシュ氏にブロッコリーを食べさせることには、ギブアップを宣言した。

1992年1月に来日し、宮沢喜一首相と会談した。

この時、歓迎晩餐会で体調を崩し、隣に座る宮沢首相の膝の上に嘔吐する騒ぎが起きた。

ブッシュ氏はすぐに立ち上がってガッツポーズを取ったが、この様子は世界中でトップニュースとなった。

この年の大統領選でビル・クリントン氏に敗れ、1期のみで退任した。

2001年に大統領となった長男（小ブッシュ氏）が直面したのは、この年9月11日に起きた米同時多発テロ事件だった。

そのタネは、湾岸戦争を始めた父が蒔いたものであるとも言える。

小ブッシュ政権はこれ以降、「対テロ戦」にのめり込む。その一つが、2003年に「フセイン政権が大量破壊兵器を保持している」として始めたイラク戦争だった。

小ブッシュ氏は2002年「あいつらは父を殺そうとしたんだぞ」とイラクを批判した。

しかし結局、イラクに大量破壊兵器はなかった。

政権が掲げた「中東民主化」も機能しないまま、イラクはいまも混乱の中にある。

小ブッシュ氏が二期目を終える直前の2009年1月、原子力空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」が就役した。親子はその式典に出席し、肩を並べた。