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不思議なほど似ている令和と昭和の政界 55年体制に「自公民」も復活するのか

2019年参院選で現れたのは、昭和の再来ともいえる政治状況だ。

2019年参議院選は、立憲民主党を中心とする野党勢力が統一候補を立て、自民・公明の連立与党に対抗する構図となった。自公は今回も議会過半数を維持した。

一方、自公と日本維新の会のいわゆる「改憲勢力」全体で見ると、参院の3分の2を割り込んだ。

これで、安倍首相が宿願とする憲法改正の発議をすぐにはできない状況となった。憲法改正には衆参両院でそれぞれ3分の2の賛成が必要だからだ。

実は、この状況を国会が迎えるのは、初めてではない。昭和30年代にすでに起きていたのだ。しかも、主役の1人は安倍首相の祖父だった。

「55年体制」という言葉を覚えているだろうか。

1955年に、当時は左右両派に分裂していた社会党(現社民党)が再統一し、野党第一党となった。保守勢力も後を追って合同し、自由民主党が発足。今に至る。

改憲を綱領に掲げる自民党は、改憲に必要な国会議席3分の2の獲得を目指した。護憲を旗頭とする社会党などの野党は、それを阻止しようとした。

これが戦後政治の基盤となった「55年体制」だ。

祖父と孫で改憲巡り似た構図に

1958年の総選挙では、憲法改正を巡り自民党と社会党が激突。社会党が自民党の議席3分の2確保を阻止し、憲法改正は遠のいた。

この時の自民党総裁は、安倍首相の祖父・岸信介氏だった。

今回の参院選の主要争点は、自民・公明・維新などのいわゆる「改憲勢力」が議席の3分の2を占められるかどうかだった。

立憲民主党を中心とする野党勢力は、1人区の選挙区で野党共闘候補を出した。

令和時代で最初の国政選挙の構図は、昭和30年代と奇妙に似ていたのだ。

支持労組がくっきり分化

1960年に社会党から右派が再分裂し、民社党を結成した。民社党は電力系労組を抱え、原発推進の立場。当時の社会党は「違憲」としていた自衛隊は「合憲」とするなど、多くの点で自民党と共通点があった。

社会党は「日本労働組合総評議会(総評)」、民社党は「全日本労働総同盟(同盟)」という労組の中央組織が支援した。総評と同盟は1989年に合併して、今も続く「日本労働組合総連合会(連合)」となる。

連合は旧民主党を支持した。2009年総選挙での政権交代には、連合傘下の労働組合員の票が大きな力を発揮した。

しかし、民主党も連合も常に、組織内で左右対立を抱えていた。その民主党は政権を失って以降、分裂を繰り返した。

その結果、いまでは立憲民主党と国民民主党の2党が「旧民主党系」の核となっている。

それでは今回の参院選で、この2党から当選した比例区候補を見ていこう。

立憲民主党は比例区で8人が当選した。うち得票数の上位5人の顔ぶれと、その出身母体を以下に示すと、こうなる。

  1. 岸真紀子氏(自治労)
  2. 水岡俊一氏(兵庫県教職員組合)
  3. 小沢雅仁氏(郵政労組)
  4. 吉川沙織氏(NTT労組)
  5. 森屋隆氏(私鉄総連)

5人とも、旧総評系労組の出身なのだ。

一方の国民民主党は、比例区で3人が当選した。

  1. 田村麻美氏(UAゼンセン)
  2. 礒崎哲史氏(自動車総連)
  3. 浜野喜史氏(電力総連)

いずれも、旧同盟系労組の出身だ。

連合傘下の各労組は、立憲民主党と国民民主党で支持を切り分けた。旧社会・民社党時代と同じ構図が復活した。

そして労組の支持基盤を失った社民党は苦戦が続く

これから何が起きるのか

政界でこれから何が起きるか。それを占うために、戦後政治史をもう一度、振り返ってみよう。

かつて民社党は公明党とともに、野党の立場を維持しながらも政策や法案によっては自民党への協力姿勢を見せた。これを「自公民路線」という。

その一例は、自衛隊の海外派遣を可能にするPKO法案を巡る攻防だ。

1992年の国会で、「海外派兵反対」を掲げる社会党、共産党を尻目に、公明、民社が自民と歩調を合わせて賛成し、法案は成立した。

公明党は今や自民と連立する与党であり、基本的に同一歩調を取る。

では、旧民社党と同じ労組に支えられる国民民主党は、どう動くか。

安倍首相は7月20日深夜、フジテレビでこう語り、改憲を巡って国民民主党に秋波を送った。

「衆議院においては3分の2の多数を与党でもいただいています。基本的には、参議院においては、安定した多数を得たうえにおいて、そのうえで維新の会の皆さんにもご協力いただきながら、国民民主党の皆さんの中にも、憲法議論をしっかりしたいと言っている方もおられるんだろうと思います」

「私の使命として、残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたいと考えています」

なお、PKO法案成立時の自民党幹事長は、いまは国民民主党に所属する小沢一郎氏である。