「お客が2人」「メンバーが次々脱退」TIFに出られなかった彼女たちがアイドルを続ける理由

    TIFの会場路上でPRしていたアイドルを取材しました。

    8月4日から6日まで東京・台場で国内最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」(TIF)が開催された。

    3日間で223組ものアイドルが参加するTIFだが、日本には星の数ほどアイドルグループが存在するため参加を願いながら、叶わないグループも多い。

    落選したアイドルの中には来年のTIF出演を目指し、TIFの会場を訪れるアイドルファンに自らをアピールにくる者もいる。

    まだ世間の認知度は低い彼女たちは、どんな思いでアイドルをしているのか。BuzzFeed Newsでは話を聞いた。

    「おはよう!もきゅれーしょん」の濱志都香さん、鵜川あすかさん

    2016年10月に結成された「おはよう!もきゅれーしょん」。もともとは5人グループだったのですが「デビュー前にリーダーがやめて」(濱)、「先月に2人卒業しちゃって」(鵜川)と9か月後を経て、ユニットといえるぎりぎりの2人組になりました。

    切ない話に聞こえますが、濱さんは「私たちは逆境に強いので大丈夫」と笑顔です。

    濱さん自身ずっとアイドルのファン。香川から両親の反対を押し切って、アイドルになるために上京してきました。お笑い担当を自認し、現在は全身タイツにきりんのお面をつけて、SHOWROOMで生配信も行っています。

    今年、TIFのオーディションに参加した2人ですが、結果は落選。今は「Mステへの階段」というオーディションに参加し、ミュージックステーション出演を目指しています。

    けして華やかな道を進んでいるとはいえない2人。アイドルをやめたいと思ったことはないのでしょうか。

    「やめたいと思ったことないです」(濱)

    「やめたいと思う前にやめられてますから(笑)。だからやるしかない。逆境に強いので」(鵜川)

    「まじょぴちゅ」那華貴奈さん

    「てじな〜にゃ!」で知られる山上兄弟がプロデュースする「まじょぴちゅ」は歌もダンスも手品もできる4人組グループ。ライブ中にマジックも披露します。

    那華さんはソロのアイドルとして活動後、現在のグループに加入。「みんな個性が違うし、グループだといろいろできることの幅が広がるから楽しい」そうです。

    グループのライブを訪れる人は一ケタ。それでも「アイドルはやめられないです。楽しすぎて」と明るい笑顔を見せます。

    星の数ほどアイドルがいる現在の日本。競争の厳しさは自覚しながらも「ほかのアイドルにはない、マジックを武器に話題になっていければと思います」。

    来年は、参加アイドルとしてTIFに来られるよう、奮闘を誓っていました。

    「恋するフリーク」穴井樹乃さん

    アイドルっぽくはない雰囲気の穴井さんが所属する「恋するフリーク」は6人組グループ。恋愛禁止を謳うアイドルが多い中、思春期には恋愛が大事と、恋愛を解禁しています。

    「ファンと恋している人ですか。禁止ではないんですか、いないんですよ(笑)。恋に中毒な女の子が集まったグループです」

    穴井さんはアイドルにもともと興味があったわけではなく「女子高生ミスコン」に参加した際に声をかけられました。

    「もともとアイドルになりたかったわけではないんですけど、やってみたら楽しくて。ファンの方ともめたり、つらいなと思うことはあるんですけど、アイドルをやめたいとは思わないです」

    ライブの集客は対バンで20〜30人。今年は岐阜県で開催されるアイドル野外フェス「関ケ原唄姫合戦」にも出演し、次はTIF出場を目指します。

    「来年は絶対でます。出るために必要なことですか? パフォーマンスと知名度ですね」

    「Checkmate」AYUMIさん

    AYUMIさんが所属する5人組グループ「Checkmate」は普通のアイドルでは禁止されている、客のリフト、モッシュ、ダイブなどもOKという“暴動系アイドル”です。

    もともと九州の「LinQ」の研究生をやっていたAYUMIさん。ボイストレーナーの先生のすすめもあり、アイドルになるために上京してきました。

    「もともと可愛い系のアイドルをやりたかったけど、全然違うことに(笑)」

    8月18日にはワンマンライブがあり、そこに向けて頑張っています。

    現在はアルバイトをしながらアイドル活動をしていますが、アイドルをやめたいと思ったことはありません。

    「ずっとアイドルがやりたくって。歌って踊るのが楽しいです。声援をもらえると楽しいです」

    悩みは「アイドルが多すぎて、変わったグループじゃないと売れない」ことだそうです。

    「The High Roller」桃瀬美優紀さん、鬼本ちょこさん

    3人組グループ「The High Roller」はカジノゲームを身近にコンセプトした、日本初のカジノアイドルです。

    TIFのオーディションでは最終予選までいけましたが、落選。

    「まだまだ力不足でした。でも、モチベーションが上がります」(鬼本)と来年にむけて、TIFの会場で PR活動に来ました。

    ただのチラシでは受け取ってもらえないと、ポケットティッシュにフライヤーをつけて配布。1000個のティッシュへのチラシ入れはすべて自分たちでやりました。

    ライブの集客は多い時で40人ですが、少ない時は2人。モチベーションは低下しないのか聞くと、桃瀬さんは「2人だと大丈夫です。1人でも観客がいると(ライブが)バラしにならないんですよ」と笑顔で返してくれました。

    カジノアイドルということで、定期ライブの際には1部でカジノゲームの普及、2部でライブをやっていますが、1部が客がゼロのため開催されないこともしばしば。

    「私たちとカジノゲームをやるのですごく距離が近くて、1時間くらいずっとしゃべっていられるんです。私たちを独占し放題でおいしいと思うんですけどね」(鬼本)

    「きゅい~ん'ズ」西葉瑞希さん、橘祐里さん

    「きゅい~ん'ズ」は2014年に結成された6人組グループ。

    コンセプトは「BETできるアイドル」で、ファンがアイドルに賭けて応援してほしいというものですが、西葉さんによれば「最初は『ベッドする』と100%勘違いされ、怪しまれます(笑)」そうです。

    今年はTIFに出るため、グループで様々な努力をしたものの残念ながら出られず。ただ、その活動の中で「きゅい~ん'ズ」を知ってくれる人も増えたそうです。

    同じグループに所属する2人ですが、アイドルのなった経緯は対照的。

    「アイドル好きじゃなかったし、アイドルも嫌いなんですけど、ステージに立った時にアイドルが天職だと思ったんです。だからやっています」(西葉)

    「私は地方出身でアイドルをやりたいなと思っていて、中学の時に受験勉強が嫌になって、オーディションを受けました。いまは東京の高校に行きながら、アイドルを本気でやってます」(橘)

    現在、18歳の西葉さんはアイドル歴3年。

    競争の激しいアイドルの現状を踏まえ「3年もアイドルをやっているので、もうふわふわしたことはしてられないんです。アイドルは歌がうまくなくても、顔が可愛くなくても、お客さんがついたもの勝ち。だから、どうやったらお客さんがつくかを考えなければいけないんです」と真剣に語っていました。