トリエンナーレの少女像、スペインの実業家が購入 バルセロナで撤去された作品集め博物館開館へ

    スペインの実業家が、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展」で展示されていた、平和の少女像を購入しました。

    スペインの実業家の男性が、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」で展示されていた「平和の少女像」を購入した。ロイター通信などが報じた。

    報道によると、購入した男性は元ジャーナリストのタチョ・ベネット氏で、来年バルセロナに開館予定の"Freedom museum"(自由の博物館)に展示する予定という。

    ロイター通信によると、ベネット氏がバルセロナにオープンする博物館では、世界各国で何らかの理由で美術館などから撤去、展示中止となった作品60点が展示されるという。

    コンセプトとしては今回、あいちトリエンナーレで実施された「表現の不自由展・その後」と類似している。

    Statue of 'comfort women' pulled from Japan exhibit finds new home | Article [AMP] | Reuters https://t.co/sYY4xHjBt6

    @BenetTatxo

    ベネット氏は自身のTwitterアカウントで、少女像の購入を報じるニュースを繰り返しツイート、またはリツイートしている。

    「表現の不自由展・その後」には、昭和天皇をテーマにした作品や、平和の少女像が展示され、テロ予告や脅迫を含む抗議が実行委員会に殺到していた。

    今回、同展に展示されたのは、韓国のソウルにある日本大使館前に設置された「平和の少女像」とほぼ同じデザインのものだが、少女や椅子の材料などは異なり、名古屋に展示されたものは、少女に色が塗られており、椅子も木製。

    作者は、各地に建つ少女像の彫刻家であるキム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻。

    空席の椅子の横にある、像設置の経緯を書いた説明書きの銅板には、同じ内容が書かれている。韓国語、英語、日本語の3カ国語で以下のような説明があった。

    1992年1月8日、日本軍「慰安婦」問題解決のための水曜デモが、ここ日本大使館ではじまった。2011年12月14日、1000回を迎えるにあたり、その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する。

    少女像はソウルの日本大使館前だけでなく、韓国各地や他国にも設置され、それに対する反対運動や撤去なども起きている。

    フィリピンのラグナ州サンペドロ市には2018年12月28日、同様のデザインの少女像が設置されたが、2日後に撤去された。

    設置場所はキリスト教系の高齢女性介護施設の私有地だった。サンペドロ市長と韓国中部にある忠清北道の堤川市前市長の間で友好と平和の証として像設置計画が進んだが、双方の間で像が意味することの理解に相違があり、撤去に至った。

    今回、表現の不自由展に展示された際、像の後ろに添えられた説明書きには、「少女」が意味することについてはこのような説明があった。

    被害者の年齢はさまざまですが、特に朝鮮人「慰安婦」の場合、未成年の少女たちが多かったことを象徴する意味で、少女の姿に形象化しました。

    像の台座部分にある「影」は「ハルモニ(おばあさん)になった」少女を表し、空席は、既に他界した元慰安婦女性のための席として作られたという。

    同時に説明書きでは「いつでも誰にもでも開かれた席でもある」とされ、作品を見る人に椅子に座ることを推奨、「子どもたちの平和な未来をつくることを約束するための椅子でもあります」とされている。

    元慰安婦女性を長年支援してきた梁澄子さんは、韓国の元慰安婦女性や、その支援者らにとっての少女像を「記憶を継承するための追悼碑」と説明する。

    日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の共同代表を務める梁さんは、表現の不自由展中止を受け、BuzzFeedに対し「被害者たちは、記憶して再発しないようにと呼びかけています。少女像を日本で展示できないということは『記憶させない』としているように捉えられます」と話した。

    (サムネイル:Getty image、時事通信)