あいちトリエンナーレで海外作家計12組が出展辞退や一時中止「政治的圧力あった」「表現の自由は重要」

    企画展「表現の不自由展・その後」が中止されたことにより、あいちトリエンナーレに出展していた海外の作家が作品の一時展示中止などを表明し、抗議の姿勢を示しています。

    愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で、テロ予告などを理由に「表現の不自由展・その後」が中止されたことに対し、8月15日までに海外からの出展作家ら計12組から出展の一時中止などの申し出があった。

    あいちトリエンナーレの国際現代美術展に出展している作家は計66組で、海外からの出展は36組だった。表現の不自由展の中止による12組の一時中止などで、海外から出展した作家の3分の1が作品展示を取りやめた計算となる。

    8月12日には、新たに海外作家9組らが、同展中止への抗議声明を米メディアを通して発表し、展示の一時中止を申し出た。9組の中には、あいちトリエンナーレのポスターの写真に作品が使われている、ウーゴ・ロンディノーネ氏も含まれている。

    あいちトリエンナーレ広報担当はBuzzFeed Newsの取材に対し、12日にはアーティスト主催でオープンディスカッションが実施され、作家25組と事務局、キュレーターらが参加した。辞退に関しては「申し出があった事実は確認している。体制としては作家の意向を汲みたい」と話した。

    表現の不自由展の中止発表直後に辞退を発表した2人は、韓国人作家のイム・ミヌク氏とパク・チャンキョン氏。イム氏の作品「ニュースの終焉」、パク氏の「チャイルド・ソルジャー」は既に展示中止となっている。

    トリエンナーレ広報担当によると、米国の非営利報道機関「CIR」(調査報道センター)も、アニメーションなどの映像作品展示を辞退していた。

    8月12日に開かれたオープンディスカッションという形での議論は、海外の作家のスカイプでの参加も含め作家25組が参加したという。

    広報担当者は「展示辞退の申し出については、今回声明を出したうちの1人からその場で話がありましたので理解はしていました」とした上で「観客にも影響すること。作家の意向を汲みたい」と説明した。

    ポスターの写真にもなっている作品「孤独のボキャブラリー」の作家ウーゴ・ロンディノーネ氏を含む海外の作家9人とキュレーターらは8月12日、米美術雑誌ARTNEWSのウェブ版を通し、オープンレター "IN DEFENCE OF FREEDOM OF EXPRESSION"(表現の自由を守るために)を発表した。

    オープンレターには、既に作品が展示中止となった韓国人作家2人も含む、計12人の名前が連名で署名されている。

    その中で作家らは、テロ予告や脅迫を含む抗議から職員や来場客を守ることは大切だと理解を示した上で、表現の不自由展の中止を批判し、再開を求めた。運営側が中止にあたり、出展作家らとよく話し合わずに中止を決定したことなども批判した。

    作家らは辞退を表明する理由として、オープンレターにこのように記している。

    「私たちが検閲を受けた作家と共にあることを公に示すために、表現の不自由展が中止されている間は、私たちの作品もトリエンナーレで展示しないことを運営に要求します」

    運営側や愛知県知事が、テロ予告などによる「安全上の理由」で同展を中止したと説明している一方で、作家らは声明では「検閲」という言葉を6回にわたり用い、名古屋市の河村たかし市長の発言や、菅義偉官房長官が補助金交付の可否について言及したことに触れ、中止に際し「政治的圧力があった」との見解を示した。

    文末には署名の前に「表現の自由は重要である」と記した。