「日韓関係を諦めたくない」両国のTwitterユーザーがハッシュタグに込めた思い

    日韓関係が冷え込む中、Twitter上で「好きです韓国」「好きです日本」という意味のハッシュタグが広まり、#諦めないで_韓日交流 というハッシュタグも登場している。

    日韓関係が冷え込む中、Twitter上で、日韓のユーザーがお互いの国の好きなところや、旅行した際に道案内などで助けてもらったエピソードを書きこむハッシュタグが広まっている。

    ハッシュタグ、#좋아요_한국 (チョアヨ ハングク)は、韓国語で「#好きです_韓国」という意味。そしてそれに返答する形で、韓国のTwitterユーザーが作ったのが#좋아요_일본 (チョアヨ イルボン) で「#好きです_日本」という意味だ。

    両国のTwitterユーザーは、日本語や韓国語、英語で思いを綴っている。韓国語でのハッシュタグに続き、日本語でのハッシュタグもでき、2つのハッシュタグに加え #諦めないで_韓日交流というハッシュタグも登場した。

    BuzzFeed Newsはハッシュタグの発案者や、それを使ってエピソードを紹介した日韓のユーザーに話を聞いた。

    #좋아요_한국
    地下鉄で一人迷っていたらこっちだよと声をかけてくれたおじさま。重いキャリーを階段上まで運んでくれたお兄さん。ソウルコンで「オンニ!こっちのがよく見えますよ!」って引っ張っていってくれた女の子。程よい距離感がとても温かかった記憶。

    東京在住の日本人女性はこのようにツイートし、韓国旅行中に出会った人々への感謝の気持ちを共有した。

    女性はBuzzFeed Newsに対し「ニュースで報道されている一面とは違う、人の優しさみたいなものをみんなに知って欲しくてツイートしたので、それが伝わると嬉しいです」と思いを語った。

    こちらは、韓国に旅行した際に、何度も道行く人に助けられたから、日本で恩返しをしているという日本人女性のツイートだ。

    日本で困ってる韓国の人がいたら人助けする様にしてる、私が沢山助けてもらったから道案内した女の子達と忘れもしない「韓国と日本は色々あるけど、私達は仲良くしようね」って話たのはずっと大事にしてる。政治は関係ない私はわたしを成長させてくれた韓国が好き。#좋아요_한국

    こうツイートしたユーザーはBuzzFeed Newsに対し、「重いスーツケースを抱えて長い階段を上っていたら、スッとサラリーマンの方が持って階段を上がってくれて何も言わずに颯爽と去っていきました」と語る。

    また「携帯持って道を探していたらすかさず声をかけてくれたり、カバン可愛い日本で買った?荷物重いでしょう?私の膝に置いて良いよ、と声を掛けてくれたのは、日本の植民地時代を経て大変な韓国を生き抜いてきた年配の方です」と話した。

    日本旅行中に迷っていた20代の女性を道案内した際に言われた「韓国と日本は色々あるけど、私達は仲良くしようね」という言葉はずっと心に残っているという。

    「政治家たちの発言が全てではないと知って」

    「好きです韓国」のハッシュタグ、#좋아요_한국 (チョアヨ ハングク)を作ったのは、東京都内の高校で国語を教える男性教師、キソカンさん(@Kiso_Korean_bot)だ。仕事の傍ら、SNSを通して韓国語について発信しているという。

    キソカンさんは、韓国行き航空機の運休など、日韓関係の悪化が民間の交流にまで影響を及ぼしているというニュースを見て「政治家たちの発言が全てではないということを韓国の人たちに分かってほしい」と、7月30日にハッシュタグを作りツイートした。

    BuzzFeed Newsに対し、ハッシュタグを作った理由をこう語る。

    「たしかに国同士は歴史問題や領土問題など政治的に難しい問題を抱えていますが、人対人においてまで対立することはないと考えています。実際韓国の友達から『韓国と日本がごちゃごちゃしてるけど、俺とお前は友達だ』というメッセージをもらったこともあります」

    「民間の交流を無くさないためにも、政治家たちの発言が全てではないことを韓国の方達にわかってもらう必要があると考え、一般市民の生の様子が伝わるSNSでハッシュタグを作りました」

    韓国で「#好きです_日本」のハッシュタグが

    初めはキソカンさんが、日本人Twitterユーザーに対し「韓国語でつぶやこう」と呼びかけ、数日でハッシュタグは広まった。

    すると、韓国側から「好きです日本」という意味の#좋아요_일본 (チョアヨ イルボン)というハッシュタグが誕生した。韓国側のユーザーからは、韓国語が分からない日本人ユーザーにも届けようと #好きです_日本という日本語版のハッシュタグも登場した。

    キソカンさんはそれに対し「私がハッシュタグを作った目的が、政治家たちの発言が全てではないことを韓国の方たちにわかってもらうことであったので、お返しのタグができたということはその私の思いが届いたということだと思い、とても嬉しく思います」と話した。

    一連のハッシュタグについては、韓国テレビ局のSBS NEWSでも紹介された。

    大学在学中に日本に語学留学したという韓国人の女性は、初めて日本に旅行した際、年配の日本人女性に道案内をしてもらった感謝の気持ちをツイートに綴った。

    #좋아요_일본 前に一度ツイートしたことあったけど、昔初めて日本に旅行で訪れた際当時は日本語が分からず当然道を聞くことすら出来なかった。ホテルの最寄駅まで来たものの迷ってしまい片言で、通りすがりの年配の女性の方に聞いたら、なんと親切にホテルまで連れて行ってくれて。

    もっと心から感謝の気持ちを伝えたかったけど分かる言葉がなく、何度も"ありがとうございます"と頭を下げることしかできなくて。その後女性が私と歩いてきた道とは反対の方向に戻るのをみて泣いてしまったことと、笑顔で手を振ってくれたことを何年経っても忘れられない。その方が、私が初めて出会った日本でした。

    女性はその後、日本の大学への進学を決め、現在は日本人と結婚しているという。

    また、日本と韓国にルーツを持つ静岡県在住のまこさんは、両方のハッシュタグを使って思いを伝えた。

    私は日本で生まれ育ったけど父は韓国人で母は日本人です。
    どっちの国も、人も、食事も好きです。 父の親戚と母の親戚は仲が良いです。
    一個人が願ってもどうしようもないんだろうけど、いがみ合ったりしないで欲しい…私は父母の血が流れてることを誇りに思っています。
    #좋아요_한국 #좋아요_일본

    まこさんは取材に対し「今の政治状況をとても悲しく、寂しく感じています。日韓関係が少しでもよくなることを願っています」と語った。

    「でも時代は変わってる。新しい道は私たちが作るべき」

    2つのハッシュタグを使ってツイートしている大半の人たちは、お互いの国のアイドルなどの音楽・文化が好きだったり、旅行をよくしている人たちだ。一方で現実では、毎日冷え込む日韓関係についての報道がなされ、歴史問題や領土問題も大きな課題として残っている。

    両国の良いところ、良い思い出ばかりが連なるTwitterを見て、複雑な感情を抱いたという韓国人女性がいる。韓国在住の会社員、Namiさん(32)だ。

    Namiさんは、#좋아요_한국(好きです韓国)のハッシュタグで呟かれたたくさんのツイートを見て、嬉しい気持ちもある反面で「複雑な気持ちになった」という。

    Namiさんは、自身を「歴史や政治を思うと、日本に対する複雑な感情を持ちながらも、日本の映画や音楽に魅力を感じて日本語の勉強を始めたごく普通の韓国の若者」と説明する。20代後半からは、関東の大学院で国際関係法を学び、留学中には、日本の友人にも多く助けられたが、差別もたくさん受けたという。

    「歴史的には日本のことを許すことはなかなか難しい」と話すが、一方で「過去のことを乗り越えて、私たち新世代はこれからどうすればいいかについて話し合うことが必要だとずっと前から思っていました」とも話す。

    そのような複雑な思いを8月3日に、素直に6つの連続ツイートで綴ると、反響が大きかった。日本人ユーザーにより日本語に訳したツイートも広まり、日本人ユーザーからも「正直に書いてくれてありがとう」とNamiさんの思いを理解するコメントが寄せられた。

    韓国語の連続ツイートの最後に、日本語でこう呟いた。

    でも時代は変わってる。新しい道は私たちが作るべき。
    #좋아요_한국 #諦めないで_韓日交流

    ハッシュタグ #諦めないで_韓日交流は、多くのユーザーの理解を得て、未来志向の日韓関係に対する思いが綴られている。

    Namiさんはこう語る。

    「こんな時こそ今まではできなかったより深い交流に力を入れれば、また新しい時代が来るのではないかと思います。そんな時代を生きてる両国の我々が作るには、やはり文化交流しかないのではないかと思いました。これが #諦めないで韓日交流を書いた理由です」