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日本で同性婚が認められるべき「8つの理由」。日弁連が意見書を発表

日本弁護士連合会は国に対し、同性婚を認めるべきとの意見書を発表しました。同性婚を認めないことは「重大な人権侵害」として、法令改正を行うよう求めました。

日本で同性間の婚姻(同性婚)が認められていない現状に対し、日本弁護士連合会(東京都・千代田区)は「婚姻の自由を侵害し、法の下の平等に違反するもの」「重大な人権侵害だ」とする意見書を発表した。

意見書では国に対し「同性婚を認め、これに関連する法令の改正を速やかに行うべきである」と述べている。

意見書は、どんな内容なのか。8つのポイントに絞ってまとめた。

1:国民の過半数が同性婚を認める意見を示している

日弁連が、国民のうち「同性婚を認める意見が過半数を示している」と主張する根拠が以下の調査だ。

・研究者グループによる調査(2015年、調査対象は全国の20歳〜79歳で計1259票)

「賛成」「やや賛成」の合計51.2%,「反対」「やや反対」の合計41.3%。

・NHKによる世論調査(2017年、調査対象は18歳以上、2643人からの回答)

「同性婚を認めるべきか」を問い、「そう思う」が50.9%、「そうは思わない」が40.7%。

2:憲法13条、14条に照らし重大な人権侵害


日弁連は同性婚を認めないのは、「憲法13、14条に照らして重大な人権侵害」として、こう指摘する。

「婚姻するかしないか、いつ誰と婚姻するのかの自由が保障されている」「性別や社会的身分など様々な理由によって誰もが差別されるべきでない」

また、第1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると定めている憲法24条に関しては、憲法制定当時は同性婚を想定しておらず「憲法制定会議でも同性婚を禁止すべきかという議論もなかった」とした上で次のように述べた。

「『両性の合意のみ』との文言が同性の婚姻を禁止する趣旨まで有すると考えることはできない」

「同性婚を法律で認めることを禁止しておらず、その基本的な趣旨に照らせばむしろ許容しているものと考えるべき」

3:パートナーシップ宣誓などの取り組みの広がりは、社会が法的な同性婚実現を望んでいるという声の現れ


意見書では、同性カップルを公的に認める東京都渋谷区の「同性パートナーシップ条例」や世田谷区「同性パートナーシップ宣誓」を紹介。

2015年に始まった両区のものと類似した制度が、毎年全国の自治体で導入され、広がっている意味を示す。

「自治体の取組の広がりは、国レベルで家族法上の制度として本意見書の結論を実現することを社会が望んでいることを示すものである」

4:パートナー制度を導入しても、異性間と違う制度を設けること自体が平等を損なう


日弁連は、異性同士の婚姻と同じ内容が「同性パートナーシップ制度」として導入されるのには反対し、「平等原則違反となると言わざるを得ない」と主張する。

「(異性同士と)分離した制度を設けること自体によって、 同性のカップルは異性のカップルに準ずる存在とのメッセージが発せられる」

「分離した制度を設けること自体が同性愛者の人格価値の平等を損なうもの」

5:国連も勧告している

国連人権高等弁務官の2015年5月の報告書で「同性のカップルとその子どもに法的な承認を与え、伝統的に婚姻しているパートナーに与えられてきた便益(年金、税金、財産承継を含む)を差別なく与えること」と勧告している。

6:同性カップルの保障に関する訴訟が相次いで提訴されている

2017年3月、外国籍の同性パートナーに在留特別許可を認めるべきだとした裁判が、東京地裁で起きた。結果、2019年3月に在留特別許可が認められた。

また、2019年2月14日には、全国13組の同性カップルが4つの地方裁判所で、同性が結婚できないのは憲法が定める「法の下の平等」に反するなどと訴え、国家賠償を請求する訴訟を提起した。

7:同性婚が認められた各国で手続き的な混乱が生じた報告はない

同性婚の実現をめぐっては、民法や法令の改正の難しさや、行政手続きなどで混乱が生じるといった反対意見がある。

それに対し意見書では、「アメリカを始め、同性婚を認めた国々で、同性婚が認められたことによって、手続的な混乱を生じたとの報告はこれまで特になされていない」としている。

8:そもそも子どもを産み育てるか決めることは最も私的なこと


同性婚への反対意見には、同性同士では「子どもを生み育てられない」とするものもある。

それに対し意見書では、「同性婚を認めない正当な理由にはなり得ない」と反論する。

というのも、同性同士でも養子縁組などで育てられるからだ。また、そもそも異性同士では「子を持つ意思がなくても婚姻が認められている」とも示す。

意見書は以下の様に指摘している。

「そもそも、子どもを産み育てるかどうかを決めることは最も私的な領域に属することであり、人としての生き方の根幹に関わることであるから、憲法13条の自己決定権として、またはリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)として保障される」

また、「異性同士の結合であれば,生殖の可能性や子を持つ意思がなくても,当然のごとく婚姻として認められている」とし、さらに実例を踏まえた上で「養育の場という意味では、同性同士の結合に
おいても、相手方が養子縁組した子やかつて異性の者との間に生まれた子を二人が協力して養育していることがある」と説明した。

意見書の最後には「同性婚が認められないことによる不利益の例」として、「同性パートナーが病気になったが、家族として扱われず、病状の説明を聞いたり病室に入ることも許されなかった」などの例をあげている。

また、意見書の中では、性的指向を理由にする「差別や不利益,暮らしにくさ,生きにくさは依然として続いている」とし、いじめや暴力、自殺を考える人が多い現状なども述べ、そのような差別などをなくすためにも同性婚を認めるべきと強く主張した。


今回発表された意見書は、申し立てを受け、同連合会が当事者らにヒアリングをしたうえで作成された見解だという。

2015年7月、450人以上の当事者らが同連合会に対して、人権救済の申し立てを行なっていた。

今回発表された意見書は、その申し立てに対する同連合会の見解だという。

当事者の田中昭全さんは会見後、BuzzFeed Newsに対し「人権救済を求めてから4年も経ち、本当に長い間待ったので、遅きに失した気持ちもあるが、日弁連は同性婚が認められないことは人権侵害だとはっきり言ってくれた」と意見書を歓迎した。

田中さんは、同性パートナーの川田有希さんと共に会見に出席。2人は、12年間同棲しているといい、2019年2月14日に一斉提訴された同性婚訴訟の原告団の1人でもある。

日弁連による「人権侵害だ」との指摘に対しては「当然だという気持ちもあるし、よく言ってくれたという思いもある」と語る。

田中さんは「今回の意見書の内容も、訴訟で参照され、結果にも反映してくると思うので、本当によかったと思います」と話した。

UPDATE:憲法24条について追記しました。

(サムネイル:時事通信)