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中野区が同性パートナーシップ制度を開始。交際25年のカップルが語るその意味

制度を利用するかどうかは自由。でも、それを選ぶ権利すらないのは不平等。

中野区で同性カップルを対象にしたパートナーシップ制度が開始

中野区(東京都)では8月20日から、同性間のパートナーシップ関係を認める「中野区パートナーシップ宣誓」の取り組みが始まった。

9月6日朝、同区で1組目となるカップルとして宣誓書受領書を受け取ったのは、大江千束さん(58)と小川葉子さん(55)。

レズビアン・バイセクシュアル女性を支援するコミュニティLOUDを運営するなど、中野区を拠点に活動するレズビアンカップルだ。

25年間寄り添ってきた二人に、関係を説明するものは何もなかった

二人は30代のときにレズビアン・バイセクシュアル女性の交流会で知り合い、交際を始めた。

当時はまだLGBTの認知は広がっておらず、二人で大学の講義に出向けば「今日レズがくるって」と、学生に見世物扱いを受けることもあったという。

そんな時代から25年間にわたり交際を続けてきた二人は、日常生活でも不便を感じてきた。

同棲していても戸籍上の結婚をしたカップルではないため、周囲には「パートナー」や「親友」として、ときには男性として説明することさえあったという。

小川さんは母親を急病で亡くした時、葬儀の場で大江さんを「親友」として紹介するほかなかった。

自分たちが結婚するかどうかを選ぶこともできない現状は、不平等だと感じた。

不測の事態にどういった立場で支え合えばいいのかと、深く考えるきっかけでした。わずらわしい説明をせずに済むような、何かがあればいいのにと思いました」

また、大江さんも親族での集まりや病院などで、二人の関係をちゃんと説明できず、もどかしさを感じてきたと話す。

同性パートナーシップを認める自治体は9つに。「この流れを止めてはいけない」

現在、国内で同性が利用できるパートナーシップ制度を導入しているのは、渋谷区、世田谷区、伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市、大阪市、中野区の9つの自治体だ。

このうち渋谷区以外は条例に基づく制度ではない。カップルに対し具体的にどのような不利益が解消されるかについては、今後も整備や改善が必要になる。

今回中野区が発行した受領書は「法律上の権利・義務などを付与する」ものではない。

しかし小川さんは、法的効力の有無にかかわらず、関係を可視化できる事が大事だと話す。

「同性のカップルがいることを、皆が目に見えてわかるようにしていかなければいけません。国の動きが鈍い中、自治体の役割は大きいと思います。

国の婚姻制度についても議論はあるし、いろんな生き方があると思います。ただ、私達には選ぶ自由さえないというのは、不平等です

また大江さんは「自分が生きている間にこんなことが起こるとは思いませんでした。この流れを止めてはいけません」と、期待を語った。


大江さんは取材の中で、カップル第1号として申請した背景について明かした。

「はじめ、カップル第1号は私達でなく、若い方のほうが良いかなと思ったんです。

でも、私達みたいな普通のおばちゃんが出てくることで、安心してもらえるかなとも思いました。

そこら辺で買い物をしてる人が、当事者かもしれませんから」