「自分がめちゃくちゃにしてしまったこと」の責任と、どう向き合うか アントマン俳優が語る

    本当は見逃してほしくない「3秒間のシーン」 の裏側も。

    『アントマン』シリーズの主人公であるスコット・ラングは、マーベル・スタジオが製作する映画の中でも異色のキャラクターだ。

    体のサイズを自由自在に操るスーツを着て「アントマン」として活躍するスコットは、決して品行方正な“ヒーロー”ではなく、窃盗罪の前科があり、離れて暮らす娘がいる、バツイチの中年男性。

    そんな映画が重くならず、むしろ爽やかな印象を残すのは、演じるポール・ラッドのおかげだろう。

    8月31日公開の最新作『アントマン&ワスプ』のために来日したポール。取材現場に入るなり、記者に「そのネクタイ、僕も同じものを持ってるよ!」と声をかける、気さくな人柄だ。

    今作で、スコットは何度も苦しい選択を迫られ、たくさんの失敗を経験する。それでも再び立ち上がり、自らの人生を取り戻していく。そんな等身大のヒーローを演じて、何を思うのか。BuzzFeed Japanはポールに話を聞いた。

    「やらかして」も逃げ出さないために

    ーー前作では服役後に、家族がバラバラになり、無職になった状態。そして今作は世界観を共有する『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』後に仲間と疎遠になった状態からストーリーがはじまります。スコットはシリーズを通して「自分がめちゃくちゃにしてしまったこと」の責任と向き合っていますが、ポールさん自身にはそのような経験はありますか?

    もちろんあります。人はみな誤った選択をすることがあるし、その結果として悪いことが起きて、その責任を取らなければならないこともある。人生というのはそういうものだから。

    僕たちにできることは、その失敗がリカバリーできる範囲の失敗であることをただ、願うばかりだよね。

    ーースコット・ラングを演じた経験、あるいはこれまでのご自身の経験から、自分が「やらかした」結果から逃げ出さないためには、何が必要だと思いますか?

    まず、なによりも、自分の行動の結果には、やはり自分がしっかりと向き合わなければならない。

    その上で大切なのは、スコットのように友人たちやパートナー、そして家族との間に、愛情や信頼というものがあることじゃないかな。

    そして、自分がそれに値する人間になるために努力することだと僕は思う。スコットもそうやって、人生を取り戻していくんだ。

    「お調子者3人組」「ワスプ」との関係

    ーー友人ということでは、元窃盗団仲間で現在は更生しているルイス、カート、デイブとのかけあいが今作も痛快でした。現場ではどんな雰囲気で撮影をしているんですか?

    カートを演じるデヴィッド(・ダストマルチャン)に初めて会ったときのことを今でも覚えているんだけど、彼は自分の役と同じ、ロシア訛りの英語で話しかけてきたんだよ。

    僕は本当に彼がロシア系だと思い込んで、本当はアメリカの中西部出身だなんてしばらく気がつかなかった(笑)。

    デイブを演じるT.I.は有名なラッパーだから、演技だけじゃなく、撮影の合間にも、僕たちにかっこいいグルーヴを吹き込んでくれている。

    ルイスーーマイケル(・ペーニャ)はすばらしい俳優で、アメリカではむしろシリアスな役柄が知られているけど、実物はこの映画で観てのとおり、おもしろいヤツだよ。

    ーー女性ヒーロー「ワスプ」としてパートナーになるホープはいかがでしょう。今作では前作とは関係性が変わったようですが。

    もちろん、今作の冒頭、僕たちはあまりいい関係ではない。『シビル・ウォー』の事件で、彼女たちに迷惑をかけてしまったから。

    でも、アントマンとワスプが一緒に働くチームとしてお互いの強さを発見していくことで、スコットとホープもようやくしっくりしだして、いい感じになっていくんだ。

    ホープを演じるエヴァンジェリン・リリーはユーモラスで、楽しい人。とても才能が豊かで、すべてを楽しんでる。

    このクレイジーな世界観の中に、それと戦うんじゃなくて、楽しもうとする人と一緒に飛び込むのは、とてもいい経験だよ。彼女と仕事をするのはすごく好きだ。

    「大幅カットのシーン」の裏側

    ーー前作ではアントマンを演じるために厳しいトレーニングや食事制限をして臨んだということでしたが、今作ではいかがでしたか?

    たしかに前作のために、僕はフィットネスのことばかり考えて、ほとんど何も食べてないような生活をした。でもね、今作は前作よりも、もっとやったんだよ!

    ーー今作では裸の上半身がチラッと映るシーンがありましたが、見事に割れた腹筋でした。

    聞いてくれよ! あれは実は、もっと長いシーンだったんだ。それが、編集の都合で短くなってしまった。

    僕としては、1年間がんばってワークアウト中心の生活に耐え抜いたのに……「たったの3秒かよ!」みたいな気分には、ちょっとなったね(笑)。

    ーー厳しいトレーニングをやりきったのは、なぜだったんですか?

    それはまさに、アントマンを演じる者として、自分の責任を果たす、自分が周囲の愛情や信頼に値するように努力するという、それだけだね。

    あとは、「がんばれば3秒間だけでもワークアウトの成果を観客のみなさんに披露できる!」っていうことかな(笑)。

    アベンジャーズとつながるのか?

    ーー今作はマーベルから直前に公開された、世界観を共有する『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』とのつながりを強く示唆する終わり方でした。アントマンはわれわれの前に戻ってきてくれますか?

    『アベンジャーズ』とつながっていることはみんなもわかったよね。それがどうつながるかは、ぜひ楽しみにしていてほしい。

    僕としては、もっと出番が多くなるといいなと思うよ(笑)。