女性の7割が電車や道路でハラスメントを経験。「実態調査」でわかったこと

    痴漢被害に遭った際に、「我慢した」人が半数だった。

    性暴力やセクシュアル・ハラスメントに対して「声をあげた人」を支援するプラットフォーム「#WeToo Japan」が1月21日、ハラスメント被害の実態について調べた調査結果を発表した。

    調査結果によると、女性の70%、男性の32.2%が電車やバス、道路などの公共空間で、何らかのハラスメント被害を経験していた。

    また、痴漢被害に遭った人の約半数が「我慢した」と答えた。

    電車や道路など街頭で起きる「ストリートハラスメント」

    調査は、評論家の荻上チキさん、兵庫教育大大学院の永田夏来助講師、立命館大学専門研究員の妹尾麻美さんが担当。

    2018年9月に、関東圏で暮らす男女約1万2千人(15〜49歳)を対象に、インターネット上で実施した。

    国内のハラスメントの現状を明らかにするために焦点を当てたのは、以下の4つ。

    • 電車やバス、道路などの街頭で起きる「ストリートハラスメント」
    • インターネット上の「オンラインハラスメント」
    • セクシュアル・コンセント(性的同意)
    • ハラスメント幻想(被害者の服装など、セクハラにまつわる誤解)


    今回は調査結果の中から、公共空間における「ストリートハラスメント」について明らかになった、8つのポイントを紹介する。


    1. 女性の70%、男性の32.2%が電車や道路で何らかのハラスメントを経験している

    ストリートハラスメントに関する項目では、電車やバス、道路などで以下12のハラスメント行為を経験したことがあるかを調査した。

    • 自分の体を触られる
    • 体を押し付けられる
    • 洋服などを汚される
    • 故意に付きまとわれる
    • 故意にぶつかられる
    • 突然罵声を浴びせられる
    • 性器など体の一部を直接見せつけられる
    • わいせつな画像や動画を見せつけられる
    • 不愉快なもの(下着など)を一方的に渡される
    • 見ず知らずの異性から自分の連絡先を渡される
    • いきなり手を握られる、腕を掴まれる
    • 性的なからかいをうける


    その結果、女性の70%、男性の32.2%がいずれかのハラスメント行為を受けたことがあると答えた。

    2. 多くの女性が、電車や道路などで性的なハラスメントを経験している

    中でも性的な被害においては、男性よりも女性の方が多く被害に遭っていることがわかった。

    特に「自分の体を触られた」「体を押し付けられた」経験がある女性は、半数近くにのぼった。

    3. 暴力的な行為は、男女ともに同じくらい被害に遭っている

    「故意にぶつかられる」「突然罵声を浴びせられる」などの暴力行為は、女性の方がやや被害経験率が高いものの、男性も同じくらい被害を経験していた。

    4. 痴漢被害が最も多いのは10代。だが、30〜40代も1割弱が被害に遭っている

    過去1年に電車内で痴漢被害を経験した人の割合を年代別に見ると、10代が最も高かった。その一方で、30〜40代も1割弱が被害に遭ったと答えた。

    永田さんはこの結果について、「よくTwitterなどで、40代の女性がハラスメントについて発言すると、『そんなの気のせいだ』『年齢が高い女性は被害に遭わないだろう』などと言われるが、7%は決して低くない」と指摘。

    「若い女性の被害経験が多い一方で、歳をとっても痴漢被害からは逃れられない。40代の女性が女性専用車両に乗ることについて揶揄するような声もあるが、合理性のある選択だ」と述べた。

    5. 通勤・通学時間が長い女性ほど、過去1年に痴漢被害を経験した人が多い

    調査では、痴漢被害と通勤・通学時間の関係性にも注目。通勤時間が長い層ほど、過去1年に被害を経験した人が多いという結果になった。

    6. 制服のスカート丈を長くしても、痴漢被害を防ぐことはできない

    「自分の体を触られる」痴漢被害については、「被害者の服装にも原因があり、注意するべきだ」とする言説も少なくないが、被害者非難に繋がる恐れも指摘されている。

    1月15日には「自分が『カワイイ』と思った短いスカートによって性犯罪を誘発してしまいます」と書かれたポスターに批判が集まり、大手制服メーカーが謝罪。「被害に遭う女性側にも非があるとの意味に捉えられる」とお詫びした

    こうした議論も踏まえ、今回の調査では、痴漢被害と制服との関係に着目。

    中学時代の制服のスカートの長さ別に分類した際、「やや短く・短くしていた」と答えた人の被害経験率が最も高かったものの、すべての長さで20%以上の10代女性が痴漢被害を経験していた。

    また、「長く・やや長くしていた」層の方が「ふつう」の層よりも被害を経験しており、「スカートの長さの差異と被害経験率に関連は見出せない」と分析した。

    7. 中学生の頃に制服だった女性は、痴漢経験率が高い

    中学時代に制服だった女性と、私服だった女性を比較すると、ブレザーの女性の48.7%、セーラー服の47.2%が被害を経験している一方、私服だった女性の被害経験率は28.9%だった。

    制服の種類に関わらず、制服を着ていること自体が被害経験率を高める可能性があるという。

    荻上さんは、通勤時間や制服の有無など「本人にはコントロールできない環境要因が、ハラスメント被害の遭いやすさを高めている可能性があることが示唆された」と分析。

    「『スカートを長くする』など、個人ができる防止策の効果は限定的といえる。遠回りと思うかもしれないが、そもそも社会に蔓延している性差別を解消していくことが重要だと言える」と指摘した。

    8. 痴漢に遭った時、約半数が「我慢した」

    調査ではハラスメント被害に遭った際にどのように振る舞ったかも尋ねている。

    痴漢被害に遭った際に「我慢した」と答えた人は、半数を超えた。一方、「犯人に対して何らかの行動を起こした」人は20人中3.5人、「周囲の人に助けを求めた」人は20人中1人だった。


    小島さんは会見で、調査結果についてこう話した。

    「ハラスメントについて議論する上で、自分が設けている基準、世間の常識だと思っているものが、もしかしたら思い込みかもしれないということを考える貴重な資料。誰も怖い目に合わずに済む、誰も加害者にならなくて済むために、どう行動を変えればいいのかな?ということを考える材料にしていきたい」

    【更新】「日本におけるハラスメント」と表記していた箇所を「国内のハラスメント」に修正しました。