「娘に顔向けできないから」 東京医大の入試不正、弁護団が電話ホットラインを開設へ

    「もう本当に親としては、張り裂けそうな気持ちになりますよね」

    東京医科大学が女性や浪人を重ねた受験生が不利になるよう、一般入試の点数を操作していた問題で、有志の弁護士が8月21日、「医学部入試における女性差別対策弁護団」を結成した。

    25日にホットラインを開設し、元受験生やその家族から相談を受け付ける。

    共同代表の角田由紀子弁護士は「日本社会にあるこの性差別をいかに根絶するかは、社会全体が問われている問題だと思います」と語った。

    被害の救済と再発防止へ

    弁護団には北海道から九州まで、全国の弁護士57人(21日時点)が参加。

    8月25日午後1時〜午後4時まで緊急ホットライン(044-431-3541)を開設し、電話相談を実施する。東京医大の元受験生や保護者を中心に、男女問わず、匿名で相談を受け付けるという。

    「具体的に医大と交渉したい、裁判したいという段階ではなくても、ニュースを受けてモヤモヤしている、何があったか知りたいという方は多いと思う。そうした方からも相談を受けたい」と、共同代表の打越さく良弁護士は呼びかけている。

    その後、当事者の希望に応じて、東京医大に対して入試成績の開示や、受験料の返還、賠償金の請求などを東京医大に対して求めていく方針だ。

    メール(igakubu.sabetsu@gmail.com)では随時、相談を受け付けている。

    「娘に顔向けができない」

    東京医大・内部調査委員会の報告書によると、同大では少なくとも2006年から、一般入試の二次試験において、女性と浪人回数の多い男子受験生の合格者数が少なくなるよう、得点が不正に操作されていた。

    弁護団に加わった神原元弁護士は、この問題に男女は関係ないと語る。

    「私には娘がいます。娘が大きくなって同じような差別を受けたらどう思うか。これはもう本当に親としては、張り裂けそうな気持ちになりますよね」

    「教育を受けるというのは基本的人権でも根本のものだと思います。そこで、女性であるということで差別を受けるのは、絶対にあってはならない」

    「試験という、本当に一番公平公正でなければならない部分が、根本から破壊されているという社会は、男であっても女であっても不幸です。なんとかこの社会を是正しなければ、自分の娘にも顔向けできないということで(弁護団に)参加しています」

    元受験生「勉強も手につかない」

    会見では、今年度の東京医大の一般入試を受験し、二次試験で不合格となった女子受験生のコメントも読み上げられた。以下、一部を掲載する。


    「私は平成30年度の受験生の女性です。現在、来年度の医学部入試を目指し、未だ勉強を続けています。今年の受験では、東京医大の一次試験を通過し、二次試験で不合格となりました」

    「予備校の事前の合格判定では東京医大はA判定でしたので、どこで失敗したのかと思っていたところ、今回の報道で二次試験における女性受験生と多浪生への一律の不正な得点操作を知りました」

    「もしかして、自分もそのせいで不合格だったのではと思うと、本当に悲しく、悔しく、勉強も手につかない状態となっています」

    「努力を重ね、がんばっていれば、公平公正に判断してくれるのだと当たり前のように思っていたからこそ、その精神的ショックはとても大きいです。さらに入学が1年延びたことで、予備校代やそのほかの費用で100万円以上がかかっています」

    「今回の事件を受け、私も名前を出して大学に成績開示を請求できたらどんなにいいかと思います。ただ、一方で、これからまた医学部を受験する身としては、東京医大に名前を明らかにすることで、これからどんな不利益になるだろうと思うと、不安でできませんでした」

    「ただ、名前を出せないけれども、真実を知りたい、その上できちんとした対応をして欲しいと思っている受験生が大勢いることをぜひ忘れないで欲しいと思います」

    「東京医大にはいち早く、不正前の成績分布や合格最低点、二次試験の採点基準などを社会に対して開示してもらいたいです。私はそれを心待ちにしています」