「若い女性たちの人生の大切な時間を奪い去った」東京医大・入試不正問題、大学側は争う姿勢

    「正すべきは、若い女性が働き続けることができない医療現場の悪しき労働環境であり、女子学生の入学抑制ではないことは、明らかです」

    東京医科大学が医学部入試で、女子受験生らが不利になる得点操作をしていた問題で、同大を受験した女性たちが大学側に対して損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が6月7日、東京地方裁判所で開かれた。

    東京医大側は裁判に出席せず、女性たちの請求の棄却を求める答弁書を提出した。具体的な反論は、次回の期日以降に行うという。

    「正すべきは医療現場の悪しき労働環境」

    訴状や弁護団によると、原告は2006〜18年度に東京医大を受験し、不合格になった女性36人。3月の提訴時は33人だったが、4月末に新たに3人加わった。

    東京医大が性別によって受験者を差別していたにも関わらず、「公平公正に選抜してもらえると誤信させた」として、1年度につき1人200万円の慰謝料など、計1億4000万円の損害賠償を求めている。

    原告側の角田由紀子弁護士は意見陳述で、「大学入試で女性の合格者を少なくするという明確な目的のもと、(不正な得点操作が)何年にも渡り行われていたことに衝撃を受けました。そこにあったのは、連綿と続く明らかな女性差別でした」と主張。

    「多くの若い女性たちの人生の大切な時間を奪い去り、その努力を踏みにじり、あるいはその自尊感情を傷つけ、彼女たちに苦悩を強いたのです」

    「被告の行ったこれらのことは、本来は金銭で償うことはできません。しかし、現在の法制度のもとでは、原告たちは、残念ながら損害賠償請求という形でしか、意思表示ができません」

    さらに、問題が発覚した当時、「医療の現場は女性には厳しすぎて向かない、特に医師になりたての若い時期の女性は出産や育児の時期と重なり、長時間・過密労働に従事することが難しい」とする、大学側の説明が報じられたことに触れ、こう続けた。

    「正すべきは、若い女性が働き続けることができない医療現場の悪しき労働環境であり、女子学生の入学抑制ではないことは、明らかです」

    証言台に立った原告の20代の女性は「なぜ人の人生を性別で品定めして、足切りみたいなことをするのでしょうか」と問いかけ、「この訴訟が医学部の問題に限らず、日本から差別をなくすための一歩になることを期待しています」と語った。

    順天堂大学に対しても提訴

    「医学部入試における女性差別対策弁護団」では、6月20日にも、東京医大と同様に入試不正問題が発覚した順天堂大学に対して、女性十数人が提訴する予定だという。

    6月22日には、社会学者の山口一男さんや、弁護団の辻村みよ子弁護士、産婦人科医の吉野一枝さんなどを招いたシンポジウムも開催する。