「信頼を失う行為」「受験生の思いを踏みにじった」女子受験者33人が東京医大を提訴

    弁護団の共同代表を務める角田由紀子弁護士は、訴訟を通じて「この事件に背景にある『性差別』の状況を告発したい」と語った。

    東京医科大学が入試試験において、女子受験生に不利になる得点操作をしていた問題で、同大学を受験した女性33人が3月22日、同大に対して、成績の開示や慰謝料などを求める集団訴訟を提起した。

    女子受験者33人が原告に

    代理人を務める「医学部入試における女性差別対策弁護団」によると、原告となるのは、2006〜18年度の入試で東京医科大を受けた受験者33人。

    大半が関東圏に暮らす20代の女性で、約半数が現在は他大学の医学部に所属している。中には、最大で7年度にわたって東京医科大を受験した原告もいるという。

    訴状では、東京医大が性別によって受験者を差別し、一律に減点する不公平な入試手続きをとっていたにも関わらず、そのことを隠し、「公平公正に選抜してもらえると誤信させた」と主張。

    その結果、不公平な入学試験を受験させられたとして、1年度につき1人200万円の慰謝料を請求している。

    2017年度と18年度の受験者の中には、不正な得点操作さえなければ合格していたと判定された原告も2人おり、これらに関しては不当に不合格にされたことに対する慰謝料500万円を求めている。

    まだ明らかにされていない、16年度以前の入試成績や順位についても、訴訟の中で開示を求め、必要に応じて請求額を変更する方針だ。

    「受験生の思いを踏みにじった」

    原告の一人の鈴木飛鳥さん(20代、仮名)は会見で、「医学部入試の面接で親の職業を聞かれることがあり、成績以外を考慮する医学部があるのでは…と思ったことはあります。でもこれほどあからさまなことをしていたのかと、愕然としました」と話した。

    2017年度に受験し、不正がなければ合格していたと判定された原告の久保田かなさん(仮名)も弁護団が代読したコメントで、東京医大への憤りをあらわにした。

    「東京医大は、受験生やそれを支える人たちの年単位での苦労や思いを、大学側の勝手な都合で踏みにじったのだということ、医師となる人間を教育する側の人間が差別や不正を働くことが、どれほど浅はかで、信頼を失う行為であるのかということをしっかりと認識し、改めて謝罪すべきです」

    日本社会の根底にある「性差別」

    弁護団の共同代表を務める角田由紀子弁護士は、訴訟を通じて「この事件に背景にある『性差別』の状況を告発したい」と語った。

    「昨年8月にこの事件を知った時、日本社会の地層の底には『性差別』が横たわっており、私たちがツルハシを持って挑みかかっても、崩れない老虎としたものがあると感じました」

    「多くの人がある意味、小さい頃から性差別に『慣れ親しんで』しまっている状況があるかもしれません。でも今回の事件では多くの人が怒りを表明しました。その気持ちに弁護団としても、きちんと答えていきたいと考えています」