MERYの再出発、広がる期待の声 DeNAと小学館による新体制は再び愛されるか

    コンテンツの制作は小学館が主導する新編集部が担う。

    正確性や著作権の問題を指摘され、IT大手DeNAがキュレーションメディア事業を休止してから10カ月あまり。

    MERY」が帰ってきた。

    「株式会社MERY」を共同で立ち上げたDeNAと小学館は10月27日、昨年12月に休止した女性向け情報サイト「MERY」を11月21日から再開すると発表した。

    恒例の新企画発表会の中で、サプライズとして10項目の最後に紹介された。

    「かわいい」世界観と読者目線のコンテンツで、若い女性から絶大な支持を集めたMERY。再開に先立ち、休止の原因となった課題の対策はどうとるのか。

    経緯を振り返る

    問題の発端は、DeNAが成長戦略の柱に掲げたキュレーションメディア事業「DeNAパレット」で展開していた、MERYの姉妹メディア「WELQ」。

    医療情報サイトとして、命や健康にまつわる記事を扱っていたにも関わらず、専門家の監修を受けずに、ネット上の不確かな情報をまとめた記事を量産する手法に批判が燃え上がった。

    (詳細は「DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言」)

    他サイトからの文章や画像の無断転用、不正確な記事の量産は、DeNAが展開していた10のキュレーションメディア全てに存在していた。

    批判を受けてDeNAは2016年12月7日までに、全メディアの全記事を非公開とした。その中にMERYも含まれていた。

    月間5500本を社員2人でチェック

    若い女性に絶大な人気を誇り、10メディア中の稼ぎ頭だったMERY。

    3月に公表された第三者委員会調査報告書によると、10メディアで著作権侵害の可能性があると指摘された画像74万7643件のうち、51万8162件がMERYだった。

    また、全体の約8割に当たる13万件の記事が、医療に近い「美容・健康」に関係したり、読者に誤解を与えたりする内容が含まれていたという。

    記事を主に制作していたのは、DeNAが買収したMERY運営会社「ペロリ」のインターン約140人。その多くは女子学生で、彼女らが書いた月間5500本を超える記事を、社員2人でチェックしていたという。

    インターンによる記事の作成は、同世代の読者目線に見合うコンテンツづくりや世界観の構築には役立った。

    しかし、著作権や正確性の面でのリスクは避けられなかった。

    上層部が設定した高い数値目標を達成するために、無理のあるチェック体制で記事を量産し続けたMERY。

    「成長を追い求めすぎる過程において、正しい情報の提供という点に対する配慮を欠いた運営となった」

    12月7日にDeNAの創業者・南場智子会長と開いた謝罪会見で、キュレーションメディア事業を牽引していた同社の守安功社長はそう説明していた。

    小学館主導で再スタート

    MERY再始動に向けてDeNAが本格的に動き始めたのは、2017年4月。小学館とデジタルメディア事業で協力する「基本合意書」を結び、8月には共同出資で「株式会社MERY」を設立。10月には公認ライターや動画ディレクターの募集を始めた。

    社長には小学館副社長で「プチセブン」や「CanCam」を手がけた山岸博氏が就任した。コンテンツ作成、編集、校閲などの業務は小学館が担う。

    新しいMERYでは、以前MERYに掲載された記事は一切使わず、DeNAはシステム構築やネット上のマーケティングなどでサポートに回るという。

    MERYを運営してきたペロリの中心メンバーは代表取締役だった中川綾太郎氏を初め、多くがすでに退社している。

    コンテンツ制作を紙メディア時代からのノウハウがある小学館で再スタートする。

    MERY復活に喜びの声が

    27日に復活が発表されると、Twitter上にはすぐに喜びの声が並んだ。

    Mery再開やん!!!!! めっちゃ嬉しい

    MERYが復活する!女子力上がる!

    愛されるメディアとして復活できるのか

    「かわいい」世界観と、欲しい情報がそこにあるという読者目線で圧倒的な支持を受けたMERY。だが、それを作り上げて来たメンバーはすでにいない。

    著作権問題やコンテンツの正確性については、今も厳しい目が向けられている。批判を乗り越えつつ、愛されるメディアとしてどう復活の道筋を作るのか。

    27日に小学館で開かれた発表会で配られた資料には、再発防止を強く意識した次のような言葉が並んでいた。

    • MERY公認ライターおよび編集部が執筆した記事は、法令に基づき各種確認を経て公開判断をする。
    • MERY公認ライターは新たに採用面接をし、教育・研修を受けたライター。
    • 一般投稿による記事は取り扱わない。
    • 旧MERYの記事は使用しない。
    • 全ての記事は校閲、編集部の二重チェック後に公開する。


    だが、この体制では、かつてのMERYのようなコンテンツの量産は難しい。

    また、MERYが愛された理由の一つだった「知りたいと思った情報がそこにある」メディアになれるのか。

    新作発表会では、株式会社MERYのコンテンツ本部副本部長の藤井敬也氏が、新MERYのコンセプトを紹介。

    掲げるビジョンは「女の子の毎日をかわいく」。あらゆる女性が「好き」に出会えるメディアを目指して、ファッション、美容、コスメ、グルメ、恋愛などのジャンルの記事、動画を配信する。

    また、好きな記事や画像をコレクションできる「ボックス」という新機能も搭載するという。

    27日にMERY再開が発表された小学館の新規事業発表会には、MERYの山岸社長やDeNAの江端浩人メディア統括部長は登壇せず、質疑応答もなかった。

    BuzzFeed Newsはインタビューを申し込んでいる。

    訂正

    DeNAが全メディアの記事を非公開にしたのを「12月1日までに」と記していましたが「7日までに」の誤りでした。


    BuzzFeed JapanNews