「その涙も乗り越えてみせて」 貧困街から世界へ登りつめた“サッカーの女王”が訴えること

    「女子サッカーの未来は、あなた達にかかっています。女子サッカーの存続はあなたたちにかかっているんです」

    フランスで開催中のサッカー女子ワールドカップ。

    イングランドが3-0でノルウェーを下し、ベスト4へ一番乗りを決めたなか、決勝トーナメント1回戦で敗退したブラジルの絶対的エース、マルタ選手が、敗戦後にサッカーを愛する女の子たちへ贈ったメッセージが注目されている。

    「サッカーは男のスポーツだから」

    ブラジルの中でも最も貧しい地域の一つアラゴアス州で生まれ、6、7歳の頃にサッカーと出会ったマルタ選手。

    幼い頃は「サッカーは男のスポーツだから、女の子にはやる資格がないと言われ、悲しかった」とNumberのインタビューで語っている。

    「10歳のときに学校のフットサルチームに入ったの。女子はハンドボールのチームしかなくて、興味がなかったしやりたいのはサッカーだった」

    「男子のチームにうまく入ることができたけど、大会に行って耳にしたのはほとんどが否定的な言葉だった。どの大会でも女の子は私だけで、好意的には見られなかった」

    「サッカーは男のスポーツだから、女の子にはやる資格がないと言われるのは悲しかった。『プレーする資格がないのならば、どうすればもっとうまくなれるの?』と叫びたかったし、神はどうして私に才能を与えたのかとも思った。

    「ほとんどの時間、ピッチ上の罵詈雑言に耐えるのに気を使っていたわ」

    現在33歳の彼女は、これまでに2004年のアテネ五輪、2008年の北京五輪でチームを銀メダルに導き、2006~2010、2018年の6年にわたって国際サッカー連盟(FIFA)の年間最優秀選手に選ばれた。

    今大会では、6月18日のイタリア戦でゴールを決め、ワールドカップ通算17得点目を記録。

    男子ワールドカップのクローゼ選手の最多得点記録(16得点)も追い抜き、男女を通じて歴代最多得点プレイヤーとなった。

    「その涙も乗り越えてみせて」

    女子サッカー史上最高の選手とも名高いマルタ選手は、決勝トーナメント1回戦でフランスに1-2で敗れたあと、かつての自分のように、苦しみながらもサッカー選手を目指す少女たちに向けて、力強いメッセージを送った。

    「もっと上を目指すこと、もっと練習すること、もっと自分を大切にすること。90+30分プレーできるよう準備すること。女の子たちにお願いしたいのはそういうことです」

    自分自身を含め、ワールドカップ史上最多の7大会に出場を果たしたブラジルのフォルミガ選手など、女子サッカーを代表する選手たちがいつまでも現役でいるわけではないと言い、こう続けた。

    「女子サッカーの未来は、あなたたちにかかっています。存続がかかっているんです」

    「そのことをよく考え、もっと大切にしてください。最後に笑うために、今のその涙も乗り越えてみせてください」

    大会は7月7日に決勝戦を迎える。