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願うだけでは、人生が終わってしまうから。同性婚訴訟、原告に立たない人の思い

「いつか誰かがやるとか、(同性婚が)できるようになったらいいなとか思っていたら、もう本当に人生が終わってしまう」

2月14日、日本で初めて、同性同士が結婚する自由をめぐって争う訴訟が、全国4カ所の地方裁判所に提起される。

原告となるのは、全国13組の同性カップル。その背景には、同じ願いを抱きながらも、長らく声をあげることができなかった、たくさんの人の思いがある。

「他人事にはできない」

2月7日、世田谷区で暮らす西川麻実さんと小野春さんが、区役所(北沢総合支所)へ婚姻届を提出した。

それぞれが異性と結婚していた時に授かった子ども3人を育て、家族を営むこと14年。

ふたりも、弁護団が「『結婚の自由をすべての人に』訴訟」と呼ぶ今回の一斉提訴で、原告に立つカップルだ。

婚姻届を提出した日、西川さんと小野さんの隣には、世田谷区で2015年に始まった「パートナーシップ宣誓」制度の実現などに向けて、共に活動してきた3組の同性カップルの姿があった。

彼らは今回の訴訟には参加しないが、この日を西川さんと小野さんと一緒に迎えたいと、会見に同席した。うち2組は同日、ふたりと一緒に婚姻届を提出した。

「今回一緒にがんばってきた(西川さん、小野さんの)ふたりが原告になると聞いて、他人事にはできない、黙っていてはいけないと思いました」

そう語るのは、鳩貝啓美さん(53)と、河智志乃さん(47)カップルだ。

ふたりは12年間連れ添い、「夫婦」と同じように協力し合い、互いを思い合って生きてきた。

だが、法的な婚姻関係を結ぶことができないため、配偶者控除を受けることができなかったり、不動産契約で不利な条件になったり、医療機関でお互いを「家族」と認めてもらうのに苦労したりと、様々な困難を経験している。

だからこそ、婚姻届の提出という形で、自分たちの声を届けることにしたのだという。

いつかきっとでは「人生が終わってしまう」

実際に書類を区役所の職員へ手渡したとき、鳩貝さんは、10歳の頃の自分を思い出したという。

自分は同性が好きだということに気付くと同時に、「私は一生結婚しないんだ」と認識せざるを得なかったからだ。鳩貝さんは言う。

「こうしている今も自分のセクシュアリティに気付いて未来が見えず、途方に暮れている若者たちに、不安の少ない社会を贈りたいと思っています」

「同性を好きでもいい。同性と一緒に生きていくこともできる。結婚という選択肢も選ぶことができる。そんな社会にしていくために、今日このアクションに参加しました」

河智さんも「いつか同性婚ができたらいいねなんて、何十年も思っていてもしょうがないんだな」と感じたと話す。

「いつか誰かがやるとか、(同性婚が)できるようになったらいいなとか思っていたら、もう本当に人生が終わってしまうと思いました」

「同じ願いの人は私たちの後ろにもいっぱいいます。今回の訴訟は、私たちも一緒に、自分ごととして考えていきたいと思っています」

二つ並んだ「夫または父」

この日、西川さん、小野さんと一緒に婚姻届を提出した2組のほかに、同性婚が実現しているフランスで婚姻関係を結んだ、男性カップルのJさんとTさんも同席した。

ふたりが手にしていたのは、パリで発行された婚姻証明書。

日本の婚姻届は通常、ふたりの氏名を書く欄の上に「夫となる人」「妻となる人」と書かれている。

だが、JさんとTさんの婚姻証明書は、ふたりの名前の上に、両方とも「Époux ou Père(夫または父)」と印刷されていた。

たったそれだけのことだ。だが、そこには大きな違いがある。

この日提出された3組の婚姻届は、審査の結果、いずれも不受理となった。世田谷区は「同性、女性同士の届け出ということで、認められていないため」と説明しているという。

弁護団は14日から始まる訴訟で、同性カップルの結婚を認めないことは、結婚の自由の侵害であり、憲法14条が掲げる「法の下の平等」に反している、と主張する方針だ。

小野さんは「特別なことは望んでおりません」と語る。

「同性婚という特別なものが欲しいのではなくて、婚姻の平等を望んでおります。ただ皆さんと同じスタートラインに立ちたい。ずっと家族として暮らしてきたので、法律上も家族になりたい。そういう思いでこの日を迎えました」

「すでに色んな家族が存在しています。その家族のことをちゃんと見てほしいなと思うし、その家庭で育つ子どもたちにも目を向けてほしい。私たちは家族なんだよっていうことを、もっと世の中に知ってもらえたらなと思います」

【UPDATE】記事内の表現を一部修正しました。