銭湯は基本、タトゥーOKって知ってた?

    でもスーパー銭湯や日帰り温泉はNG。温度差の理由は…

    日本の公衆浴場ではタトゥーNG。そう思い込んでいる人も多いのでは? でも実は、街の銭湯はタトゥーをした人でも原則的に受け入れているんです。

    一方で、スーパー銭湯や日帰り温泉には入浴禁止のお店が多くあります。それぞれのスタンスの違いや、政府の見解を聞きました。

    「基本的にお断りしていない」

    全国の銭湯2351軒が加盟する「全国浴場組合」は、BuzzFeedの取材に、こんな風に回答しました。

    「当組合に加盟している施設では、基本的に刺青のある方もお断りしていません。サウナやスーパー銭湯では刺青お断りの店もあるため、銭湯もそうだろうと思われがちですが、以前から同様の対応です」

    「ただ、過去のトラブルなどを理由に個別にお断りしているお店もあるかもしれないので、できれば事前に電話で確認していただけると安心だと思います」

    スーパー銭湯などに多い「お断り」

    スーパー銭湯や日帰り温泉など銭湯以外の公衆浴場約130店でつくる「温浴振興協会」は、また事情が異なります。

    これらの施設では、「タトゥーお断り」を掲げる店が少なくありません。

    2013年には、北海道恵庭市の温浴施設で、ニュージーランドのマオリ族の女性がタトゥーを理由に入浴を拒否される問題も起きました。

    協会代表理事の諸星敏博さんはこう語ります。

    「1980〜90年代にかけて、刺青を入れた反社会的勢力の人たちが店にやってきて困ることが多々あり、刺青・タトゥーお断りの自主ルールが広がりました。ですが、暴対法の施行(1992年)以降はそうした事例も減っています」

    「全面解禁とはいかずとも、徐々に解禁すべきだろうというのが、現在の協会のスタンスです。一部店舗ではシールで隠しての入浴を認めるなどの規制緩和もしています」

    「怖い」の声、根強く

    とはいえ、タトゥーに対する負のイメージはなお根深いものがあります。

    関東弁護士会連合会の2014年の調査では、「イレズミを入れた人を実際に見た時に、どのように感じましたか?」(複数選択可)という質問に対して、51.1%が「不快」、36.6%が「怖い」と回答。

    「イレズミやタトゥーと聞いて、何を連想しますか?」(複数選択可)という問いにも、55.7%が「アウトロー」、47.5%が「犯罪」と答えています。

    来年のラグビーW杯、2020年の東京五輪で多数の外国人選手や観光客の来日が予想されるなか、協会内でもルールの緩和を求める声はあるものの、具体的な動きには結びついていないのが実情です。

    諸星さんは「利用者の間には『怖い』という声が根強くあります。営利目的の施設である以上、お客様がどう感じるかは重要。一律の対応はなかなか難しい」と葛藤を明かします。

    政府の見解は…

    温浴施設は法律上、どう対応すべきなのか。公衆浴場法は次のように規定しています。

    4条:営業者は伝染性の疾病にかかつている者と認められる者に対しては、その入浴を拒まなければならない。

    5条1項:入浴者は、公衆浴場において浴そう内を著しく不潔にし、その他公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為をしてはならない。

    昨年2月、この公衆浴場法をめぐって政府が閣議決定した、ある答弁書が注目を集めました。

    「一部に入れ墨がある人の入浴を断っている公衆浴場があります。入れ墨があることのみで公衆衛生に害を及ぼすことはないので、法律上入浴を拒むことはできないと考えますが、政府の見解を伺います」

    そんな民進党(当時)の初鹿明博衆院議員の質問主意書に対し、政府は「入れ墨があることのみをもって、対象者がり患者に該当し、または当該入浴が当該行為に該当すると解することは困難である」と答えたのです。

    厚労省「拒否しても法令違反ではない」

    随分持って回った言い回しですが、つまるところ「刺青・タトゥーがあるという理由だけでは、施設側は入浴を断ってはいけない」ということなのでしょうか。

    厚生労働省の生活衛生課の担当者は、取材に対してこう答えました。

    「基本的にはおっしゃる通りです。刺青があるだけでは、感染症にかかっているとか、浴槽を著しく不潔にするとは言えず、公衆浴場法上は入浴を拒むことはできません

    「ただ、極端な例をあげれば、酔っ払っている客や危険行為に及ぶ客もいます。ですから、条文を反対解釈して『それ以外の場合は拒否してはいけない』という風にも取りづらい」

    「危険な人や泥酔者の入浴を拒否するのは、法律ではなく社会通念上の判断。事業者の方が個々に(タトゥー禁止などの)取り決めを設けていますが、法令違反というわけではありません」

    公衆浴場法は「一般公衆浴場」である銭湯と、スーパー銭湯や健康ランド、日帰り温泉をはじめとする「その他の公衆浴場」を分けていますが、この答弁書は両者を対象にしているそうです。

    「法令違反」指摘の声も

    しかし、こうした政府見解に異を唱える声もあります。

    最高裁判所は1955年、公衆浴場の適正配置に関する距離制限めぐる憲法裁判の判決で、「公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要欠くべからざる、多分に公共性を伴う厚生施設である」と述べています。

    また、1989年の別の裁判の判決でも「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない」としています。

    タトゥーと法規制に詳しい亀石倫子弁護士は、上記の判例を踏まえ、刺青やタトゥーを理由とした入浴拒否が法令違反となる可能性を指摘しています。

    「公衆浴場法の4条と5条、そして公衆浴場が『国民の日常生活に欠くことのできない公共的施設』であることを踏まえると、現実に『公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為』をしていないにもかかわらず、公衆浴場がタトゥーがあるという理由だけで入浴を拒否するのは、公衆浴場法の趣旨に反する、つまり法令違反となる可能性があると考えます」

    BuzzFeed JapanNews