2024年度をめどに、千円札の顔が現在の野口英世から北里柴三郎に変わる。
しかし、ひとつ難題が残されている。それは「北里」をどう発音するか。辞典によって「キタサト」「キタザト」と表記が入り混じっているのだ。
実際のところ、どちらの読み方が正解なのだろうか? 北里大学に聞いてみた。
「近代日本医学の父」
北里は「日本の細菌学の父」「近代日本医学の父」とも称される細菌学者。1853年、現在の熊本県小国町に生まれた。
熊本医学校(現・熊本大医学部)や東京医学校(現・東大医学部)を経てドイツに留学。細菌学の権威ロベルト・コッホに師事し、留学中に破傷風菌の純粋培養に成功、血清療法を発表した。
ペスト菌の発見や北里研究所の設立、慶応大医学部の医学科長就任など、日本の医学の発展に大きな足跡を残した人物だ。
1931年、脳溢血により78歳で死去するが、没後の1962年にも、研究所の創立50周年を記念して北里大学が建学されている。
結果は真っ二つ
さて、本題に入ろう。北里の読みは「キタサト」か「キタザト」か。
朝日新聞や講談社、小学館などの辞書から用語を横断検索できるWEBサービス「コトバンク」を使って「北里柴三郎」を調べてみると、結果が真っ二つに分かれた。
《キタサト派》
・小学館『デジタル大辞泉』
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』
・小学館『精選版 日本国語大辞典』
・三省堂『大辞林 第3版』
・日外アソシエーツ『20世紀日本人名事典』
・日外アソシエーツ『367日誕生日大事典』
《キタザト派》
・『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
・平凡社『百科事典マイペディア』
・平凡社『世界大百科事典 第2版』
・講談社『デジタル版 日本人名大辞典+Plus』
編集可能ではあるが、Wikipediaも4月9日午後6時現在はキタザト派である。
(※上記の検索結果はいずれもひらがなだが、読みやすくするため、記事中ではカタカナに統一した)
北里大学の見解は…
こうなったら「本家」である北里大学に確かめるしかない。
BuzzFeedの取材に対し、広報の担当者は「キタサトです」と即答した。確かに、北里大学も北里研究所も読みは「キタサト」だ。
「もともとは『キタザト』と読んでいたのですが、北里がドイツ留学の際に『Kitasato』と署名したところ、英語圏の人に『キタサト』と呼ばれるようになりました」
これには補足が必要だろう。ドイツ語では基本的に「s」を濁って発音する。
現地では『Kitasato=キタザト』だったものが、英語圏の人に『Kitasato=キタサト』と解釈され、後者の『キタサト』の方が定着していった、ということのようだ。
「その名残で、日本に帰ってきてからも『キタサト』と読むようになった、と言い伝えられております」
迷った時は
こうした理由から、メディアなどから問い合わせを受けた際には「キタサト」読みを推奨しているという。
「キタサト」か「キタザト」で迷ってしまいそうな人は「千円(senen)のsだから濁らない」と覚えておくと役に立つかもしれない。