「破産者マップ」が破産者の名前や住所を公開 弁護士「プライバシーの侵害」

    「家族に隠していたのに知られてしまう」「近所を歩けない」「会社に行けなくなる」…深刻な相談が続々と寄せられている。

    過去に自己破産した人の実名や住所を地図上で閲覧できるようにした「破産者マップ」がネット上に公開され、波紋を呼んでいる。

    サイトの情報は官報のデータを元にしているとみられるが、複数の弁護士が「プライバシー侵害に当たる」として差し止めに向けて動いている。

    Google マップを利用

    サイトはGoogleマップを利用しており、地図上のピンをクリックすると、債務者名や住所、官報公示日、管轄の裁判所、事件番号が閲覧できる仕組み。

    アクセス集中によるダウンと復旧を繰り返していたが、3月17日夜時点では閲覧可能だった。18日14時現在、アクセスはできるものの、地図を読み込めない状態になっている。

    いじめ、自殺の懸念

    SNS上では、自身の居住地域や知人の破産状況を調べて報告する人が続出。法律家の間では、いじめや自殺につながらないか、懸念する声が広がっている。

    破産者マップの運営者を名乗るTwitterアカウントは個人情報保護の問題を指摘され、「官報を公表しているのは私ではなく、私たちの国」などと弁明している。

    インターネット版の官報は直近30日間分に限り、無料で閲覧できる。これとは別に有料の官報情報検索サービスもあり、こちらは1947年以降の官報の情報を検索することができる。

    官報情報の規約は…

    ただ、官報情報検索サービスは利用規約で以下の行為を禁じている。

    「本サービスの記事、図形等のデータを個人的な使用の範囲を超えて利用すること」

    「甲又は第三者の財産、プライバシーを侵害する行為又は侵害するおそれのある行為」

    規約違反の可能性を指摘されると、当該アカウントは「紙起こしの職人さんにお願いしてます」と述べ、ネット版ではなく紙の官報から写していると主張した。

    「ネガティブな感情はない」

    サイトの狙いは何なのか。

    「(破産者に対して)ネガティブな感情はない」

    「本当は警察か交通安全協会から歩行者の交通事故発生のデータをもらって、交通事故の時間帯別ごとにマップ化して、さらに携帯アプリにそのデータいれて、危険な場所にさしかかったら携帯が震えて知らせてくれようなものがつくりたかった」

    運営者を名乗るアカウントはこうツイートしているが、真意は定かではない。

    「近所を歩けない」

    「家族に隠していたのに知られてしまう」

    「近所を歩けない」

    「会社に行けなくなる」

    日本羅針盤法律事務所の望月宣武弁護士のもとには、そうした深刻な相談が次々に寄せられているという。

    望月弁護士は「プライバシーの侵害や個人情報保護法違反にあたり、差し止めを求めるなどの法的措置を検討しています。名誉毀損や業務妨害などに該当する可能性も含め、弁護団で対応を協議しているところです」と語る。

    削除フォーム、悪用の懸念

    運営者は削除要請フォームを設け、生年月日や電話番号、「削除を希望する理由」「破産に至った事情」「破産後の生活」など、より詳細な情報の入力を求めている。

    望月弁護士は「無関係な情報や資料を求めており、削除請求者の情報をまとめて転売されるリスクもあるので、削除請求をすること自体が危険であることを認識してほしいです」と注意を呼びかけている。

    ホスティングサービスは

    同サイトが利用しているとみられるサーバーホスティングサービスは、BuzzFeedの取材に対し、「個別の案件に関しては、お客様の契約情報になるため回答を行なっておりません」としたうえで、次のように回答した。

    「ウェブサイトなどにて望まない情報が送信されている場合は、まずはサイト内に掲示される運営者情報等の連絡先への連絡をお願いしております。しかしながら、運営者の連絡先が分からない、直接の連絡が取れないなどの理由により、弊社へ連絡をいただく場合がございます

    「このような場合、被害や侵害を受けているご本人様からのご依頼であれば、弊社より契約者へ送信防止の申立を意見照会する等、プロバイダ責任制限法ガイドラインの手続に則り必要な対応を行なっております」

    BuzzFeedはサイト運営者に取材を申し込んでいる。回答があり次第、追記する。

    UPDATE

    「破産者マップ」が3月19日未明に閉鎖を宣言したことを受け、サイト名を明記しました。