超人気YouTuberが「スラムダンク」のあのキャラに憧れる理由

    川原の土手から出発した同級生グループが、530万人のチャンネル登録者を獲得するまで

    中学時代の同級生で結成された、7人組の人気YouTuber「フィッシャーズ」。チャンネル登録者数は530万人を超え、CDを出したり、映画に出演したりと活躍の幅を広げている。

    1月12日には、自らプロデュースする屋内型アスレチック「フィッシャーズパーク」を千葉県柏市にオープンした。

    彼らの最大の魅力が、友達同士だからこそ醸し出される、和気あいあいとした空気感だ。個性派揃いの「軍団」を率いるシルクロードに、リーダー論やチーム運営のコツを聞いた。

    下町を再現

    ――フィッシャーズパークには、メンバーが育った下町の光景が再現されていますね。

    まるっきり地元ですね。ブロック塀とか電柱も。この土手もそうです。僕ら年末になると必ず川原に行くんですけど、あの土手の感じ。

    昔、僕たちが秘密基地をつくってたところに、子どもが秘密基地をつくっていて。「ひみつのともだち」とか「合言葉を言え」なんて書いてあったりする。リアル「20世紀少年」みたいな。

    大好きな場所で、あそこに行って初心を思い返すのが楽しいんです。

    原点の土手

    ――フィッシャーズの一番古い動画も、その川原で撮影したものですね。ガラケーで撮った粗い画像がグッときます。

    (動画を見ながら)懐かしいなあ。イマ風に言うところのエモい感じ。音質もひどいですね(笑)

    あ、これが僕です。座ってるのがンダホ、高い声でキャーキャー言ってるのが、ぺけたんですね。で、いまのがダーマの声だ。

    最初は自分らで楽しむように撮ってて、誰にも見せる気なかったんですけど。

    YouTubeでこの動画を見る

    Fischer's-フィッシャーズ- / Via youtu.be

    フィッシャーズの始まり

    思い出を共有したい

    ――こうした思い出の積み重ねの上に、いまのフィッシャーズがあるんでしょうね。

    フィッシャーズパークをつくったのも思い出だし、オープンも思い出になっていくんだろうし。

    みんながアスレチックをやっているうちに、握った跡や擦った跡なんかもできていくでしょう。革製品と同じで、使うほどに味が出てきて。それもまた思い出になるのかなって。

    僕らとみんなで、思い出の共有ができればいいですね。

    辞めたいと思っても…

    ――2010年から活動を続けてきて、「もう辞めたい」とか「解散しよう」と思ったことは全然ないですか。

    「辞めたいなー」と思っても、寝て起きると「やりたいなー」と思うんで(笑) それぐらい自由だし、楽しめてますね。あんまり挫折みたいなことってないです。

    アホなんで、その辺のツライこともすぐ忘れちゃいます。

    マジメなメンバー

    ――UUUMに所属したばかりのころは、メンバー同士で言い合いになることもあったとか。

    楽しいことばっかりやっているように見えて、みんな結構マジメなんです。

    「ここでもうちょっと笑いをとれればよかった」とか、「こういう動きをしたら見栄えがしたんじゃないか」とか意見を出し合って。

    たまにテロップの出し方とかで、言い争うこともありますし。

    ――あくまで建設的な意見交換ということですね。

    そうです。プラスになること以外では、あまりケンカしないですね。

    YouTubeでこの動画を見る

    Fischer's-フィッシャーズ- / Via youtu.be

    国内トップトレンド動画の1位に選ばれた「英語禁止ボウリングがおもしろすぎて全然集中できない件www」

    一人ひとりと食事に

    ――リーダーならではの苦労ってありますか?

    友達であっても、自分自身じゃないから、何を考えているのかまではわからないところもある。だから、食事に誘って話を聞いたりしています。

    そこは多分、一人のYouTuberとは違って、もう一つの仕事なのかなと。メンバーがやりたいことを最大限引き出せるように、強みや弱みを把握するっていうのは結構大変ですね。

    ――食事というのはみんなでワイワイではなく、一人ひとりサシで、ということでしょうか。

    はい。多分、一人ひとりと食事に行く機会があるのは僕だけだと思うんですけど。

    アイツ何考えてるんだろう?

    ――そこで要望や不平不満を聴き取って、改善して。なんか管理職みたいですね。

    そうですね(笑) 僕も結構しゃべるのが好きなんで、暇つぶしでもあるんですけど。時間が空くと、いまアイツ何考えてるんだろう?って食事に誘ったり、家に行ったり。

    自分も思うことがあれば、「最近ちょっと変じゃね?」って投げかけます。「逆に何かある?」って聞くこともあるし。

    そうやって改善していくことが次の目標になるし、ストレス解消になってるところはありますね。

    100冊以上を読破

    ――そういう自然なリーダーシップはどこで身につけたのでしょう。

    子どものころから、文化祭や体育祭、式典なんかのリーダーをやらされて。そういうなかで学んだのかなあ。

    あとリーダーシップ論の本が好きで、大学時代には100冊以上読みましたね。「リーダーとは何か」みたいな本だったり、コーチングの本だったりを読んで勉強してました。

    背負わないように

    ――メンバーがちゃんとついてきてくれているか心配になったり、リーダーとしてプレッシャーを感じることはありますか。

    ついてきてくれてるかな?って心配になってる時点で、多分ついてきてないですよね(笑)

    「ついてこい!」みたいな気持ちはあまりなくて、「とりあえず先頭走ってるから、気ままに来て」みたいな感じです。

    あとはあまり背負わないようにしてます。もちろん、みんなが頼ってくれれば嬉しいですけど。

    ――シルクさんがグイグイ引っ張っていくというよりは、チームで決めていく?

    はい。僕も絶対、間違えるので。何かあれば「俺はこう思うけど、みんなどう思う?」って聞くし、「違う」と言われれば「そうだよね」って思うし。

    「絶対来いよ」は絶対言わない

    ――ダーマさんやザカオさんのように兼業されている方もいますが、どのように活動を調整しているのでしょう。

    ザカオはほかのイベントやダンスをやっているし、ダーマも仕事があるんですけど、無理やり来い!とは絶対言わないようにしてますね。

    どんなに大事なイベントでも、「お前ら絶対来いよ」とは言わない。本当にやりたいことのなかで、スケジュールをこっちに当てられるようなメンタルをつくってほしいんで。

    無理やりやるとフィッシャーズの空気感が崩れちゃう。来たいと思った時に来てもらうのが一番ですね。

    本気でないと、来たとしても何もできない。彼らが全力でやれる環境をつくって、YouTubeにパンチを残せるような機会をうかがいつつ、出演してもらってます。

    YouTubeでこの動画を見る

    Fischer's-フィッシャーズ- / Via youtu.be

    【2019年】新年あけましておめでとうございます恒例鍋パーティー!!

    翔陽の藤真に憧れて

    ――プレイヤーであり、プロデューサーというか。プレイング・マネージャー的な動きをされているのですね。

    漫画の「スラムダンク」に藤真(健司)っていう、監督権キャプテンを務めるキャラクターがいて。小学校の時から憧れでしたね。「スラムダンク」を読んでバスケットを始めたので。

    ――桜木花道でも流川楓でもなく…。

    翔陽の藤真です(笑) 「強引に突っ込め!」っていう感じじゃなくて、「さあ行こう」という感じでチームを鼓舞しているのがいいですよね。

    僕はチームをまとめるのに強引さは必要ないと思っていて。

    フィッシャーズも一人ひとりやりたいことがあるし、新しくやりたいことも見つかるし。昔からやってきたことも、より楽しめるようになってきています。

    その環境さえ整えてしまえば、ずっと一緒にやっていける。みんなのポテンシャルを広げる道を、僕が探せばいいだけかなと。

    「前後」ではなく「横幅」

    ――フィッシャーズパークの内覧会の際、シルクさんが「新しいことをやろうとすると、YouTuberらしくないと言われる」と話していて、驚きました。YouTuberこそ、どんどん新しいことに挑戦するものでは?

    そのはずなんですけどね…。YouTuberが身近な存在でなくちゃいけないっていうのは、僕もわかるんです。

    テレビに出る、歌を出すってなると、どうしても遠く思われちゃう。でも、全然そんなことなくて。

    みんなとの間の「前後」の距離が離れてしまうわけじゃなく、僕らの「幅」が横に広がってるだけ。キャパが広がってるだけなんですよね。

    フィッシャーズの掟

    ――アスレチックをつくることに関しても、疑問の声があったのでしょうか。

    最初は「何を目指しているの?」と言われました。

    でも、人生で何か特定の一個のことを目指すっていうのが、僕的には違うんじゃないかなと。もっと気軽に、色々始めちゃっていいと思うんです。

    ――家族には「家訓」がありますが、フィッシャーズの掟、ルールは?

    ウソをつかないこと。これはずっと昔から言ってます。

    あとは何でもいいから思ったことは言う。やりたいようにやれ。暴れるなら暴れろっていうのがありますね(笑)

    年季の入った友情が誇り

    ――どんな時にメンバー同士の友情を実感しますか。

    人のやりたいことに対して、まず「肯定」から入るところ。実は難しいことだと思うんですけど、ウチのメンバーは自然にそれができるし、褒め合える。

    酔っ払っても人の悪口を言わないし。ぺけたんなんか、酔っ払ったままずーっと褒めてますから。「お前はすげえんだよ」って。

    ンダホにしても、酔っ払うと「お前には負けねえぞ!」とか言うけど、それだって認め合っているからこそ。お互いに高め合ってますね。

    年末年始にみんなで鍋を食べてると、「お前らさあ」みたいな話も出るんだけど、最後は基本、褒めて終わる。2、3年の友情じゃできないんじゃないかなって思うし、誇らしいですね。

    〈フィッシャーズ〉 スポーツマン、ダンサー、歌い手、クリエイター、社会人など個性豊かなパフォーマンス集団。メンバーはシルクロード、マサイ、ンダホ、ぺけたん、ダーマ、ザカオ、モトキの7人。千葉・柏のフィッシャーズパークは、8 月31日までの土日祝日、春・夏休みを中心に営業する。営業時間は10〜20時。