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沖縄の若者が香港デモで気づいた「共通点」とは

沖縄の現状は香港と同じ。そう感じている2人の若者がいる。県民投票で辺野古への移設反対派は70%を越えたが、土砂投入が続くそんな様子を見ているからだ。参院選を前に、感じていることとは何なのか。

沖縄と香港。言葉も国も違うふたつの土地に、同じものを感じる。そう考える、沖縄にルーツを持つ女性と沖縄在住のカメラマンがいる。

いったい、それぞれ何を思っているのか。この国のこれからを決める参院選を前に、話を聞いた。

香港と沖縄の状況が重なって見えた。

「香港のデモと今の沖縄での基地問題って同じことが言えると思うんですよね」

そうBuzzFeed Newsの取材に話すのは、ミカさん(仮名=20歳)。沖縄にルーツを持つ、大学2年生だ。

「香港の逃亡犯条例だって、沖縄の米軍基地だって、生活の一部に支障が出る。市民が意思決定に参加できない香港と、県民投票をやってもなかなか国が変わらない沖縄の状況が重なって見えたんです」

一般市民が国のトップや中国に抗えない香港。「反対」の民意を示した県民投票の結果が「ないがしろにされている」沖縄の状況が重なって見えた、という。

沖縄出身の母親を持つミカさんは、 「自分のルーツが本土と沖縄にあるから、被害者と加害者の側面がある」と感じている。だからこそ、基地問題のことを真剣に考え、そして悩んでいる。

「実家の土地に、親族は誰も行ったことがない。沖縄の中なのに、フェンスを超えたらアメリカ。自分のご先祖の土地なのになって……」

祖母は学徒隊として沖縄戦を生き延びた。実家の土地は米軍に接収され、いまは米海兵隊・普天間基地の中にある。

「でも、おじさんも基地関係の仕事してるから、基地の話したことなくて……。私がどうこうって話をしたらどう思うんだろうって。本土では『沖縄の問題だから口出さないほうがいい』とか『私たちには関係ない』とか言われてるけど、沖縄でも話しにくい状況にあるのかなって思います」

同じ日本なのに疎外感を感じずにはいられない。

「沖縄に思いを馳せたときに、どうしても脳裏をよぎるのは辺野古のことかな」

大学生になってから友人と沖縄に行った。米軍基地や反対運動の現場を見ることで、いままで知らなかったことを知るようになった。

沖縄県は、普天間基地の名護市辺野古への移設に反対をし続けている。

2018年に亡くなった翁長雄志知事、そしてその意思を引き継いだ玉城デニー知事も反対を掲げ、知事選で圧勝した。今年2月の県民投票でも「反対」が72.1%を占めている。

しかし、国側の対応は変わらない。県民投票の翌日も、辺野古には土砂が運び込まれていた。「民主主義ってなんなのか」との疑問が頭をよぎった。

「沖縄の人たちの民意ってこんなに軽いものなのかと思って。他の都道府県だったらきっと、こんなことにならずに選挙の結果を無視したり、自分には関係ないってなったりはしないような気がする」

そんな状態だったからこそ。ミカさんは、テレビで見た香港デモの様子に勇気をもらったという。

「若い人がたくさんいて、同世代としてパワーをもらえたんです。日本はなかなかそうじゃないから」

香港のデモは他人事ではなかった。

同じような気持ちを持っていた人は、ほかにもいる。

「国家権力に民意が無視されている状況は、同じなんだなと思いました」

香港デモを取材したカメラマンの普久原朝日さん(24)は、そう語る。

沖縄県那覇市に暮らし、カメラマンをしている。普段から基地問題に興味を持っており、県民投票の際はサポート側にも回っていた。

だからこそ、結果を受けた政府の対応にはただただ、唖然とした。

「大きな壁を乗り越えたのにも関わらず、こうやって土砂の投入が、工事が続いてる。でも、沖縄は少数派で、多くの国民は無関心で、政府のやることを支えているんですよね」

「この沖縄が抱えている問題を、本土の人たちはどう思っているのか。できることなら、一人ひとりに聞いてみたいですよね」

「日本もやばいよね」香港で感じた危機感。

そんな悩みを抱えるなかで、香港デモの様子を見た。

「香港が抱えている問題ってたいへんなことだ」と、大きく報じられるようになった6月14日の夜にチケットを取り、翌日には香港入りした。

現地では、その勢いに圧倒されたという。

「とにかく人たちが心臓に響くような、地面に響くような声でした。若い人が多いっていうのも驚いた。香港の人はデモに関わるってことが遠いことじゃなくて日常なんだなって」

街でデモの様子を写真に収めていると、ある女性に話しかけられた。

普段は東京の渋谷で働いている香港人だった。デモの様子を聞きつけて仕事を休み、飛んできたという。

少し会話をした後、帰り別れ際に「お互い頑張ろうね」と声をかけた。すると彼女は「頑張ろうね、でも日本もやばいよね」と言い、雑踏の中に消えていった。

普久原さんはこのとき、「状況は一緒なんだなと、ハッとさせられた」という。

黙っていることはある意味、政治的。

「選挙に行かないと将来自分に跳ね返ってくる」と、普久原さんは語る。

「県民投票のときも同じ思いがあったんだけど、自分たちは子供や孫の世代に『投票に行っていた』と言えるか、未来を見据えて考えていかないといけないと思っているんです」

「埋め立てや土砂が投入されていたときに反対していたのか、どう考えていたのかを未来の子供たちに伝えられるようにしないといけないと思う。何も考えていませんでした、なのか、自分なりに考えて伝えていた、なのか……」

香港デモと同じだ。考えて行動すること、それこそが民主主義であると、基地問題を間近で考え続けてきた普久原さんは、強く思っている。

一方、先出のミカさんだって同じことを感じている。

香港デモの様子をみて、「私にもまだまだ何かができるかもしれない」と感じるようになり、友人との間でも少しずつ、政治のことを語るようにしているという。

「黙ってることも政治的だと思う。でもそれは誰かにとって好都合になってしまうかもしれないんですよね」

「私たち本土に住む人たちが、沖縄についてだってちゃんと声を上げていくべきだと思う。もし自分の家の近くに基地ができたら。もし、突然米軍の航空機が落ちてきたらって……。声を上げないにしても、考えていかないといけない」