家の外で故人の茶碗を割るという風習がある。
茶碗を割ることで故人が家に帰らなくなり、しっかりあの世に行けるらしいーー。
「亡くなった祖父へ想いを伝えたい」。そんな想いから描かれた、少女と祖父の漫画がTwitterで話題です。
物語は少女がおじいちゃんの茶碗を割るところから始まります。
大病を患うきょうだいに付き添っていた父母に代わり、面倒を見てくれたのはおじいちゃん。
いつもふたりっきりで生活していた。
それから数年して他界したおじいちゃん。でもその時の私は……。
それからしばらくして茶碗の存在を思い出した。
なかなか割れない茶碗と走馬灯のように蘇るおじいちゃんとの記憶。
今までおじいちゃんへの涙が出なかった理由は……。
おじいちゃん、育ててくれて、愛してくれて、ありがとう。
作者であるよこせ/マンガ家さんはBuzzFeedの取材にこう答えます。
ーーTwitterで大きな反響を呼んでいますが、どのように思われますか。
作品に対して、これほどのリアクションをいただいたことに、とても驚きました。
いただいたご感想を眺めていると、読者の方々がご自身の思い出に重ね合わせていらっしゃるのかなと思います。
この作品では自分の珍しい経験を描いたつもりでしたが、家族のことを思うようや普遍的な気持ちが、読者の方々に共感いただけたのかもしれません。
ーー今回描かれた漫画はご自身の幼少期をモデルにされたものなのでしょうか。また、どのような経緯で描かれたのでしょうか。
今年の1月に亡くなった祖父を含め、私の家族に起きた実際の出来事を作品のモデルとしました。
主人公の少女のストーリーは、私と妹のエピソードをモデルにしています。
私は現在コルクラボ専科のマンガ家コースという、マンガ家向けの講義を受けており、その課題として「相手に響くように伝える」ための作品を描くことになりました。
家族や友人に恋人など、受講生の間でも思いを伝えたい相手は人それぞれでしたが、私は亡くなった祖父に想いを伝えたいと思いました。
ーーもし、もう一度おじいちゃんに会えるならば、どのような言葉をかけたいですか。
作中で主人公の少女がそうだったように、私は祖父の葬儀で涙を流せませんでした。
まず、そのことを謝りたいと初めは考えました。
けれど、前述の講義課題や作品執筆を通じて、祖父の気持ちを考えてみるようになりました。
おこがましいかもしれませんが、祖父からすると、私に謝られることなんて望んでいないのかもしれないと思います。
もし、私が涙を流せなかったことを悔やんでいると知ったら、それを笑って慰めてくれるような、優しい人でした。
ですから、私が祖父にかけたい言葉は、幼少期に私と一緒に過ごしてくれたことへの、伝えても伝えきれない感謝の言葉だと思います。
ーー最後の描写では、玄関にて過去の自分を俯瞰して現在の自分が見ています。
どのようなお気持ちで描かれたのでしょうか。
主人公の少女について、幼少期に祖父と二人きりで過ごしたという思い出は私をモデルにしていますが、亡くなった祖父の茶碗を割った瞬間に涙を流したエピソードは、私の妹のものです。
祖父が亡くなってからも明るく振舞っていた妹が、祖父の茶碗を割った瞬間、堰を切ったように号泣しました。
その瞬間、彼女の中で強い感情が沸き起こった理由を、自分なりに想像してみました。きっと、いろんな思い出が走馬灯のように駆け巡ったのだと思います。
そういった私や妹の実体験を思い返しながら、あの場面を描きました。