中国から世界を攻める~パナソニックの新たな挑戦

    日本の「総合家電メーカー」パナソニックが中国に軸足を移す。中国・北京から世界のパナソニックを牽引する存在を目指すという。

    パナソニックの本丸である家電事業がいよいよ中国に乗り出す。

    4月1日より、「パナソニック 中国・北東アジア社」を中国・北京に設立。パナソニックがもっとも注力する地域「中国、台湾、韓国」を包括する社内カンパニーで、総代表には現在アプライアンス社の社長を務める本間哲朗氏が就任する。

    家電事業の軸足を日本から中国へ

    パナソニックは兼ねてから中国市場を最重要拠点と宣言してきた。昨年開催された100周年基調講演で津賀一宏社長は「中国で勝てないとパナソニックの将来はない」と宣言、中国国内で最も大きな家電博「AWE」にはアプライアンス社の本間社長が毎年訪れ、流暢な中国語で自らプレゼンテーションを行ってきた。

    中国市場はまだポテンシャルがある

    中国の家電市場も明るい話題だけではない。

    パナソニックが中国市場に参入してから40年、テレビ事業の撤退などで2012年以降は厳しい局面が続いていた。

    パナソニックアプライアンス中国では、2017年4月に中国人の呉亮氏をトップに据え、EC(Electronic Commerce:電子商取引。インターネットで物の売買をしたりすること。ネット通販)を強化、国内EC大手のアリババとの業務連携など、大幅な改革を行ったことでV字回復した。2016年、17年は二桁成長、18年も前年比107%を達成した。

    具体的なターゲットとして、若年層を挙げる。

    「5年半くらい前から定期的にきて、ディスカッションを重ねてきた。我々が狙うべきターゲットは、ある程度所得が高くて、支出に対して前向きな人たち。日本と大きく違うのは、その年齢層が若いという事。日本は高額な家電を買うのは50代以上だが、中国では結婚をした20代後半から30代くらいが一番旺盛な支出をする。その人たちが好む家電をデザイン、開発、生産して届けるというサイクルを進めている」

    外資系メーカーとしてどう存在感を出していくか

    中国の家電市場では地場のメーカーに加え、富裕層が好むヨーロッパのメーカーも強い。他社とはどう差別化するのか。

    「中国の富裕層がジャーマンデザイン好きというのは厳然たる流れ。それを理解した上で製品開発を進めている。例えば、ポルシェのデザイナーがデザインした25000元以上(日本円で40万円以上)洗濯機を販売しているが、一定数売れている。中国のメーカーと同じフィールドで戦っても生き残りは厳しいので、やはり外資系としてのナンバーワンが我々の狙い所になる。具体的にいうと、ボッシュ、ジーメンスとの首位争いが目指すところ」

    チャイナスピード、チャイナスタイル、チャイナコストを意識

    一方で、日本企業が見習うべきところもある。

    「これから中国・北東アジア社で実践すべきは、チャイナスピード、チャイナスタイル、チャイナコストの3つ。まずスピード。中国の会社と同じようなスピードが求められる。難しいかもしれないが、やらなければいけない。

    スタイルについても同様。日本はどちらかというと石橋を叩いて渡ることが多く、単年度経営に縛られている。しかし、中国の会社はそうではない。我々もできる限り、そういうチャイナスタイルで物事を決めていきたい」

    「チャイナコストをどれだけ取り込めるかというのも大きな課題。日本全体を見ても大量生産型のビジネスが非常に少なくなっている中で、我々がそのビジネスを続けて行くためには、大量生産型のビジネスが厳然として存在している中国に軸足を移さないとかなり難しい。それが偽らざる心境だ」

    今後のパナソニックを占う最重要拠点

    中国北東アジア社には、グローバルに事業を展開している冷熱空調デバイス事業部というコンプレッサーの事業部が丸ごと移ってくる。加えて、日本で家電事業を展開しているアプラインス社と住宅設備を展開しているエコソリューションズ社の一体化運営を進めていく。

    「これはそんなに簡単に実現するとは思っていない。だからこそ、私が現地に行くのだと思っている。今までとは全く違った意思決定の構造の中で経営判断していくことになる」