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理想の医師ってどんな人? SNSで聞いたら理想と現実かけ離れていた!

「医師の働き方改革に関する検討会」の議論もいよいよ大詰め。これから医師の働き方は大きく変わっていきますが、そもそも患者さんはどんな医師を願っているのか、SNSで聞いてみました。

医師の過重労働を見直す厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」もいよいよ佳境に入っています。

残業の上限時間などについてまだ激しい議論が重ねられていますが、これから医師の働き方に大きな変化があるのは間違いないです。

ところで、一般の人はそれほど関心がなさそうな医師の働き方。

そもそも、患者としては、どんな働き方をしている医師に診てもらいたいと願っているのでしょう。そして、どんな医師が理想なのでしょうか?

SNSでアンケートを取りました。

どんな働き方をするお医者さんに診てもらいたい? こんな問いかけを、TwitterとFacebookでしてみました。

【アンケート:理想の医師って?】医師の働き方改革の議論が佳境を迎え、私たちの生活になくてはならない医師の働き方に注目が集まっています。皆さんはどんな働き方をするお医者さんに診てもらいたいですか? 理想の医師ってどんな人? できるだけ具体的に、リプライかDM、メールでお寄せください。

Naoko Iwanaga / BuzzFeed

「疲れ過ぎていない」「自身の心と体を大切にしていること」

まず、働き方としては、やはり働き過ぎて疲れていない医師を求める声がほとんどでした。

「きちんとおやすみして元気な先生に診ていただきたいです。目の下にクマ(リラックマならいいけど)つくって咳き込みながら診察されても『寄るなあ!』と暴れたくなります」

「適切に休み自身の心と体を大切にしていること」

「元気な先生だと、こちらも話したり聞いたりしようと思うけど、疲れが見えると遠慮してしまう。だから、いい体調で仕事をしていただきたい」

「その医師に困っていることを伝えれば、いろいろさささーっとすすめてくれる人。疲れていたら共感や他者との折衝・調整といったエネルギーがいることは難しいでしょうから、疲れていない、気力・体力ともに余力がある医師が理想です」

「医師だって生身の人間だから、適正な勤務時間・勤務体制が必要」

元看護師の方で、周囲に過労死した医師や看護師がいるという人は、体験に基づくこんな切実な言葉を寄せてくださいました。

「寝食、休憩が十分取れていて、仕事の拘束時間が健康を害しない程度の労働環境。それならばミスも少なくなるはずだし、精神的に余裕を持って治療に当たれるのではないかと思います」

この方は、整形外科病棟に勤務した経験があるそうですが、このような経験談を明かして下さいました。

「整形外科病棟勤務のときの先生方が大変そうで倒れてしまうのではないかと心配でした。朝一で病棟回診、外来、予定手術、術後病棟で書類書き。手術できる病院が他に無い地方の拠点病院で、スキースノボ外傷、交通外傷も診ていたので外来15時過ぎ終了から菓子パン食べて手術入ったりでした」

「夜間にも整形外科対応案件で呼び出しもあったりしていたので、できるだけ先生方の仕事を増やさず、急なコールはできるだけ避けられるように、スタッフ一同で協力していました。ほかの病院に行かれた後で亡くなった先生もいましたので、医師の労働環境の改善はぜひ早急に行ってほしいです」

医師の半数近くは睡眠が足りておらず、日本医師会の勤務医1万人アンケートによれば、「抑うつ中等度以上」が6.5%、「自殺や死を毎週または毎日考える」が3.6%もいる異常な状況です。

もう少しで事故につながる「ヒヤリ・ハット」を経験したことのある医師も76.9%もいます。現在の日本の医師の働き方は、患者の理想から程遠い状況です。

医師の働き過ぎは、患者の安全や医療の質も左右する

当然のことながら、医師の心身の調子は、患者の医療安全や健康にも影響すると気づいている声もたくさん寄せられています。

ある患者の立場の女性は、医師ではなく、かかりつけの歯科医師に対してですが、丁寧な診療が人気であまりにも忙しいので、こんなことを実践しているそうです。

「私がやってるのは先生の肩揉み(笑) 。体勢はきつそうだし、丁寧な分、疲れるだろうなーというのと、少し肩と気分がほぐれて、私も良い治療を受けられるかなあと(だから、最初にやりたいけど、いつも治療後の説明聞きながら)」

そして、私が直前に出した「上手な医療のかかり方」を広め、いのちと医療をまもる という記事を読んで、こんなことを考えたそうです。

「記事を見て考えたのは、やはり最低限以上の体調管理ができている医師に診てほしい。単純に、ちゃんと眠れてるとかね。疲れすぎてイライラ、ノイローゼ状態でみられたくない。ミスや誤診にも繋がるだろうし」

「もし、自分が手術を受けるとかって時に、睡眠不足でふらふらの医師にやってほしくないもの。過剰な残業とかは、法整備してあげてほしいなあ。命を預けるお医者さんの、健康や命も大事にしてほしい」

働き過ぎ、疲れ過ぎないこと、に込める意味も人それぞれです。休息やプライベートの時間が確保できないと、勉強もできないのではないかと心配されています。また、生活者としての実感がなくなることへの不安も。

「働き過ぎて疲れていたら、自分の専門分野の論文をきちんと読んだり、学会に行ったりすることもできないのでは? 知識が昔のままでアップデートされてない医師になんて診られたくないですよ」 

「一般人が経験するような普通の生活ができていなかったら、患者が日常生活でどんなことに困るかも感覚的に理解できないと思う。世間知らずの指示を押し付けられても何様と思うだけだから、仕事だけが人生の医師はイヤ」

「学会や医師の都合で、ちょくちょく臨時休診があって、休診日の違う複数の病院を子供のかかりつけにしています。ちゃんと休んでて勉強もしてらっしゃる感じの医師にかかりたいです」

「休診になってもいいので、学会や研修会に参加する時間を割いてアップデートしていただきたいです。認可された薬を知らない、扱ってないと言われた事があります」

患者の話を聴ける医師

また、理想の医師像は様々ですが、何と言っても多かったのは、患者の声に耳を傾けられること、でした。

「ただ最低でも傾聴してほしいとは思う。短時間でも患者の話をよく聞く。結論はbestである必要はなくbetterでよい。それと医療という分野は必ずしも結論が出るわけでないのでその部分が説明できる医師ですね」

「患者の訴えを聞くところからまず診察は始まると思います」

「診察の際に、患者の方を向いて、話を聞いたり、説明して下さる医師です。
電子カルテが普及してから、患者の顔を全く見ない医師が、増えた気がします」

「早合点せず人の話を聞く」

家族に対する傾聴も求められています。

「患者だけでなく、一緒に生活する家族からも情報を得てほしい」

「家族も第二の患者です。患者の治療や世話が降りかかりますし、心を病むこともあるので、家族の話にも耳を傾けてほしい」

小児科開業医の松永正訓さんは、妻に「理想の医師」を尋ねたところ、こんな答えが返ってきたそうです。

「『話しをよく聴いてくれる先生』だそうです。理想的ではない患者として、『薬だけくれ』と言う患者の例が上がっていましたが、家内によれば、薬だけ出してお終いという医師もいるそうです。そういう医師に当たると大変不愉快とのことです」

死生学や生命倫理を専門とする鳥取大学准教授の安藤泰至さんは、職業柄、また難病を患うご家族がいることからも、医師との付き合いが多い方です。やはり医師にはこんなことを求めます。

「内科か外科かとか、分野によってぜんぜん違ってくるように思います。私自身は緩和ケア医とか神経難病の神経内科医とかの知り合いが多いので、終末期患者や在宅の高齢者、難病患者のような慢性疾患患者を対象にする医師を思い浮かべます」

「すると、その人の『生活』を見る視線をもっている医師、患者や家族が困っていることをきちんと聴き取った上で、その生活を少しでも支えるために、医学的に、医師としてどのようなことが可能なのかを一緒になって考えてくれるような医師が理想です」

「頼りになるけれど、ある意味で一緒に悩んでくれる医師というか」

ただ、この患者の話をよく聴く医師、という願いには、医師からの「したくてもできない」という切実な声も寄せられました。

「食事も休憩も取れずに1日80人、90人診る外来で、一人の患者の話をじっくり聞くということは、待っている患者をさらに長く待たせるということでもあります。また、患者の話を30分聞こうが3分診療だろうが、病院の収入は同じです。医師の時間は無限にあるわけではないのを理解してほしいです」

やはり求める専門家としての仕事 連携する力

あとはやはりプロとしての仕事や積極的にチーム医療を推進する姿勢を期待する声が多いようです。

「治療、診断において自身のできることを自身が把握できていること。判断、治療、処置ができない時は、できる人に繋ぐコミュニケーション力があること」

「原因疾患が他科領域だった場合、適切にコンサルトして欲しい」

「医療は広い領域です。従って医師以外の他職種の専門性、並びに他の科と自分の科の関係性を理解し尊重していただける方が有難いです」

「看護師や事務の方が多くて、医師は医師の仕事をしている病院がいいなと思います」

自分のできる、なすべき範囲を見極めることができるのは、プロの証ですね。そして、患者は医師が全て一人でこなすことを求めているわけではありません。

今回の医師の働き方改革でも、「チーム医療の推進」や「タスクシフト・タスクシェア(医師の業務の移管、分かち合い)」が求められていますが、他の診療科や他の専門職に適切につなげられる能力も求められています。

他にはこんな声も届きました。

「利益にとらわれず病状や治療のメリットとデメリットを丁寧に説明して下さる方」

「扱っていない療法を頭ごなしに批判しないで」

「もっと女性医師を増やしてください。患者の半分は女性です」

こうしてみると、疲れ過ぎず日常生活も充実し、患者の話に耳を傾け、専門性を磨き、他の診療科や他の医療職と連携して適切な治療を提案できるという極めて真っ当な医師像を理想としていることがわかりますね。

その患者の理想を実現するためには、まもなくまとめられる医師の働き方改革に、私たち医療を受ける患者側も協力しないといけません。

次回の記事では、医師・医療者に聞いた「理想の患者」をお伝えします。