外国人実習生の死者数、4年間で15人少なく 法務省の資料に差異

    「なぜ数字が違うのかは、調査中」という。

    法務省が野党に公開した外国人技能実習生の死者数に関する資料が、厚労省が委託事業でまとめた調査資料よりも少ない数値になっていることが、BuzzFeed Newsの調べでわかった。

    2010年からの8年間で174人にのぼっているとしていた。ただ、厚労省の委託で日本国際研修協力機構(JITCO)がまとめた資料との差異があり、比較可能な4年間でも15人少なくなっていた。

    死者数については12月12日、法務省から資料を入手した立憲民主党の有田芳生参議院議員がTwitterで公開。BuzzFeed Newsも同様のものを入手した。

    JITCOの出している白書などと、法務省の数字(年度ごと)を比較すると以下のようになる。

    • 2013年度 JITCO:27人 法務省:18人
    • 2014年度 JITCO:34人 法務省:32人
    • 2015年度 JITCO:30人 法務省:28人
    • 2016年度 JITCO:28人 法務省:26人
    • 2017年度 JITCO:30人 法務省:7人(11月まで)


    年度ごとに比較できる2013〜16年度の4年間では、JITCOの資料では119人だが、法務省では104人で、15人少なくなっている。

    JITCOの調査は厚生労働省の委託で実施されていたもの。野党側は、12月13日に実施されたヒアリングでこの差異について指摘したが、法務省から明確な回答はなかったという。

    法務省の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「実習生が死亡した場合は、監理団体や企業から各地の入国管理局に報告するよう求めている。野党に示したのはそれを基にしたものだ」としたうえで、「なぜJITCOの数字と違うのかは、調査中」と答えた。

    法務省のデータ、過去にも…

    法務省をめぐっては、衆議院と参議院の法務委員会の附帯決議に基づいて実施された、失踪経験のある実習生2870人へのヒアリングでも、そのずさんさが指摘されていた。

    同省入国管理局は当初、これに基づき失踪動機で最も多かったのは「より高い賃金を求めて」で87%だったなどと説明していたが、本当の最多は「低賃金」で67%を占めていたことが判明。

    調査のずさんさが浮き彫りとなり、そもそも非公開だった聴取票は野党側の要望を受ける形で、「閲覧」が認められることになった。

    ただ、同省側は「プライバシー」「今後の調査への支障」などを理由に「閲覧」だけを認め、コピーを禁止。野党議員が手分けして2870人分全てを「書き写す」作業に追われた。

    死亡事案の実態は

    法務省の資料によると、国籍は▽中国98▽ベトナム46▽インドネシア12▽フィリピン6▽タイ4▽ミャンマー3▽モンゴル3▽ラオス2の計174人。

    うち20代が118人で、溺死が25人、自殺が12人、凍死が1人。以下のように、死亡原因が細かく記されているものもある。

    • 東日本大震災で津波に巻き込まれて溺死した(中国28歳、24歳男性2人、牡蠣養殖)
    • ロープが絡まり漁具とともに海中に落下、そのまま行方不明になってしまった(インドネシア19歳男性、漁船農業)
    • 水道管の工事中に生き埋めになった日本人従業員を助けようとして巻き込まれた(フィリピン28歳男性、配管)
    • パソコン用LANケーブルで首を吊って自殺していた(フィリピン33歳男性、夫人子供服製造)


    溶接中の爆発(中国22歳男性、溶接)や鉄骨が崩れて下敷きになった(中国19歳男性、溶接)、鍛造用プレス機に挟まれた(ベトナム22歳男性、鍛造)など、作業中の事故に巻き込まれて亡くなっているケースも多く散見される。

    また、凍死していたのは耕種農業に従事していた中国人の28歳男性だが、その詳細は記されていない。

    外国人実習生の労災死比率は、10万人当たり年平均で3.64人で、日本の雇用者全体の労災死の比率は1.73人(2014〜17年平均)を大きく上回っていることが厚労省のまとめで明らかになっている。

    政府・与党は12月8日に改正入管法を成立させたが、この審議過程で実習生制度が抱える問題点が浮き彫りとなったと言える。

    なお、JITCOがまとめた死亡者数のデータは2008年度、13〜15年度分がサイト上にアップされていたが、12月11日に削除されていたことがBuzzFeed Newsの取材で明らかになっている。

    JITCOは、入管法改正に合わせて削除した意図はない、としている。