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焼け野原になった広島を見つめるカップル 70年越しに写真の真相が明らかに

1946年8月6日撮影とされていたが、詳細はわかっていなかったこの写真。戦時中の広島を舞台にした映画『この世界の片隅に』(片渕須直監督)の主人公夫婦になぞらえて、「リアルすずさん・周作さんでは」というような声も上がっていたが、「福屋百貨店」から撮影されたものであることが判明した。

広島の焼け野原を見つめる、若いカップルーー。昨年8月6日。Twitter上で、そんな「カラー写真」が話題を呼んだ。

撮影日は原爆投下から1年後、1946年8月6日とされていたが、詳細はわかっていなかった。

この写真が福屋百貨店の屋上で、共同通信社の企画として同年「8月5日」までに撮影されたものであることが、このたび判明した。

東京大学 渡邉英徳研究室 / Via Twitter: @hwtnv
東京大学 渡邉英徳研究室 / Via Twitter: @hwtnv
東京大学 渡邉英徳研究室 / Via Twitter: @hwtnv


そもそもこの写真は、東京大学の渡邉英徳教授(@hwtnv)が取り組んでいるプロジェクトの一環でカラー化されたもの。

人工知能を使った自動色付け技術で蘇った、かつての景色だ。アメリカ公文書に存在したものをカラー化したものだという。

「72年前の今日。1946年8月6日,広島原爆投下から1年後,広島市内に残る焼け野原を若いカップルが見つめる」

この渡邊教授のツイートは1万8千件以上リツイートされ、話題に。「映画のよう」「こうやって復興していったのか」などというコメントが集まった。

中には、戦時中の広島を舞台にした映画『この世界の片隅に』(片渕須直監督)の主人公夫婦になぞらえて、「リアルすずさん・周作さんでは」というような声も上がっていた。

撮影された場所は?

詳細がわからなかったこのカップルの写真について、正確な情報を渡邊教授に寄せたのが、共同通信社ビジュアル報道局の沼田清さんだった。

その情報から、写真は共同通信社のものであることがわかったという。「被爆1周年・終戦1周年」に向けた企画取材の一環で、全国各地で撮影されたうちの1枚だったのだ。

撮影場所は、福屋百貨店(現・福屋八丁堀本店。広島市中区胡町)。1938年(昭和13年)に完成した8階建ての店舗だ。

原爆で建物の内部は破壊されたが外郭は残り、戦後の復旧作業を経て、現在も店舗として使われている「被爆建築物」。「白亜の殿堂」といわれた戦前の姿は、『この世界の片隅に』にも登場する。

そこから南東方向を俯瞰したもので、撮影日は配信された「1946年8月5日」より以前という。

さらに、カップルの頭上には新築の旅館が写っているが、この建物も改築され、いまも飲食店として残っているそうだ。

さらに、その1年後も…

実は、同じ場所から撮影したさらに1年後の写真も存在する。

アメリカの写真雑誌「LIFE」が撮影した写真で、撮影日が1947年8月とされている。これも、渡邊教授がカラー化をしているのだ。

その一年後,1947年8月に撮影された写真を「LIFE Archives」で見つけました。写真家はCarl Mydans。1年でここまで復興するんですね。ニューラルネットワークによる自動色付け+手動補正。

原子野となった市街地には、真新しい建物が一気に増えていることがわかる。

たった1年で、大きく変わった広島。復興に向けて大きく進んでいく人々の息遣いが聞こえてくるようだ。

屋上で語り合っていたカップルは、この写真のどこで、どのような暮らしを営んでいたのだろうか。そして一体、どんな未来を夢見ていたのだろうか。

一連の写真には、こんなリプライも寄せられていた。「頑張ったんだ、ヒロシマ」

UPDATE

文中一部表記を修正しました。