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玉城デニー氏を批判する「沖縄知事選サイト」が複数出現 管理者は同一人物?

一見、公的サイトのようにも見える「沖縄県知事選挙2018」。弁護士は名誉毀損や公選法違反の可能性を指摘している。

翁長雄志知事の死去に伴う沖縄知事選が9月13日に告示される。翁長氏の後継路線を打ち出している玉城デニー氏と、自民党や公明党が支援する佐喜真淳氏の、事実上の一騎打ちとなる見通しだ。

選挙戦を前に、「沖縄県知事選挙2018」というサイトが現れた。この選挙に関する公的サイトのような名称だ。同じ名前のTwitterアカウントもあり、このサイトにアップされた動画などを拡散している。デザインや内容が似た別のサイトも登場している。

ただ、その内容は、玉城デニー氏や翁長県政を支えた「オール沖縄」への批判が中心で、中立的ではない。また、サイト管理者の実態は確認できない。

選挙前に現れたサイトは2つ。8月22日にドメイン登録された「沖縄県知事選挙2018」と、25日に登録された「沖縄基地問題.com」だ。

サイトのデザインはほとんど同じ。前者は「沖縄、最後の選択」、後者は「これが真実!沖縄の基地問題」と銘打たれている。

Twitterアカウントもある。前者は「沖縄県知事選の候補者・日程&状況&情勢&スクープ情報を速報でお伝えします」などとうたう「沖縄県知事選挙2018 候補者・日程 知事選速報サイト」。

後者は「沖縄基地問題の歴史から現状までをわかりやすく解説」などとする「沖縄基地問題2018 辺野古・普天間 沖縄問題サイト」だ。

サイトにはYoutube動画も掲載され、二つのサイトで計42。8月22日から断続的にアップロードされている。Twitterで拡散している動画には、3000以上リツイートされ、再生が5万回を超えているものもある。

玉城氏を「危険人物」「違法を容認」などと批判

記事のほとんどは、翁長氏や玉城氏に対して批判的だ。玉城氏を「危険人物」「違法を容認」「公選法違反」などと指摘するものもある。

翁長、玉城両氏を支援する「オール沖縄」や辺野古基地の反対運動関係者、さらには沖縄地元2紙を批判するものも少なくない。

翁長氏の生前の決定を引き継ぎ、名護市辺野古沖の埋め立て承認を撤回した謝花喜一郎副知事に対しては、「玉城デニー氏の背後に蠢く反日左翼勢力と結託」しているとして「万死に値する」と強く批判している。

さらに「バカ丸出しの沖サヨ」「みんなテロリストの仲間」などと、一般的なニュースサイトでは用いない侮蔑的な言葉が並ぶ。

各立候補予定者の情報を中立な立場から紹介するサイトとは言えず、玉城陣営をターゲットにしたネガティブキャンペーンサイトという方が近い。

名誉毀損や公選法違反の可能性も

インターネット上の誹謗中傷などに詳しい深澤諭史弁護士は、BuzzFeed Newsの取材に対し、サイトについて「内容が虚偽であれば、刑法の名誉毀損罪や公職選挙法違反に当たる可能性がある」と指摘する。

名誉毀損は、原則として社会的評価を低下させるような表現であるという証明で足りる。深澤弁護士は「その点については、このサイト管理者が処罰の対象になる可能性が十分あると思います」と語る。

「ただ、選挙のように社会の正当な関心ごとであり、かつ真実ないし相当な根拠があるのであれば、例外に当たる可能性もある。大切なのは真実である根拠、証拠を表現者自身が証明しないといけない、ということです」

このサイト管理者が名誉毀損罪に問われた場合、記述した内容が真実であることを証明する責任は、管理者本人にあるということだ。

また、公選法では、特定候補者に対する「落選運動」(ネガティブキャンペーン)として、虚偽の内容や事実をゆがめて公表することを禁止している(第235条2項)。

「このサイトにあるような『危険人物』などという言葉は、『評価』に当たる可能性もあるため、直ちに名誉毀損になるとまでは断言できません」

「『ラーメンがまずい』というのと似ています。うまいかまずいかは、それぞれの評価ですから。一方、『ラーメンが腐っているからまずい』と言った場合、ラーメンが実際には腐っておらず虚偽であれば、違法となります」

公選法は告示日前に投票を呼びかける事前運動を禁止しているが、「落選運動」はその対象にはあたらないため、告示日前にサイトで情報発信をしている点については、問題ないという。

サイトの管理者は?

Whois照会をかけると、ドメイン登録者(管理者)は、男性とみられる同じ姓名の人物だった。同一人物かどうかの確認は、この段階で取れない。ただ、両方のドメインで、同じ電話番号が登録されていた。

前者の登録住所は東京都荒川区のマンションの4階、後者は東京都港区にあるビルの5階だった。

BuzzFeed Newsは現地を訪ねたが、いずれも実態が確認できない住所だった。

荒川区の住所は、JR田端駅から徒歩10分ほどの住宅街。だが、そこにあるのは3階建てのマンションだった。

過去の電話帳のデータには、2007年ごろにWhois情報と同姓同名の人物が住んでいたことが記されている。

不動産登記簿や付近の住民の話を総合すると、この場所には以前、4階建てのマンションがあった。しかし取り壊され、2010年に今の3階建てマンションが建った。この際に住民は全員入れ替わったといい、この人物が2007年時点でこの住所に住んでいたとしても、今はいないという。

港区の住所は、JR田町駅近くにある雑居ビルだった。

ビル1階はフェンスで囲われて封鎖され、テナントの歯科病院が5月に移転したことを知らせる紙が貼ってあった。5階部分は賃貸住宅になっているが、ポストはすべてテープで封をされ、人が住んでいる様子は感じられなかった。

二つのドメインに共通して登録されている電話番号にも問い合わせた。

女性が出て、管理者として公開されている姓名の人物を「知らない」と語った。この電話番号は企業や団体のものかと尋ねたが、女性は「うちは民家です」と答えた。

登録されている住所や電話番号は、少なくとも現段階において、サイト管理者と繋がるものではなかった。

BuzzFeed Newsは、登録されているメールアドレスに取材を申し込んでいる。


BuzzFeed Newsは沖縄県知事選に当たり、政治家の発言やメディアの報道、ネット情報などを検証する「ファクトチェック」を実施します。

NPO団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」が開催する「FactCheck沖縄県知事選2018プロジェクト」にも参加する予定です。

メール(japan-report@buzzfeed.com)やTwitterのDMなどで、ぜひ情報をお寄せください。

UPDATE

当該サイトは9月12日午後2時現在、すでに閲覧できなくなっている。