いまだに飼い主が見つからない「被災ペット」がいることを知っていますか?

    熊本地震から2年。いまだに帰ることのできていない、犬や猫がいる。

    もし災害が起きたとき、ペットはどうなってしまうのか。

    地震の混乱のさなか、飼い主とはぐれたり、パニックになって逃げ出してしまったりするペットは少なくない。

    2年前の熊本地震では、約2500頭が「被災ペット」に。飼い主が見つかっていない犬が11頭、いまも県に保護されたままになっている。

    飼い主とはぐれたまま…

    「地震で行方不明になりました」「地震後、自宅からいなくなりました」

    熊本市内の動物病院には、いまだに迷子犬・猫を探すポスターがずらりと並んでいる。

    環境省が2017年3月にまとめた報告によると、震災後に熊本県と熊本市が保護収容した「被災ペット」の数は、犬1094頭、猫1405頭にのぼる。

    このうち、元の飼い主が見つかり返還できた頭数は犬400頭。猫に至ってはたった11頭にすぎなかった。

    迷子札やマイクロチップなど、所有者がわかるようなものを装着していたのが犬368頭、猫13頭にすぎなかったことも、こうした現状を招いているとみられる。

    震災後、ペットたちに起きたこと

    県健康危機管理課によると、被災ペットの定義は震災後から同年10月末までに保護したものだ。

    「被災ペット」には地域の限定や通常の収容活動との違いを設けておらず、野犬や野良猫も含まれている可能性もあることには留意が必要だ。

    ただ、震災後は保健所への「飼い犬猫がいなくなった、迷い犬猫を保護したという問い合わせ等はかなり多かった」(県動物愛護担当者)という。

    混乱のさなかにパニックになって逃げ出してしまったり、飼い主が避難をする際に放してしまったりしたケースが考えられるが、それだけではない。

    県の担当者は、長引く避難生活や仮設住宅への入居などを理由に、捨てられてしまったペットも少なくないとみる。

    飼い主が見つからなかった「被災ペット」はその後、愛護団体や譲渡会を通じて引き取り手を探してきた。県では犬495頭、猫773頭の譲渡先が見つかった。

    それでも、全てではない。県の動物愛護センターには、いまだ「被災犬」11匹が残されたままになっている。多くは大型犬など、譲渡が難しい犬だという。

    避難は同行が原則

    東日本大震災の被災地でも同様に、飼い主とペットがはぐれてしまったケースが相次いだ。

    これを受け、環境省は2013年、震災時にペットともに避難する「同行避難」を推進する「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を策定した。

    災害が起きた時、ペットもともに避難先に連れていくことを原則とする呼びかけだ。

    熊本地震ではこうした「同行避難」の認知はある程度されていたものの、避難所で飼い主とペットが同じスペースにいられる「同伴避難」ができず、壊れた家に戻らざるを得なかったり、車中泊を選んだりする人が多かった。

    さらにこの情報がSNSで拡散し、そもそも「同行避難」すらできないという誤解が広がってしまったという。

    飼い主にできること

    そもそも、災害時のペットの避難は「自助」が基本だ。飼い主には普段から、イラストに描かれているような災害時の備えが求められる。

    まず、1週間程度の食糧や水、医療品などの物資を揃えておくこと。また、避難先で落ち着いて行動できるよう、普段から吠えなかったり、ケージにきちんと入ったりさせるよう、しつけることが大切だ。

    動物の種類に応じて、飼い主がわかる迷子札や鑑札、マイクロチップなどを普段からつけておくことも重要だ。はぐれてしまっても、再び戻れる確率が高くなる。

    また、猫の場合は、災害後に放浪し、一気に繁殖するケースもみられる。「家猫だから」と安心せず、避妊や去勢をしっかりとすることも必要という。

    環境省動物愛護管理室の担当者は「災害が起こった際は必ず連れて逃げてください。そのとき、どう避難したらよいのかなど、もしものことを普段から考えておく必要がある」と強調する。


    BuzzFeed Newsでは【熊本地震で、1000匹の犬猫を救った動物病院がある。院長が伝えたいこと】という記事も掲載しています。