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まとめサイトが拡散した「ジャニーさん死亡説」 憶測の広がり、事務所の容体発表まで

ジャニーズ事務所がジャニー喜多川さんがくも膜下出血で入院したと発表するまで、ネットで広がっていた憶測。BuzzFeed Newsが調べたところ、「ジャニー喜多川」「死去」を見出しにとった記事は6月18日から22日までで、少なくとも122個存在している。

ジャニーズ事務所は7月1日、同社社長のジャニー喜多川氏(87)が6月18日、くも膜下出血で入院したと発表した。

解離性脳動脈瘤の破裂によるもので、現在も入院治療を続けているという。一連の報道が出て以降、ジャニーズ事務所から公式見解が出たのは初めて。

喜多川氏の容体をめぐっては、「死亡説」がネット上に拡散していた。100個を超えるまとめサイトなどがそうした情報を伝えていたのだ。いったい、何が起きていたのか。

ことの発端は18日。Twitter上で「ジャニーさんが緊急搬送された」という情報が相次いでツイートされた。

メディア関係者や週刊誌から複数の発信があったということもあり、この情報は一気に拡散。一時Twitterの世界トレンド1位に「ジャニーさん」が入るほどに広がっていた。

さらに翌19日には東京スポーツが「ジャニー喜多川社長が自宅で倒れ都内病院に救急搬送 関係者も入院認める」と伝え、一部週刊誌などもこれに続いた。

そうした中、ネットに広がったのが「ジャニーさん死去」という情報だった。

起点は「Buzz Plus News」

情報の拡散起点になったのは、「Buzz Plus News」(バズプラスニュース)というサイトだった。

同サイトが6月22日に配信した記事の見出しは【訃報】ジャニー喜多川社長が死去 / ジャニーズ事務所が近日発表へというものだ。

そのソースは掲載されていないが、「亡くなったことがわかった」と断定調で記している。

ジャニーズ事務所の代表取締役社長であり、芸能プロモーターでもあるジャニー喜多川社長(87歳)が亡くなったことがわかった。ジャニー喜多川社長は以前から体調が芳しくなく、健康状態が心配されていた。

また、「芸能記者」のコメントとして、こうも記されている。

「亡くなったことを報じないマスコミに対して「忖度している」とか「箝口令が出ている」とか言われていますが、それだけでなく基本的な理由があって報じられていません。ジャニーズ事務所や親族がジャニー喜多川氏の死去を発表しない限り、大手メディアは訃報として報じられないのです。たとえマスコミ関係者が亡くなった事実を知っていたとしても報じられないのです」

そのうえで「近日、ジャニー喜多川氏の死去に関する情報をジャニーズ事務所が発表をする予定だと言われている」と、伝聞情報であることを記していた。

そもそも、この「Buzz Plus News」(バズプラスニュース)はこれまでも、「韓国で一度客に出した料理の再利用が合法になった」というミスリード記事や、BTSがユニセフに「原爆看板を持ち込み」という誤情報を掲載してきた。

「世界の情報を集め、気になるニュースをお届けするウェブメディア」などと記しているが、その実態は明らかではない。

当初はニュースアプリ「Gunosy」やニコニコニュースへの配信もされていたが、先出のBTSの記事などの件を受け、配信が停止している。

まとめサイトに転載→拡散

こうしたあいまいな情報であるにも関わらず、「ジャニーさんの訃報」はネット上を駆け巡った。

一般紙やテレビなどは喜多川氏に関する情報を発信してはいなかったという状況もあり、様々な憶測がネット上に広がりやすかったとみられる。

計測ツール「BuzzSumo」で調べると、記事はTwitterとFacebookで5千シェアされている。

さらに、この「訃報」は5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)にも転載され、複数のまとめサイトを経由してさらに拡散。

中でも「2ちゃんねるニュース速報+ナビ」には2つのスレッドが転載され、ともに1万以上シェアされている。これは、過去1年間でネット上にアップされた「ジャニー喜多川」が見出しに入る記事でそれぞれ1番目、2番目の拡散だ。

さらに「Johnny’s Jocee」というまとめサイトもこの「訃報」を「ネットメディアが伝え」た「正式報道」として転載。

10の記事で計1万2千以上シェアされており、サイト内に掲載されているview数は計70万以上となっている。このサイトは和歌山にある企業が運営しているとされている。

このほか、「ツイッター速報」「Share News Japan」などのまとめサイトも情報を引用しており、いずれも数千シェアされている。

ネット上には100以上の記事が

BuzzFeed Newsが「Buzz Sumo」で調べたところ、「ジャニー喜多川」「死去」を見出しにとった記事は6月18日から22日までで、少なくとも122個存在している。

「Buzz Plus News」などに掲載された「訃報」を多くのまとめサイトが引用し、さらにそれが孫引きされてSNS上で拡散し、さらなる憶測を呼ぶ、といった状況が明らかになった。

拡散は翌23日、ITジャーナリストの篠原修司氏によるジャニー喜多川さん死去の不確定情報、匿名ブログがネットに広める。惑わされないよう注意という記事の掲載で収束したものの、公式発表がないこともあり、憶測はくすぶったままになっていた。

そして、一連の事態から1週間ほど経った7月1日。ジャニーズ事務所ははじめて、喜多川氏の容体を発表した。各メディアも、一斉にその内容を報じた。

朝日新聞によると、同事務所は「今もジャニーは必死に頑張っておりますので、治療に専念することを最優先とさせていただきたく、ご理解ください」としているという。

また、同日に開かれた嵐の会見では、松本潤さんがこう語った。

「19日に、5人でジャニーさんのもとにお見舞いに行きました。その後も、それぞれ時間がある時に、なるべくジャニーさんの病室に通っているような現状です。1日もはやく元気に回復してくれることを祈っています。静かに温かく見守っていただければ」

一方、ネット上に残る多くの「訃報」は削除や訂正もされずに掲載されたままになっている。いずれも拡散しないよう、注意が必要だ。