なぜ、嫌韓サイトは放置されていたのか。「保守速報」から広告撤退、動きはほかのまとめサイトにも

    仲介会社の撤退は少なくとも5社におよんでいる。

    差別的な記事などが問題視され、一切の広告がなくなったまとめサイト「保守速報」。

    サイトから撤退した広告仲介業者が、少なくとも5社に及んでいたことが、BuzzFeed Newsの取材でわかった。

    なかには自主的な撤退をした企業もあり、同様の動きはそのほかのまとめサイトにも広がっている。

    そもそも保守速報とは…

    「保守速報」は「政治、東亜ニュースを中心にまとめているサイト」(公式Twitterより)。Twitterフォロワーが6万人近くいるなど拡散力が高い。中国や韓国に関する差別的内容や誤った情報などを配信し、たびたび問題視されてきた。

    6月28日には、同サイト管理人を在日朝鮮人の女性が訴えた裁判で、大阪高裁がその記事内容の差別性を認め、サイトの管理人に200万円の支払いを命じる地裁判決を支持した。

    判決では、差別や誹謗中傷が「人種差別および女性差別に当たる」とし、「社会通念上許される限度を超えている」と指摘。掲示板の書き込みを「まとめる」という行為が「独立した別個の表現行為」とも認め、男性管理人の責任を厳しく問うた。

    敗訴した保守速報は最高裁に上告している。

    エプソンをきっかけに広がった撤退

    この「保守速報」をめぐっては、6月上旬、その収入源である広告売り上げを断とうとするユーザーによる広告掲載企業への「通報」が広がっていた。

    これに対し、エプソンなどの大企業が広告を撤退。さらにその動きは、アフィリエイトサービスや広告仲介会社などにも広がり、すでにサイトにバナー広告がなくなっている。

    いったい、どれほどの企業が撤退や連携解除の判断をしたのか。

    BuzzFeed Newsは、ユーザーが通報したことを明らかにしたり、掲載が認められたりしたアフィリエイトサービスや広告配信ネットワーク(アドネットワーク)、広告配信ツール(SSP)提供会社計10社に取材を申し込んだ。

    自主的に撤退した会社も

    このうち、保守速報への出稿を取りやめたと明らかにしたのは以下の5企業だ。

    • A8.net(国内最大手のアフィリエイトサービス、ユーザーからの通報を受けた措置)
    • Zucks(アドネットワーク、同サイトに関するニュースをもとに「媒体精査」を行い、自主的に打ち切りを判断)
    • fluct(SSP、ユーザーからの通報を受けた措置)
    • nend(アドネットワーク、ユーザーからの通報を受けた措置)
    • マイクロアド(SSP、広告代理店より問い合わせがあり、社内で調査検討し、配信を停止)


    「Zucks」と「fluct」、「nend」はいずれも、利用規約などに「人種差別」などを禁止する文言があり、そこへの違反を根拠に撤退の判断をしたという。

    一方、「A8.net」や「マイクロアド」は撤退の詳しい理由を明かさなかったが、いずれも利用規約などには、差別を禁止する文言や、広告主のブランド毀損を回避する旨の文言があった。

    一方、「DMMアフィリエイト」は連携を否定、アドネットワーク「iMobile」はその連携については「特定の事由についてはお答えできかねます」として、「利用規約に準じて適宜対応しております。」とだけ返答した。

    そのほか、返答が7月9日までにない会社は3社あった。

    不明瞭だった企業の責任

    ネット広告は、その掲載までの流れが複雑だ。

    多くの企業やサービスが介在するため、エプソンのように広告主が表示されてるサイトを把握できていなかったり、仲介業者自身も把握できていなかったりするケースもあるという。

    実際、規約違反のサイトにずっと広告が掲載され続けていたのか、「A8.net」と「nend」を運営するファンコミュニケーションズの広報担当者に聞くと、こうも語った。

    「配信先が膨大になっているので、チェックしきれていないのが実情です。システム開発などでチェック体制を強化し、違法や規約違反のサイトに掲載されないようにしていきたい」

    こうした仕組みからか、ヘイトや著作権保護に問題のあるサイトに広告を掲載することへの批判はあったが、対応する企業は少なかった。

    関係する企業の責任が不明確になっているなかで、悪質なサイトへの広告掲載が放任されていた、とも言えるだろう。

    こうした中、ユーザーによる通報が代理店や、各仲介会社の自主的な判断へとつながったのは、画期的だ。

    支援の動きも

    同様の動きは、ほかのまとめサイトにも広がりを見せている。

    「保守系ニュースまとめ配信サイト」と自称する「アノニマスポスト」でも広告がなくなった。同サイトは、別のドメインでの記事更新を始めている。

    広告がなくなった「保守速報」は7月1日、その「存続が危うい」とする記事を公表した。一方、現役地方議員からグッズ販売(しおり、缶バッジ、ステッカーなど)で運営を支えようという動きも出ている。


    BuzzFeed Newsでは、悪質な「まとめサイト」をめぐる問題の取材を続けています。情報提供はこちら(japan-report@buzzfeed.com)まで。

    UPDATE

    一部表現を修正いたしました。