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なぜ、10連休は「時代遅れ」なのか

ホテルや高速道路、新幹線の大混雑だけではない。介護や医療はどうなるのか。

天皇陛下の退位に伴い、平成が終わるタイミングに決まった「10連休」。

必ずしも歓迎する声ばかりが上がっているわけでは、ない。そもそも大型連休という「休みかた」自体が古いという指摘もあがっている。

いったい、なぜなのか。

「10連休はそもそも時代遅れ。今の社会からして、無理があるんです」

そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、公益社団法人日本フィランソロピー協会シニアフェローの土堤内昭雄さん。休みかた研究の第一人者だ。時代遅れという理由を、こう語る。

「そもそも産業構造自体が成熟化し、ラインを止めれば一斉に休むことができる製造業などの第二次産業から、サービス業などの第三次産業中心にシフトしています」

「つまり、24時間365日、誰かが働いている状況がある。10連休もあくまで休むことができる側だけの視点。10日間、誰かが常に働いているんです」

少子高齢化が進む中で介護や医療が10日間もストップしてしまって良いのか。大勢が一気に休むことで、大渋滞やホテルの値上がりなども懸念される。

「休む人の代わりに、シフトに入る人もいる。困る人も多いでしょう。世の中の実態と、かけ離れている気がします」

長時間労働が問題視されるなら、無理にでも休める時間をつくろうーー。そういう発想から政府がはじめた「プレミアム・フライデー」は記憶に新しい。

土堤内さんは、今回の10連休も同じ性質のものだとみる。

日本は「祝日過多社会」

そもそも日本の祝日を定めているのは「国民の祝日に関する法律」だ。その目的には、こんなことが書かれている。

自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

1948年の制定時は計9日だった祝日は、「海の日」(1995年)や「山の日」(2016年)などが次々と「祝日入り」したことで、計16日にまで拡大した。

データブック国際労働比較(労働政策研究・研修機構、2018年)によると、これはイギリスの8日、ドイツの7日、フランスの8日、イタリアの10日など、先進国の中でも多い。

土堤内さんはこれを「祝日過多社会」と名付けている。

「本来国民がみんなで休んで祝おう、というものが、どこかで国民を休ませる日にすり替わってしまったのではないでしょうか」

祝日が多いから、有休が少ない…?

祝日過多の一方、日本の有休取得率は50%と、主要国と比べても低い。

旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」が世界19カ国で比較したところ、3年連続最下位。

トップのブラジル、フランス、スペイン、ドイツはいずれも100%(30日)。その他の国もいずれも取得率は7割以上で、日本の低さが際立つ。

祝日が多いから、有休がなくても良いーーわけではない。先出の通り、祝日で休めない人が増えているし、その性質が異なるからだ。

「祝日はお上から与えられるもので、選ぶことができない。一方で、有給休暇は自由に取得することができます。二つは同じ休みでも、その性質が決定的に違う。自分が選んだ食事と、選ばされた食事は全然違いますよね?」

つまり単に祝日や連休を増やすことは有効策ではなく、有休をより使いやすくする必要がある、ということだ。

G7で47年連続最下位の生産性

「たとえばマレーシアでは、会社が休みではなくても休む人がいます。イスラームやキリスト教、ヒンズー教、仏教さまざまな宗教の人がいるからなんですね」

「日本でも、介護や子育て、がん治療など、様々な理由から時間的制約がある人は増えています。これはますます顕著になる。だからこそ、柔軟な休みかたを実現すべきなんです」

柔軟な休みかたと、柔軟な働きかたは表裏一体だ、と土堤内さんはいう。

「働くことと休むことには、相乗効果がある。インプットに使えることもある。疲労回復だけではなく、仕事のパフォーマンス向上にもつながることになります」

日本の生産性は、主要先進7カ国(G7)で47年連続最下位。うまく休むことが、こうした現状を改善することにもつながるかもしれない。

「長時間労働でGDPをあげる時代はもう終わりです。当時は性別役割分業が進み、専業主婦の支えがあったから、夫は24時間戦えていたが、いまは違います。労働力不足が懸念される時代だからこそ。新しい休みかたを、それぞれ個人がデザインしていかないといけません」


いまを生きる私たちが直面する、仕事にまつわるさまざまな課題……。

日々のもやもやを語り合う番組「もくもくニュース」では、上司と部下の「世代間ギャップ」や、これからの休みかたをゲストと一緒に考えます。

番組はこちらからご覧になれます。

【ゲスト】DOTAMA(ラッパー)、東松寛文(リーマントラベラー)

【MC】ハヤカワ五味(経営者)、大島由香里(フリーアナウンサー)

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