慰安婦像などを並べる「表現の不自由展」に批判殺到。市長は中止要請へ

    津田大介さんが芸術監督を務める「あいちトリエンナーレ」の企画のひとつ「表現の不自由展・その後」。これまで各地の美術館などで撤去されてきた展示物を並べており、中でも慰安婦を再現した「平和の少女像」や昭和天皇の写真と思われるものを燃やしているような動画などの展示に批判の声が高まっている。

    8月1日から名古屋市などで始まった「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の展示内容に対し、トリエンナーレ実行委に批判が殺到しているほか、複数の政治家らが反発している。

    これまで各地の美術館などで撤去されてきた展示物を並べており、慰安婦を再現した「平和の少女像」や昭和天皇の写真と思われるものを燃やしているような動画などが展示されているため。

    こうした批判の声を受け、愛知県とともにトリエンナーレに共同で出資している名古屋市の河村たかし市長は8月2日正午から現地を視察し、「少女像」の展示を中止するよう求める方針を明らかにした。

    同展は、3年に1度開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展。文化庁などの助成も受けており、今年で4回目。今回の芸術監督は、ジャーナリストの津田大介さんが務めている。

    「日本における『言論と表現の自由』が脅かされているのではないかという強い危機意識から、組織的検閲や忖度によって表現の機会を奪われてしまった作品を集め」ており、2015年に開かれた「表現の不自由展」の延長として開催されている。

    慰安婦問題や天皇と戦争、植民地支配政権批判、憲法9条などの「公共の文化施設でタブーとされがちなテーマの作品」が、不許可になった理由とともに並べられており、現代日本における表現の「不自由」について、見る側に問いかける内容となっている。

    津田さんはこの狙いについて、「展示されている作品に対して何らかの賛否を述べるものではありません。来場者に実物を見ていただき、表現の自由を巡る状況に思いを馳せ、議論のきっかけにしたい」とツイートしている。

    政治家もツイートで反発

    その中で一部から問題視する声が上がっているのが、慰安婦をモデルにした「平和の少女像」(キム・ソギョン/キム・ウンソン)や、「昭和天皇と推定できる」(同サイトより)写真を燃やした「焼かれるべき絵」(嶋田美子)だ。

    ネット上で一部ユーザーから批判の声が上がると、複数のインフルエンサーや政治家らが反応。

    タレントのフィフィさんは「税金が投入されているのなら政治思想の押し付けはよろしくない」と、医師の高須克弥さんは「平和の少女像」に関する記事を「この穢らわしい展示物を片付けなかったら名古屋市民やめます」とツイートした。

    また、こうした声に呼応するように、自民党の和田政宗参議院議員(比例)は「しっかりと情報確認を行い、適切な対応を取る」と、大阪市の松井一郎市長は「にわかに信じがたい」「河村市長に確かめてみよう」などとツイートしている。

    批判は1日で400件に

    実行委によると、展示の中止を求めるなどの批判的な意見が、8月1日夜時点で電話とメール合わせて400件ほど寄せられているという。

    2日にはそうした意見がさらに集まっており、実行委の電話はつながりにくい状況になっている。

    BuzzFeed Newsの取材に対し、そうした意見や市長の視察については、「状況の整理に努めており、現時点ではコメントできない」としている。

    河村市長は2日正午から30分、トリエンナーレを視察する予定だ。

    名古屋市役所はBuzzFeed Newsの取材に対し、視察目的について「市長が平和の少女像の現物を含め、『表現の不自由展』全体を見たい」としているため、と回答した。

    UPDATE

    産経新聞によると、視察を終えた河村市長は、従軍慰安婦問題が「事実でなかった可能性がある」「国などの公的資金を使った場で展示すべきではない」として、少女像の展示中止を実行委員長である大村秀章・愛知県知事に求める方針を明らかにした。