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10代のLGBTの子たちは何を思っているの? 先輩たちからの問いかけ

かつての自分たちより、環境は変わっていると思っていた。でも…。

10代のレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーら、LGBTの当事者たちは、最近、何を考えているのだろうか?

セクシュアルマイノリティの社会的認知は広がり、理解や配慮が少しずつ進んできた。

もしかしたら、昔よりもオープンにできているかもしれない。SNSが当たり前になって、孤独を感じることも少なくなっているかもしれない。

そんな思いを持って、当事者らが入る団体が、10代の子たちに話を聞いた。

座談会を開いたのは、LGBTエンタメ団体「やる気あり美」。

そのきっかけは、代表の太田尚樹さんが先日、高校で授業をする機会があったからだ。

高校生たちを前に、ゲイの当事者であると伝えたところ、想像よりもずっとポジティブに受け止められた。そんな環境にいる10代の当事者たちは、かつての自分たちよりも暮らしやすいかもしれない。そう思い、この会を企画した。

「好きになってしまって...」

集まったのは、高校2年生のナオさん(16)、いずれも大学1年生で18歳のポンさんとマチさんの3人。

ナオさんは、男性・女性どちらにも当てはまらないXジェンダーで、男性も女性も恋愛対象のバイセクシュアル。ポンさんとマチさんはレズビアンの当事者だ。

座談会は、雑談を交えながら笑い声をあげる場面もあって、和やかな雰囲気で進んでいった。

しかし、会が進むうちに、参加した10代の当事者たちの実態は、楽観視できないものだとわかってきた。

やる気あり美のメンバーで、ゲイのたんさんが「LGBTについて日常生活で話す機会がないし、話しづらい?」と聞くと、全員がうなずいた。

ポンさん:私は女子校だったけど、オープンにして良いって感じではなかった。(カミングアウトした場合の)反応はわからないけど、自分の周りにいたら無理だわって言ってる子もいました。

マチさん:(当事者は)恥ずかしくないもの、悪くないものって認識があるけど。友だちは、まだLGBTをからかいの的としていることがあります。

ポンさん:私は、当事者の友だちが全然いないんです。仲良い友だちにはしゃべって良いかなと思ったけど、好きになっちゃって言えなくなってしまった。

太田さん:わかるー!

「素の自分」でいたいのに

ナオさんは一方で、「私の学校には、カミングアウトしてる当事者の子も何人かいて、話しやすい人は多いです」と言う。

ナオさん:でも、当事者同士でも深く話せない子もいます。人としてのタイプが違うから。

太田さん:セクシュアリティが一緒でも全然違うからね。

たんさん:仲良くなれない子もいるよね。

3人は「素の自分」でいられない環境にいる。

だから、Twitterやアプリを使って、当事者同士で積極的につながろうとする。

参加者の中には、SNSや電話で話し、会ったことがある子もいた。恋愛対象として交際した経験もあるという。

ただ、誰だって知り合った人、全員と仲良くなれないように、当事者同士でも気が合う、合わないがある。

SNSの普及で、当事者と会おうと思えば、会えるようになった。けれど、友人や恋人をつくるのに、難しさがあるようだった。

親が理解してくれない辛さ

友人や知人にカミングアウトがなかなかできないという状況は、親にも当てはまる。

3人の中で、親に告げているのはナオさんだけ。そのときの体験を語ってくれた。

ナオさん:1回では理解してもらえず、2回話しました。Xジェンダーで、男でも女でもあると思ってると話すと、「小さい頃から男らしいもので遊んでたよね」って言われました。

ナオさん:でも、親は娘だから、かわいくあってほしいみたいで「かっこいいね」が良い時に、「かわいいね」って言われることがあります。「男でも女でも良いんだったら、女で良いじゃない」とも言われました。

それでも、家族と接している中で、嬉しかった瞬間があった。カミングアウトしていない姉と一緒に、トランスジェンダーが主人公の映画『アバウト・レイ 16歳の決断』を観たときだ。

LGBTに対してどう思っているか気がかりだったが、姉は「こういう決断もあるよね」と話したといい、安心したそうだ。

一方、親に告げられていないマチさんは、親の言動に辛い思いをしている。

マチさん:テレビに当事者が出たとき、父親が「良いかもしれないけど、俺は理解できないな」って感想を話すのを聞きました。「こういう人たちは何を考えてるんだ」とも言ってて、私は言えないなって思いました。

マチさん:だから、女性と付き合ったときには、親への罪悪感が生まれてしまって。親を悲しませてしまうと思って、別れてしまいました。

将来への不安

そのような現状に、3人は将来への不安を募らせる。

ポンさん:誰にも言えてないから、1人で生きていかないといけないのかなって不安があります。

そんなポンさんにとって、やる気あり美のように、当事者だとオープンしている人たちが、心の支えになっている。

ポンさんは「やる気あり美さんがいてくれて嬉しい。孤独感はそんなにないし、自分と同じ気持ちの人が他にもいるんだなって思えます」と語る。

仕事やプライベートは充実するのか、と心配する3人に、太田さんは優しく話しかける。

「確実に社会の理解は進んでいて、未来は明るいと確信しています。LGBTの当事者が働きづらい職場でいいのか、と企業内で熱く戦っている人もたくさんいる」

「だから、期待していてほしい。みんなが就活する時は、今よりももっと変わってるはずだし、ロールモデルももっと出てくるはず」

「友だちができたし、話せて良かった」

当事者として苦しい思いもしてきた、太田さんやたんさんたちだからこそ、10代の3人の気持ちに少しでも寄り添える。

親に理解してもらうのに長い時間がかかったなど、自らの経験も打ち明けながら、当事者の「先輩」として、不安をできるだけ取り除こうとする。

3人とも、同じ世代の当事者たちと友だちになりたい、先輩たちの話を聞きたいとの強い思いを持つ。ありのままの自分を出して、恋の話やたわいもない話を思う存分したいのだ。

だから、この会に参加した。

初対面だったけれど、3人は嬉しそうに連絡先を交換し、「友だちができたし、話せて良かった」と笑みをこぼす。

先輩として込み上げる思い

太田さんは「もっと時代は進んでいると思ってた。でも、10代の子たちの現状ってまだまだ厳しいなって思った」と感想を語る。

最後に次のように話すと、思いが込み上げ、頬には涙がつたっていた。

「この会に来たみたいに、一歩を踏み出すことって、確実に自分の未来を変えている。小さくても踏み出し続ける限り、未来はどんどん明るくなっていくと知ってほしい。だから、今日こうやってここに来た自分を褒めてあげてほしいです」

「話を聞いて、LGBTだからという理由で、10代の子たちの可能性が潰されない社会にしなきゃだめだなって、久しぶりに強く思った。そんなことになったら、絶対にあかんな、って。 こういう子たちが生きやすい社会になるように、少しでもできることがあればやらなあかんなって思いました」


BuzzFeed Japanは東京レインボープライドのメディアパートナーとして、2018年4月28日から、セクシュアルマイノリティに焦点をあてたコンテンツを集中的に発信する特集「LGBTウィーク」を実施中です。

記事や動画コンテンツのほか、Twitterライブ「#普通ってなんだっけ LGBTウィークLIVE」も配信。

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