「ビリギャル」が教育現場に入る。新たなチャレンジへの決意と「使命」

    「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」のモデル、小林さやかさんが決意を語った。

    「私はもうビリでもギャルでもねえぞ」

    あの”ビリギャル”が、新年度から北海道にある私立高校でインターンをする。

    小林さやかさん(30)。大ヒットした本「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」のモデルだ。

    小林さんは2010年に慶應大学を卒業後、ブライダルの世界に飛び込んでいた。

    なぜ、いま教育現場の道を選ぶのか。

    小林さんは自分より下の世代が生き生きと暮らす社会を作っていきたいと、新たなチャレンジに意欲をみなぎらせている。

    高校2年生の夏、小学4年生レベルの学力で、全国模試の偏差値が30だった。

    大学に行く意味を見つけられないでいたが、塾講師の坪田信貴さんと出会い、人生が変わった。

    金髪、耳にピアス、濃い化粧。坪田さんはそんな小林さんを見た目で判断せず「君っておもしろいね。東大、興味ある?」と誘った。

    そして、「知的なイケメンがごろごろいそう」との理由で慶應大学を第一志望にし、猛勉強をはじめる。小学4年生のドリルからはじめ、1年半で慶應大学合格をつかんだ。

    ギャルとそれを支える家族、塾講師が歩んだ話は、多くの人々の感動を呼んだ。

    「みんな結果だけ見て、『地頭が良かったんでしょ』と言うけど、私はあの年の受験生の中で、1番努力したって言い切れるくらい勉強しました」

    そうBuzzFeed Newsに語る小林さんの姿に、ギャル時代の面影はない。

    大学時代にアルバイトをしていた居酒屋に影響され、最高のサービスを提供できる人になりたい。そう思い、大手ブライダル企業に就職。ウエディングプランナーになった。

    3年後にブライダルプロデュース会社に転職し、その後はフリーランスとして活躍している。

    そのかたわら講演会の依頼もこなし、全国各地で学生や保護者らに向かって語りかけている。

    このままでいいのか

    講演の内容は、偏差値をあげて難関大学に行くべきだ、と説くものではない。自分でワクワクする目標を見つけ、強い意思を持って努力する大切さを伝えている。

    「ビリギャルって受験の話だと思われているけれど、家族の話であり、人の成長の話なんです。子どもたちには、どういう大人になりたいかを想像して、逆算したらどう生きるべきか考えてほしい。そのためには、もしかしたら大学に行く必要はないかもしれない」

    昨年は講演を83回した。そうやって回数を重ねるうちに、教育について学び直したいと思うようになった。

    「講演会では『自分の頭で考えて、意思を持って決めてよ』と言っているけれど、教育の専門家ではないし、何年も前の受験の話をして偉そうだなってずっと思ってたんです。だから勉強し直したいなと思って」

    その機会を提供してくれたのが、北海道の私立札幌新陽高校だった。

    教育方針や考え方に感銘を受けていた荒井優校長に悩みを打ち明けると「現場で学ぶのが一番だよ。うちで良ければ」と歓迎してくれた。

    先生でも生徒でもない立場で

    インターンは4月2日から本格的に始まり、7月末までの予定。

    教壇には立たず、教師でも生徒でもない立場で学校と関わる。肩書きは「校長の右目」だという。

    「もともと劣等生だったし、悩んでいる子たちの気持ちがよくわかるから、先生たちにも見えてないところが私には見つけられるかもしれないと思っています。だから、荒井先生の右目として、いろんな生徒と関わっていきたいです」

    実際にインターンでなにをするかは、現場で先生や生徒たちと話しながら決める。

    ただ、生徒と一緒に授業を受けるほか、「あそ部」という部活をつくって生徒に寄り添った形で「部長」になりたい、との考えはある。

    「荒井先生が言うように、これからは偏差値ではなくて経験値が大事だと思います。偏差値は社会に出ても何にも役に立たないので、遊び感覚でイベントの企画をするなど、いろんな経験を一緒にしたいですね」

    生徒たちに伝えたいこと

    恩師の坪田さんのように、生徒と同じ目線に立って寄り添えれば、と願う。そして「すげえ」としっかりと伝えたい。なぜか。

    「学校は生徒にとって、人に感謝をされるとか、人に影響を与えられるとかを自覚する場所だと思います。だから、どんな小さなことでも『すげえ』ってちゃんと伝えてあげたいんです」

    「人より掃除をちゃんとできたり、字をとても丁寧に書けたりするかもしれない。だから、勉強ばかりじゃないよと伝えることで、生徒たちが自己肯定感を高めて、もっと主体的に行動できるようになれば嬉しいです」

    「タブーにどんどん挑戦して」

    インターンとしての受け入れを決めた荒井校長は、小林さんが大好きな児童文学『長くつ下のピッピ』の話を持ち出し、主人公である少女ピッピは彼女のようだと言う。

    大人に左右されずに自分でなんでも決められ、人に愛され、どんなことがあってもめげず、笑って立ち向かっていくピッピ。「まさに、彼女は現代の長くつ下のピッピだと思います」と褒める。

    「これまでは外からしか学校を見てなかったと思うけれど、今度は中に入って学校と同じ悩みを共有することになります」

    「小林さやかとしての次のステップのために、何を学び、感じ取っていくのかは彼女次第です。波風立てずに4ヶ月を終える必要は全然ない。タブーにどんどん挑戦して思う存分やって、嵐を呼び起こすような日々を送ってほしいです」

    使命を全うするために

    小林さんは「ウエディングプランナーは世の中にたくさんいるけど、元ビリギャルとして学生たちに話せるのは私しかいない」とし、「使命を全うしたい」と決意を胸にする。

    「日本の教育を本気で変えたいと考えている札幌新陽高校の仲間になれて、ワクワクしています。この貴重な経験を通してしっかり学んで、本当に必要な教育を全国に広めていくお手伝いをしたいです」

    BuzzFeed JapanNews