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創価学会と公明党と「ガチンコで喧嘩」。反旗を翻したれいわ新選組の学会員の決意

「生身の人間の真実の叫び、魂の叫びに、大勢の方が共鳴していただけたのではないか」

山本太郎代表率いる「れいわ新選組」は、7月21日に投開票された参議院議員選挙で、候補者10人を擁立した。その中で唯一、小選挙区から立候補した男性候補者がいた。

沖縄県出身の野原善正氏だ。

公明党の支持母体「創価学会」の会員を30年以上続けながら、沖縄から東京選挙区に乗り込んだ。

同選挙区から立候補した公明党の山口那津男代表と「ガチンコで喧嘩するため」。そう意気込んでいたが、山口代表は当選した一方、彼の当選は叶わなかった。

彼は一体、何者だったのか。何を訴え、れいわ新選組の開票センターで苦戦を伝えられると、どのように語ったのか。

「永田町におけるややこしい抵抗勢力」。山本代表は、自身が旗揚げした政治団体をそう豪語していた。

比例区では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者で人工呼吸器を装着した男性と、重度身体障害のある女性が立候補するなど、ネットを中心に有権者から注目を集めていた。

山本代表が言う「ややこしさ」があり、注目株だったのが、東京選挙区から出馬した野原氏だった。

「バトンを受け取った」野原氏、沖縄でも三色旗

そんな東京選挙区は、2013年の参院選で、当時は無所属だった山本代表が立候補し、4位で当選した選挙区だ。

山本代表は今回、比例代表に転出し、野原氏に東京選挙区を引き継いだ。20日に東京・新宿であった「最後の訴え」でも、山本代表はこう野原氏を担いで、紹介した。

「がっちりと大人の喧嘩をしてくれる人が、バトンを受け取ってくれました。こんなに気合入った大人、見たことある?誰が宗教団体を敵に回したい」

野原氏は2018年の沖縄県知事選で、公明党への反対姿勢を公然と示した。

公明党が支持した佐喜真淳氏ではなく、米海兵隊普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に「反対」を主張した玉城デニー氏を応援した。

玉城氏や支持者らとともに、会場で知事選の開票を待ち、当選確実の報を受けると、創価学会のシンボル「三色旗」を振った。

この会場にいたBuzzFeed Newsの取材陣は当時、三色旗を振る人がいたことに驚き、野原氏に直接、取材した。すると、「文字通り、組織に反旗を翻して、ひとりで頑張ってきました」「少ないが、良心を持った学会員がいるはず。組織に従順になることが、信仰ではない」と語った。

選挙戦で繰り返した公明党と創価学会への批判

野原氏が大切にするのは、創価学会の池田大作名誉会長の基本理念「平和思想」だという。

今回の選挙戦では、主に辺野古移設反対を訴え、「平和思想」を引き合いに出しながら、公明党と創価学会への批判につなげた。

20日の最後の訴えでは、次のように語った。

「私が特にしゃくに障るのは、自公政権の中で公明党。巷に貼られているポスターを、皆さんご覧になった方も大勢いらっしゃると思います」

「そこには『小さな声を、聴く力。』と書いてあります。(沖縄での)4回の選挙、また県民投票で示された、あの沖縄の大きな大きな声も聞かないくせに、何が『小さな声を、聴く力。』だ、公明党。何が『小さな声を、聴く力。』だ、山口那津男」

「小さな声を聞く力があるんだったら、沖縄の大きな大きな声、聞いてみろよ。平和福祉なんだろう?今すぐ辺野古止めてみろよ。それもできないで偉そうなこと言うな」

そして、『大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく』という公明党の立党精神を語ると、強い口調で公明党の議席を減らしたいなどと主張し、創価学会をも槍玉にあげた。

「現在の公明党は、池田先生の平和思想とは全く真逆の方向に進んでいます。非常に危険なことです。絶対に止めないといけません」

「公明党がやってきたこと、公明党を支援した創価学会がやってきたこと、本当に罪が重いですよ」

演説会場を埋めた有権者らは、あからさまに敵対心をむき出しにする野原氏に、声援を送った。野原氏は、それに応えながら、三色旗を高々と振り続けた。

開票センターで滲ませた悔しさ

しかし、今回の参院選では、公明党の山口代表に敗れた。

開票センターで、その情報を受け取った野原氏は午後11時20分ごろ、他の候補者たちとともに会場に初めて姿を見せた。

野原氏はマイクを握ると、支援者らに向かい、語り始めた。

「熱い熱いご支持、ご声援ありがとうございました」

「今回の選挙戦、いつまで沖縄に基地を押し付けるのか、と東京で訴えさせていただけたのは意義があった。特に、公明党おかしい、創価学会おかしい、ということを全国に拡散できたのは、意義があったと思います」

そして、こう締めると、頭を深く下げた。

「生身の人間の真実の叫び、魂の叫びに、大勢の方が共鳴していただけたのではないかな、と手応えがあります。本当にありがとうございました」

山本代表は「まだ結果は出ていない」。この時、そう強調した。ただ、最終的に、選挙区で存在感を見せたものの、議席獲得には至らなかった。

野原氏は、公明党と創価学会を変革させたい、という路線を「突っ走っていく」という。

そして、山本代表から衆議院議員選挙出馬の可能性を、冗談めいて尋ねられると、苦笑いをして「頑張ります」と答えた。

しかし、笑顔はすぐになくなった。時折、天井を見つめ、山本代表の冗談にもあまり笑わなかった。

その顔には、疲れだけでなく、悔しさが滲んでいたように見えた。