「平成」は幕をおろした。そして、5月1日、新しい天皇陛下の即位とともに「令和」の時代がはじまった。
その瞬間を迎えようと、4月30日の夜から多くの人々が集まった東京・渋谷。
カウントダウン前から大熱狂に包まれたが、お祭り騒ぎを終えた街に目立ったのは散乱したゴミだった。そんな光景に悲しみ、一人でゴミを拾う若い男性がいた。
改元前夜の渋谷は、雨が降りしきっていた。あいにくの天気でも、カウントダウンを待つ人たちでごった返した。
「令和!令和!」と叫びながらスクランブル交差点を渡ろうとする人たちに、警視庁の警察官らは「立ち止まらずにお進みください!」と連呼する。
混乱を防ごうと、小さなメガホンで必死に声を張り上げていた。
四方八方から雄叫び。誰彼構わず押す人が続出
令和の時代まであと5分。ときおりジャンプして声を張り上げる人もいれば、「君が代」を熱唱する人もいた。
そして、ついに新たな時代を迎えた。四方八方から雄叫びが聞こえる。
高ぶる気持ちに呼応するかのように、「令和!令和!令和!」と誰彼構わず押す人が続出。倒れて下敷きになる人がいてもおかしくないほどだった。
「誰かの傘壊そうぜ」。そう話す若者の近くでは、別の若い女性がぼやく。
「日本人って集まるとほんとひどくなるよね」
残った大量のゴミ、濡れながら拾う男性
熱狂していた人は次第に帰路についたり、渋谷の街に消えたりした。
残ったのは、地面に散らばった大量のゴミだった。
多くの壊れた傘は、ほねがむき出しの状態。その上を通って足を滑らせ、何人かが危うく転倒しそうになっていた。
機動隊員らが撤退の準備を始めるほど、普段の渋谷に戻りつつあった頃だった。
黙々と地面に放置されたゴミを拾う男性の姿があった。
神奈川県の会社員、堀田浩一朗さん(26)だ。
快活な笑顔を見せながら、BuzzFeed Newsに語る。
「元号が変わるので、自分も楽しむために一人で来たんですよ。そしたら、終電がなくなり、することがなくなっちゃって」
「ちょうどゴミが散乱してたので、ゴミを拾っているんです。自分、どうせ暇なんで」
手には自身の傘。それでも、さすことはなく、全身濡れていた。
散乱したゴミを見て、どう思ったのか。
「騒いでるときはみんな楽しそうで良いなって思ったんです。でも、終わった後、ゴミがひどくて悲しいなと。やっぱり後のことを考えてほしいなと思いました」
「出だしは悪そう」。けれど...
拾ったゴミには、ズボンやTシャツ、タオル、缶、傘などがあった。声を落として気持ちを吐露しつつも、こう令和の時代に期待を込めた。
「令和を迎えて、出だしは悪そうな感じですけど、これからいい方向に進めばいいな」
「とりあえず、始発まではやろうかなと思っています」。堀田さんは明るくそう言って、再びスクランブル交差点付近でゴミ拾いを始めた。
渋谷では、歴史的瞬間を迎えた喜びを分かち合いながらもゴミを残す人がいた。一方で、堀田さんのように何人かの人々が、ゴミを拾って歩いていた。
ある若い女性は缶ビールを飲み干すと、「ちょっと待ってて」と友人に話し、走ってゴミ箱に空き缶を捨てていた。