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「子どもたちの取材は控えて」カリタス小学校が要請 現場の報道陣の様子は<川崎・登戸殺傷事件>

「子供達、そして子供達のことを心配する保護者の皆様の気持ちをご一緒に考えていただけたら幸いです」

川崎市登戸の路上で5月28日、19人が相次いで殺傷された事件。学校側は報道陣に対し、子供達への取材を控えるように要請した。現場の取材はどういう状況だったのか。

5月28日夜に記者会見したカリタス学園の齋藤哲郎理事長は、学園側が把握している事件の状況について説明した上で、こう語った。

「子供達そして保護者、本当に深い心の傷を負っておりますので、できることなら、子供達への直接のご取材はお控えいただければと思います。本当に子供達、そして子供達のことを心配する保護者の皆様の気持ちをご一緒に考えていただけたら幸いです」

カリタス小学校の内藤貞子校長も、こう続けた。

「保護者から、子供達の写真を撮ったり、子供達にインタビューをしないでほしいという要望が出ています。これは、保護者の願いですので、どうぞ受け止めていただければありがたく思っております」

突然事件に巻き込まれ、日常を壊された児童や保護者たちの動揺は大きい。その上、大事件だけに報道陣も大量に集まっており、取材でこれ以上の重圧を与えないように配慮を求めた。

カリタス学園前の様子は

早朝の事件発生後、現場には新聞、テレビ、雑誌など大勢の記者が駆けつけた。

BuzzFeed Newsも2人の記者が現場に入った。保護者説明会と記者会見が開かれたカリタス学園の前には、夕方までに100人近くの報道陣が集まっていた。

メモを手にした記者や、フォトグラファー、テレビ用の大きなカメラやマイクなどを抱えたスタッフ。学校の塀の周りを取り囲むように報道陣の人だかりができていた。

説明会や子供の迎えにきた保護者に声をかけ、少しでも話が聞けないかと試みる記者たちの姿もあった。

ほとんどの保護者は記者たちの質問には答えず、足早に去った。それに対して、無理にマイクを突き付けようとしたり、保護者に連れられた子供に直接話を聞こうとしたりする姿は、BuzzFeedの記者が見る限りは、なかった。

保護者にインタビューを断られると、頭を下げて「失礼しました」と話す記者や、明らかに小走りで記者を避けようとしている保護者には近づかない記者もいた。

一方で、話しかけてきた記者の質問に、ある保護者が答えようとすると、一斉に他の記者も駆け寄り、あっという間に取り囲まれるような状況になった。答える人が少ない分、答えてくれる人のところに記者が集中する。

歩きながら取材に対して話していたその女性は、校門近くまで来ると「もう行きます」と言い、学園内へ入っていった。

厳しさを増す取材陣への目線

事件・事故での取材をめぐっては、報道のあり方に厳しい目線が注がれるようになっている。

大津市で5月8日に起きた保育園児らが死傷した事故では、保育園側が開いた会見について、ネット上で「なぜ園を追及するのか」と報道陣への批判が広がった。

京都新聞などが紙面やサイト上で「正確な事実を伝え、再発防止策を探るためには、被害者である園の側への取材も必要だった」と説明した。メディアが取材の真意を説明するというそこと自体が、ソーシャルメディア上で報道陣の振る舞いへの批判が高まった近年までは、ほとんどなかったことだ。

一般的にこうした事件や事故では、学校側が会見の実施を決めることが多い。

京都新聞によると、大津の事故では保育園側が会見の開催をメディアに知らせた。今回も、カリタス学園側が28日午前11時過ぎ、「午後6時から会見」と、学校周辺に集まった報道陣に伝えた。

なぜ、事件に巻き込まれ、被害を受けた側が会見を開くのか。そこにはいくつか理由がある。

メディアを通じて、学校の声が直接届かない関係者や社会全体に、広く状況と学校側の取り組みを伝えること。それとともに、メディアに対応する機会を記者会見に絞ることで、取材対象が拡散したり、過熱したりすることを抑える効果もある。