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「ダイエットにマジックはない」 頑張る女の子たちへ、医師からのメッセージ

メリットもあれば、代償もある。

女の子にかわいく見られたい、バカにしてきた人を見返したい、自分でかわいいと思いたいーー。ダイエットを始めた人たちには、さまざまな目的がある。

辛くてどうしようもないのに、「いま我慢すれば」「ここを乗り越えれば」と走り続ける。

思春期は心にとっても体にとっても大切な時期だ。ダイエットを一生懸命頑張る女性たちが、知っておくといいことはあるのか。

BuzzFeed Newsは、日本摂食障害学会・副理事長で、政策研究大学院大学の鈴木眞理教授に話を聞いた。

「やせていること=美」とされる日本

日本では「やせていること=美」のように謳うテレビCMやダイエット記事などが溢れ、やせをもてはやす文化が浸透している。モデルやタレントとして”輝きを見せる”人の多くが、やせている人ばかりだ。

ある女性向けファッション雑誌は、スタイルのいい専属モデルたちの様々な体の部位のサイズを掲載した。体重や身長、スリーサイズはもちろん、太ももやふくらはぎ、二の腕や手首、足首の太さなどがミリ単位で記され、「最近太っちゃって」「やせて人生変わる感覚味わって」などとモデルたちがコメントしている。

「私も頑張れば〇〇みたいになれるかも」と考える読者は少なくないはずだ。

遺伝子やダイエット環境の差

ただ、そうは望んでも大きな違いがあるかもしれない。鈴木教授は指摘する。

「モデルの多くが遺伝的にスリムな家系の出身で、無理な努力をしなくても体型を維持できる体だと思われます」

だから、誰もがモデルのような体型を手に入れられるわけではない。食欲という本能との戦いに挑まなければならず、負けるのは当然でリバウンドを招く。

また、専属の医師や栄養士、トレーナーなどのサポートで健康と体型が管理されている人もいる。つまり、多くの一般女性たちとはダイエットをする環境が異なっていると思われる。

メリットは多いが、代償もある

現代社会において、やせることのメリットは多い。

内面に磨きをかけるよりも、すぐに体重という数字で成果が表れる。他人からは褒められ、かわいいと思った服をうまく着こなせる。自分にも自信が持てる。さらに、ダイエットに没頭すれば、日常にある他の嫌なことも忘れられる。

しかし、あまりにも無理をすれば、ダイエットで心も体もボロボロになる恐れもある。鈴木教授は、多くの患者と会話をしてきたからこそ、こう話す。

「自分の体や、やせがもたらす弊害についての知識が少ない人は驚くほど多いです」

その弊害の一つが、かえって体型が悪くなるということ。

やせれば、全身の脂肪と筋肉が落ち、助骨や頬骨が浮き上がる。今の体型のまま細くなれず、女性らしい乳房やウエスト、お尻がなくなり、寸胴のような幼児体型になり得る。

また、胃腸など内臓を支える組織も弱くなって下がり、下腹部が子どものように出っ張る。鈴木教授は患者に「小便小僧」のような体型になると説明しているという。

生理が止まると…

ダイエットによって体重が減りすぎれば生理が止まることもある。

生理がないのは、女性ホルモンが不足しているサイン。骨のカルシウムを増やすのも女性ホルモンだといい、将来、骨粗鬆症になるリスクを高めてしまう。

骨のカルシウム量の最大値は14〜15歳で決まり、骨粗鬆症を予防するには30歳までこれを維持しなければならない。最大値が低いと40歳くらいで骨粗鬆症になる恐れも出てくるという。

「だから予防は思春期にするんです。20歳以下のときにいかに運動して、よく食べて骨にカルシウムをいっぱい入れ、容量を膨らませるのかが大事。歳を取ってから、予防はできないですからね」

その他にもひどければ、味がわからなくなったり、身長が伸びなかったり、毛が濃くなったり、皮膚が乾燥したりするなどいろんな症状が起きる。

このような合併症をきたすのが摂食障害だ。

拒食症(制限型・むちゃ食い/排出型)

摂食障害の一つが、心理的な原因で少食になって極端にやせる「拒食症(神経性食欲不振症)」。

拒食症は、少食だけの「制限型」と、飢餓の反動で過食するようになり、それでもやせを維持するために嘔吐や下剤を乱用する「むちゃ食い/排出型」がある。

過食症

一方で、衝動的にたくさん食べる発作がある「過食症(神経性大食症)」もある。

過食症と拒食症の「むちゃ食い/排出型」は同様に過食をするので、同じようにも思えるが、過食症では体重が正常という特徴がある。

また、過食症が健康な人のむちゃ食いとは違うのは、衝動を抑えられず繰り返すこと。たくさん食べたあとには後悔や自責の念により、強い抑うつに襲われる。

ダイエットを考えていなかった人も発症

摂食障害は、必ずしも無理なダイエットをした人がなるわけではなく、ダイエットを考えていなかった人でも発症する。ストレスと脳のホルモン分泌異常が関係しており、ストレスへの対処能力を超えたときに発症する心身症だ。

誰もがなるわけではないが、病気にかかれば治るのは困難で大変だ。

鈴木教授は、突然の挫折体験などにより「突然ヒロインじゃなくなった時に発症するパターンが多い」として患者の特徴をこう説明する。

「どんな家庭でもなる人はなると言われていますが、患者は外から見ると優等生ばかり。勉強も頑張るし、クラスでも人気者。ところが、失敗したことがないので、失敗が怖くて怖くて不安ばかり抱えている人が多いです」

高所恐怖症と似ている恐怖

特に拒食症の本質は、太りたくない、体重を増やすのが怖いと感じてしまうところだ。その恐怖は、「高所恐怖症の人が感じる恐怖に似ている」と話す。

「高所恐怖症の人は、柵があって落ちるわけないとしても、怖くて怖くて上がれないですよね。理論的には落ちないと理解しているけれども嫌だとなる。食べ物を前にして、食べなければ本当はダメだとわかっていても、体重を増やすことがとにかく怖くて食べられないんです」

患者たちは、自分でもよくないことをしていると感づいている。でも、病気が治療への道を妨害する。

医者は敵

摂食障害は治る病気だ。だが、拒食症は、本人に病気の意識がなく、やせを治されたいのでやせていることを認めず、周囲のアドバイスを聞かない。自分から病院に行きたがらないので治療は困難を極める。

「患者は太りたくない、でも医者は太らせたい。医者に協力したがらない病気ですよ」

医者と患者を「敵同士」だとする鈴木教授。信頼関係が大事だとして、こう治療のアプローチを説明する。

「なので、必要以上に脅かしたり、怖がったりしないように配慮しながら、時間をかけて科学的な情報を提供し、治らないと何が困るのかという目的探しを本人と一緒にするんです。本人にとってお得感がないとだめで、ストレスは何なのかを突き止めるのが治療の鍵です」

摂食障害の患者は増えている

厚生労働省によれば、1998年の疫学調査で、摂食障害患者は全国に推計で約2万3000人いる。その18年前から約10倍になったという。

9割以上が女性。そのため「女性がなる病気」と勘違いされがちだが、男性患者も存在する。

「2万3000人」というのは、あくまで治療を受けている患者の推定の人数。医療機関を進んで訪れる人は一部であることから、厚労省は「実際はもっと多いと推定される」としている。

誰にとっても決して無視できない病気だ。

無理をしないためのダイエット

ダイエットによる危険を少しは知っていても、それでも頑張りたくなる人はいっぱいいる。

けれど、鈴木教授は「ダイエットを成功させる安全で有効な薬剤はなく、地道な努力しかない」と説く。

病気の治療のために、すぐにでも減量しなければならない人がするダイエットだって、食事と運動療法のみなのだという。ストレスなく、無理しないダイエットをすることが大切になる。

最後に、鈴木教授はダイエットに励む女性たちにメッセージを送る。

「科学的な方法でダイエットをしてください。自分に害のない目標値を定め、必ず専門家を頼ってください。簡単にやせられるマジックはありませんよ」

BuzzFeed Newsはダイエットに関して連載企画で取り上げた。無理なダイエットに走った女子高生のインタビュー記事「無理なダイエットに走った女子高生 頼ったのはTwitterだった」、その女子高生がTwitterで出会った男性に話を聞いた記事「『カリスマ』と呼ばれたダイエット”講師”の1ヶ月」を配信しています。


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