7月21日に投開票される参議院議員選挙。各選挙区における立候補者を知るうえで、欠かせないものに「選挙ポスター」があります。
ポスターに写るのは、凛々しい顔立ちの候補者たちの姿です。
そこで、仮説を立てました。
選挙ポスターを撮影するプロの手にかかれば、凡人である私や同僚の記者だって政治家っぽくなれるのではないか。
プロにお願いして、検証してみました。
快く協力してくださったのは、スタジオ☆ディーバ(以下、ディーバ)さん。
これまで首相や大臣クラスの名だたる政治家から、新人候補の選挙ポスターの撮影まで手がけているそうです。
また、ミス日本コンテスト受賞者の撮影や、就活用やお見合い用の写真まで幅広いサービスを提供しています。
そんな「プロ中のプロ」と言えるディーバで、BuzzFeed Japanのニュース記者、吉川と瀬谷の2人が仮説に挑戦。
吉川は「与党」、瀬谷は「野党」で同じ選挙区の対抗馬同士。そうした無茶振りなキャラ設定を伝え、ディーバにお願いしました。
これが普段の2人です。
凛々しさのかけらもない。有権者に「清き一票を!」なんて呼びかけても、笑われるだけです。
まずスーツに着替えました。ネクタイを選ぼうとすると、取締役の高木寸子統括マネージャーが「ヘアメイクをすると、またイメージが変わります。なので、それから選んだ方が良いですね」とのこと。
そこで、すぐにヘアメイクに入ります。
担当してくれたのは、ヘアメイクの輿石公美さん。くせ毛や肌荒れがひどい2人の見た目が、あっという間にきれいに整っていきます。
ファンデーションを塗ったり、アイラインを入れたり……。眉毛まできれいに描いてもらいました。まつ毛が下がっている吉川は、ビューラーまでしてもらってとても嬉しそう。
ディーバのモットーは、写真の加工を基本的にしないこと。
「ただ、選挙ポスターでは、加工をすることが多いです。目の印象を強くするために白目を白くしたり、歯を白くしたり。でも、うちなら、加工をそんなにしなくてもきれいに撮れます」(高木統括マネージャー)
不自然さが出てしまう余計な加工はせず、有権者の人たちに印象良く見てもらえるようにする。
その土台作りとしてのヘアメイクで、その人の魅力を最大限に引き出すそうです。
そんなヘアメイクも、候補者によって違いを出すといいます。
それは、候補者のマニュフェストや対抗馬などをしっかりと聞いたうえで、その人のイメージを演出するから。
なので、改めて”吉川は「与党」、瀬谷は「野党」で同じ選挙区の対抗馬同士”というキャラ設定を伝えました。
そして、イメージに合った最適なヘアメイクをしてもらい、ネクタイを選んでもらいました。
与党役の吉川は、何回も当選しているベテラン議員のイメージ。実際の年齢(31歳)より落ちついて信頼感があるように見られる感じに。
野党役の瀬谷(27歳)は、新人候補のイメージ。勢いのある、さわやかな感じになりました。
※参議院議員になるために選挙に立候補できる年齢は、満30歳以上です。
それでは、撮影がスタートします。
撮影してくれたディーバの代表取締役で、フォトグラファーの山口直也さんが、これまたすごい。
「よし!」「よし!」「もう1回!俺の頭見て!」「口は閉じて、その目なんですよ。そのまま歯が見えるように笑う!」……。
そんな声がスタジオ内に響き渡ります。
撮影されるのに慣れていない私たちのテンションは、急上昇。吉川は「なんか、すごいテンションが上がってくる!嬉しい!」とご満悦です。
ただ、思わず調子に乗ってしまった2人に、しっかり指摘も。
「それは楽し過ぎる。仕事をやる笑顔じゃない」「さわやかだけど、可愛過ぎる」
実際の候補者たちの撮影でも、いつも盛り上げるそう。
ヘアメイクと同様、その人の魅力を最大限に引き出すために。山口さんは言います。
「やっぱり良い表情になってもらうために、気分を乗せて撮るのが大事です」
「『よ!総理!』や『よ!大臣』と声をかける荒技も時々やります。そうすると、『そうかー?』なんてテンションが上がってくれて」
候補者たちと同様に、私たち2人の目指すイメージに合うような目線やポーズ、ライトなどをいろいろ変え、無事に撮影が終わりました。
では、プロが私たちをどう変えてくれたのか。
もう一度、普段の姿をご覧ください。
凡人ぽさ溢れる私たちが、プロによって......。
え、変わりすぎ?まさに「与党感」と「野党感」!?
どちらも選挙ポスターに写ってそうだし、当選しそうな気がする...?
普段こんな生活をしている私たちだって......。
政治家っぽい!
情けなさそうにしか見えない私たちだって......。
めちゃくちゃ政治家っぽい!
山口さんが話すそれぞれのポイントはこうです。
「与党は、どっしりと構えて受けて立つという感じ。安定感と落ち着き、それまでの政治家としてのキャリアがわかるよう、ライトを調整して撮りました」
「野党のテーマは、挑戦です。頼りないと思われたらダメ。やる気があって、なんかやってくれそうだというのが、わかってもらえるように撮りました」
特に、野党役の瀬谷はポーズを取りました。なぜでしょうか。
「野党は、破れかぶれでやらないとダメだから。多少、目立つくらいのことをしないと。恥なんか知らないぞ、突き進んで行くぞ!という勢いが大事ですね」
ディーバの料金は、上半身(1着のみ)の撮影で3万5000円〜(40カット以上、ヘアメイクなど込み)。上半身+全身(各1着)は5万円〜。
通常の選挙ポスターは、こうしてスタジオで撮影してもらった写真をもとに、デザイン会社によって文字が入ります。
そこで、私たちも文字を入れてみました。すると、与党役の吉川は……。
対抗馬である野党役の瀬谷は……。
選挙ポスターを撮影するプロの手にかかれば、凡人である私や同僚の記者だって政治家っぽくなれるのではないか。
この仮説、正しいかもしれない。
数々の選挙ポスター用の写真撮影を手がけてきた山口さんは、政治家たちの裏側も見てきました。
笑いながら、こんなエピソードを話してくれました。
「困るのは、『(同じ選挙区の)対抗馬の写真が良いから、これを超えるのを撮ってくれ』というのだね。で、そのポスターを見ると、『それ僕が撮っている』なんてことがある」
「でも、僕が撮ったなんて言えないから、『頑張ります』と言いますよ。ライトを変えるなどしながら、試行錯誤をして良いものを撮ろうとしますね」
やりがいは「写真を見て、候補者が『頑張ります』『やる気が出ます』って言っていただける時」
不偏不党で、どんな候補者でも依頼に応じ、最高の写真を提供するそうです。
「どの政党の方や候補者の方も、日本のために頑張っていると信じていますから。とにかく良いものを撮ると決めています」
「今日もね、ばっちしでしたよ」
動画はこちら
選挙ポスターのプロにお願いしたら、平凡な記者たちでも9割増しで撮れちゃいました。 #選挙って意外と 盛れるかも?