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男性たちは「育休」について、どう考えておいたほうが良いのか。

小泉進次郎議員が「育休」を取得するか注目される中、元衆議院議員の宮崎謙介氏も議論に参加した。

フリーアナウンサーの滝川クリステルさんと結婚し、子どもを授かったことを発表した小泉進次郎衆議院議員が、「育休」を取るかがにわかに注目されている。

そうした中、父親支援事業を展開するNPOの代表理事や国会議員らが8月19日、男性の育休について議論した。

パネルディスカッションとして話し合いが持たれたのは、在職中に出産した経験のある議員・元議員による「出産議員ネットワーク」と、地方議員らによる「子育て議員連盟」の合同研修会だった。

ファシリテーターを務めたのは、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん。団体では、共働き時代の父親の育児を支援している。

安藤さんはまず2018年度の男性の育休取得率が、6.16%だったことに触れ、「女性の取得率からしたらまだまだ低空飛行」と指摘。

それでも、民間企業では「女性活躍の次のフェーズとして、男性に育休を100%取得させる企業がたくさん出てきている」とし、こう述べた。

「理由としては、女性の活躍をもっと進めたいのであれば、男性の育児・介護に対する休業を増やそうではないかということ」

加えて、育休を取得したいと望む男性が増えている中、人手不足などの理由に取得できない企業が採用面で苦戦するようになったからだとした。

宮崎元議員の過去と得たもの

パネラーの中で注目株は、元自民党所属の衆議院議員・宮崎謙介氏だった。国会に育休についての規定はなかったが、育休を取ることを宣言した。その後、不倫を認めて議員辞職した過去がある。

国会ではその後も、育休の規定は未整備のままだ。

育休取得を宣言すると当初、自民党内からも賛成の声があったという。しかし、次第に「育休なんてけしからん」などと反対の声が噴出。党幹部から説教を受け、「理解してもらえなかった」と明かした。

その後、議員辞職したことで育休取得は叶わなかった。その過去を冗談を交えながら話しつつも、取得しようと動いた理由の一つとして「衆議院全体の意識を変えなくちゃいけないね、という思いだった」と振り返った。

「私の足腰に踏ん張る力があれば、こうはならなかったなと、反省の思いも込めてしっかりと子育てをしております。妻よりも子育ては得意です。家事もやっています」

安藤さんはそれに対して言った。

「小泉議員がパパになった時に、自民党内で(宮崎氏と)同じ議論が起きるんだろうか。僕のいまの関心事です。どうも起きそうもないのかもしれない。それが今のフェーズなのかなと思っています」

また、宮崎氏は議員辞職後、2カ月間は専業主夫として子育てと家事に専念し、妻に喜ばれたことを経験をもとに話した。

「ミルクをあげることも、おしめを変えることも喜ばれるんです。けれど、やっぱり家事をやることが一番喜ばれるんですよね」

誰だって家事や育児のレベルには差がある。その前提で、「男性でも、時間とやる気と愛情があればできるんだということ」と安藤さんは言う。

母親としての視点を提供したのは、元愛知県尾張旭市議の大島もえ氏だ。

「妊活期」「妊娠期」「出産期」「産後期」「育児期」という5つの時期によって、親の役割が変わるとしたうえで、男女の違いを次のように伝えた。

「女性は母体になるので、自分ごととして位置付けるしかないんですよね。キャリアロスや経済ロスを心配して、子育てに参加しないという選択肢がないんです」

「男性は育休を取るか取らないかの選択の余地がある。それが仕事を好きな身として良いな、ずるいなと考えてきました」

母親にサポートが必要な理由

助産師で聖路加国際大学の五十嵐ゆかり准教授も登壇。医学的な観点から産後の女性がどれほど大変で、サポートがいかに重要かを伝えた。

女性は産後、乳房や会陰部の痛み、慢性的な睡眠不足や疲労などに悩むことが多い。そのほか、パートナーにも言いづらい尿もれや痔、脱毛が起こりうると紹介。

さらに、産後に身体が妊娠中よりも楽になるとは調査結果からも言えず、精神が不安定になりやすい時期であるとも指摘した。

「ですからサポートが必要な時期です。ホルモンのバランスが崩れているので、サポートをお願いしたいと言うことすら面倒になることもあります」

また、パートナーからのサポートがなければ鬱傾向が強くなり、自殺する女性も多く、子どもとの関わりの面でも障害が起こりうるとも述べた。

「母親が育児をするには、周りのサポートが大事です。サポートがあることで、母親が子どもに愛情を注げる。お母さんの気持ちが上がっていかないと、子どもに愛情がいかないんです」

「だから、お母さんにはサポートが必要です、と強く言いたいと思います」

育休義務化は「条件付き賛成」の"条件"とは

自民党の有志議員たちは6月、議員連盟を設立して男性の育休取得を義務化しようと本格的に動き出した。安藤さんはそれも議題にあげた。

自身は「条件付き賛成」の立場だとし、一部の母親たちの思いを口にした。

「産後3カ月は、育休を取るよりも、毎日早く帰ってほしいという母親も多いです。夫が育休を取っても、家事や育児において使い物にならない『ゾンビ問題』もありますから」

「だから、義務化の条件として全自治体で父親学級、ないしは両親学級を義務化するよう政策提言しようと思っています」

「先進的」な企業の取り組み

安藤さんによれば、社員に育休取得させようと自主的に動いている企業も多いという。

例として挙げた住宅メーカー大手積水ハウスの取り組みについては「日本の企業で先進的な事例だ」と評価した。

育休取得期間において会社から基本的に給与の支払いはない。雇用保険から「育児休業給付」が支払われるが、最大の支給額は賃金の67%となっている。

また、取得期間中に会社を離れることで、自身のキャリアにも影響するといった懸念があり、男性が育休を取りづらい状況がある。

そうしたことを踏まえ、積水ハウスでは育休取得期間中の給与は「有給休暇」扱いにし、キャリアにも影響しないと保証したという。すると、こうなったと安藤さんは話す。

「社内のムードも変わってきているし、女性たちがさらに働きやすくなって、業績も絶好調になっている状況にある。採用面でも新卒のエントリーが伸びています」

「競合他社は焦っている。積水ハウスは『男性の育休をすごく推進しているから、積水ハウスの家を建てようと思っている』という顧客が増え始めています」

安藤さんは最後、育休取得についての総括として、「家族が笑顔になり、自分の人生も豊かになるとポジティブなメッセージを発信してほしい」とし、こう締めた。

「育休取得に向けた動きが、これから後退することはない。どこでブレイクスルーできるかの状況です。ぜひ一人一人が考え、周囲の方に男性育休の意義を伝えていってほしいです」