• money-jp badge
  • worklifejp badge

老後に「2000万円が不足」とした金融庁に高まる批判と社会不安 麻生氏が釈明

国民に老後に備え、自助努力を促した形となり、社会不安や批判が広がっている。

金融庁が、年々進んでいる長寿化に伴って、退職後に95歳まで生きるのに公的年金などだけでは夫婦2人で毎月約5万円の「赤字」が続き、2000万円が不足するといった試算を出し、資産運用の重要性を示した報告書。

国民に自助努力を促した形となり、社会不安や批判が広がっている。

金融庁のトップである麻生太郎財務相兼金融担当相は6月7日、これを受けて赤字という表現をしたのは「不適切だった」との述べた。共同通信などが報じた。

報告書は、金融審議会の市場ワーキング・グループによる「高齢社会における資産形成・管理」。6月3日に公表された。

報告書では、今後、長寿化で「人生100年時代」という高齢社会を迎えるとされている点に言及。

公的年金の水準は「今後調整されていくことが見込まれている」とともに、 税・保険料の負担も「年々増加しており」、少子高齢化を踏まえて今後もこの傾向は「一層強まることが見込まれる」と分析。

それに備え、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度なのかを考えること、蓄えが尽きるまでの期間である「資産寿命」を延ばすことが必要だと強調した。

そのうえで「公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いない」が、老後を見据えて貯金だけでなく、長期・積立・分散投資による資産形成という「自助の充実」が必要であると説いた。

「30年で約2000万円が不足」の説明とは

それらを説明するモデルケースで「2000万円が不足」という表現が用いられたのだ。

報告書では、夫65歳以上、妻60歳以上の平均的な高齢夫婦のみの無職世帯の場合、年金などの収入と支出の差を見ると、「毎月の赤字額(の平均)は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる」と指摘。

そして今後、20〜30年生きるとすれば、不足額の総額を単純計算すると20年で約1300万円、30年で約2000万円となると導き出した。

これは、老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など「特別な支出」を含んでいないとし、こう見解を示している。

不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くの お金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。

社会不安や批判の声

この試算に対し、社会不安や批判の声が上がった。

消費抑制や少子化を加速させる懸念や、「年金を返せ」「今更2000万円も蓄えるのが困難な私たちは、老後どうやって生きていけばいいのでしょうか」などと切実な意見が、Twitter上で広がりを見せた。

また、麻生氏が報告書の公表翌日に報道陣に語った次の言葉も、その熱を高まらせた。

「100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか?普通の人はないよ、多分」

「そういったことを考えて、きちんとしたものを今のうちから考えておかないかんのですよ」

麻生氏「不適切だった」

この言葉に対し、「無責任でひどい言い様だ」「なんで上から目線なんだ」などの声もあがった。さまざまな反応を受け、麻生氏は7日、釈明したとみられる。

日経新聞などによれば、麻生氏は「あたかも赤字になるような表現は不適切だった」とし、2000万円という金額については以下のように述べたという。

さらに豊かな老後を送るために状況に応じて上手に資産形成に取り組むことを申し上げてきた。


一定の前提で単純な試算を示しただけ。別にそうではない人も多くいる。

また、公的年金制度については「老後の生活設計の柱で、持続可能な制度をつくっている」と強調した。

報告書を巡っては、野党が追及姿勢を強めている。自公政権が「100年安心」としてきた年金制度の破綻を示唆するもので、「政府の責任放棄だ」などと批判している。