参院選、あの政党は何を伝えたいの？「第一声」から見えること、見えないこと

今回の改選数は124議席。選挙後の全議席数は245となる。選挙前、金融庁の審議会の報告書に端を発した年金問題が争点に浮上。憲法改正の発議に必要な「3分の2」を自民党を中心とする改憲勢力が確保するかも焦点となる。

「第一声」とは、選挙期間における最初の演説のこと。報道でも最も注目されることから、各政党の党首らが党の方針や政策などを最初に語る場となっている。

この国のリーダーたちは、どんな演説をしたのか。BuzzFeed Newsでは公職選挙法などが規定する政党要件（国会議員5人以上か、直近の衆院選か参院選で2％以上の得票）を満たす各党の第一声を、テキストマイニングの手法で分析した（※演説の詳報はこちら）。

テキストマイニングとは、文章を単語レベルで分解し、「ワードクラウド」や単語の出現頻度などを分析するもの。

※分析には「ユーザーローカル」のツールを用いた。「ワードクラウド」では文章中でスコアが高い単語を複数選び出し、その値に応じた大きさで示される。頻出しているものが大きい、使用回数が少ないものが小さいとは限らない。品詞の種類で色分けされ青が名詞、赤が動詞、緑が形容詞、灰が感動詞を表す。

自民党総裁の安倍首相の第一声は、福島市飯坂町の果樹園での演説。演説時間は20分36秒だった。

「森まさこ」は応援候補の名前。「民主党政権」は、野党への批判で登場した。「桃」は演説前に果樹園の桃をご馳走になったことを紹介した場面で用いた。

安倍首相は「皆さん」は聴衆への呼びかけに、「私たち」は自党の政策アピール時に用いた。

与党としては争点にしたくなかった「年金」だが、制度持続の安心感をアピールするために11回登場した。

「福島県」「復興」など、激戦の福島選挙区における震災復興を意識した言葉も。「民主党政権」「共産党」「統一候補」は6回使用。野党の政策を批判する場面で用いられた。なお「自民党」は3回だった。

枝野代表の第一声は、東京・新宿駅東南口での演説。演説時間は14分12秒だった。

「あなた」は聴衆への呼びかけで使用された言葉。他党よりも使用頻度が多かった。

枝野代表の演説では、「社会」「暮らし」など聴衆に生活を意識させるような言葉が目立った。

「あなた」「一人ひとり」「多様」「豊か」など、聴衆の参加意識を喚起させたり、多様性を意識させるような言葉選びも特徴だ。

「民主主義」は、公文書の改ざん事件に触れた場面や「民主主義のバージョンアップ」というキャッチフレーズなどで登場した。

玉木代表の第一声は、静岡県掛川市での演説。演説時間は7分11秒だった。

「榛葉賀津也」は応援候補の名前。「掛川城」は、演説場所の掛川市を意識した言葉選び。かつて掛川城には、戦国大名の山内一豊が居を構えた。玉木代表は山内一豊ゆかりの高知出身。それにかけて縁をアピールするために用いた。

玉木代表の第一声は静岡選挙区の掛川市の演説。同じ言葉をあまり用いなかった。応援候補の名前が6回登場。激戦区での現職の応援を意識したようだ。

山口代表の第一声は、神戸市中央区での演説。演説時間は15分2秒だった。

「高橋光雄」は応援候補の名前。「声」は、有権者の要望を政策に取り入れたことをアピールする際に用いられた。

山口代表も、聴衆に「皆さま」と呼びかけた。投票の「お願い」は8回。

他党にない特徴が「モザンビーク」。応援候補の経歴紹介で登場した。比例区を意識してか、自党「公明党」も14回と頻出だった。

志位委員長の第一声は、新宿駅西口での演説。演説時間は26分29秒。国政政党では最長だった。

党名の「日本共産党」が目立つ。比例を意識し、党のアピールと争点政策に重点をおいたことが影響したとみられる。「吉良」は応援候補の名前。動詞の「まいる」は「〜してまいります」という使い回しで頻出した。

志位委員長の演説では、聴衆に呼びかける「皆さん」が最多で30回。次点の「年金」は、年金問題を争点とし、自党の政策アピールと政権批判の場面で登場。憲法改正の是非も護憲の立場から意識し、「9条」が7回用いたられた。

松井代表の第一声は、大阪市中央区での演説。演説時間は19分20秒だった。

目立つのが「人たち」。松井代表は演説の中で、特定の人々を紹介する時に「そういう人たち」「永田町の人たち」「この人たち」という言葉を用いた。

「僕」は松井代表が演説で用いた一人称。「梅村」は応援候補の名前。

松井代表の演説では、本拠地・地元を意識してか「大阪」が19回登場。また「永田町」「国会議員」など、中央と地方を比較する言葉も用いられた。大阪での実績をアピールする「約束」「改革」などの言葉も特徴。

社民党は不出馬を表明した又市征治党首に変わって吉川幹事長が第一声に望んだ。演説場所は新宿駅南口。演説時間は13分06秒だった（＊緊急車両通過による演説中断を含む）。

「玲子」は応援候補の名前。争点となる年金問題に重点を置いたことから「国民年金」「100年（安心）」などの関連語が大きく表示された。

選挙の結果次第で国政政党要件を喪失する可能性もあることから、「お願い」も重みを増す。演説では「崖っぷち」という言葉も登場した。

名詞では、投票の「お願い」や、争点となった「年金」が目立つ。動詞では政策アピールで「〜してまいります」という表現が用いられやすいことから、「まいる」が目立つ。一方で、10月に控えた「消費税」の増税は目立たない結果となった。

呼びかけの「皆さん」が最多の130回。次点は争点の「年金」が56回。与野党を問わず、演説で紹介される場面が多かった。ただ、これ以外に具体的な政策につながるワードはあまり見られなかった。

党首らの第一声では、応援する候補者の人となりや経歴のアピール、自党のイメージアップ、他党の批判がメインになりやすいことが伺える。