川崎・登戸殺傷事件で実施された「トリアージ」とは

    「トリアージ」は、フランス語の「triage(選別)」が由来。

    川崎市多摩区の登戸駅付近で男が18人を刺し、自らも刺したとみられる事件。警察が身柄を確保した50代の男を含む3人の死亡が確認された。

    川崎市は28日午前の記者会見で、事件現場で消防隊員らが負傷者の容態を調べて搬送の優先順位を決める「トリアージ」を実施したと発表した

    「トリアージ」とは

    トリアージとは、大規模な災害などで多数の負傷者が発生した場合、その緊急度や重症度に応じて治療優先度を決めることだ。

    負傷の程度に応じて治療や搬送の緊急性などを判断し、赤(緊急治療)、黄(準緊急治療)、緑(軽傷)、黒(救命困難)の順で、それぞれの色のタグを患者に付けていく。

    「トリアージ」はフランス語の「triage(選別)」が由来。「トリアージ ハンドブック」(東京都福祉保健局)によると、19世紀初頭のナポレオン戦争のころには戦場で傷病者を区別する際に使われるようになり、やがて災害医療の分野においても用いられるようになったという。

    用いられるタグは3枚つづりの紙で、水に濡れても字が書けるなど丈夫なもの。大きさは縦23.2cm、横11cm。台紙がわりに片手に持って記載できる寸法だという。

    裏面は医療従事者などが搬送・治療上で特に留意すべきことや応急処置の内容などを記載できるため、カルテとして活用できる。

    社団法人横須賀市医師会は、トリアージの意義について「多数の傷病者が一度に発生する特殊な状況下において、現存する限られた医療資源の中で、まず助かる可能性のある傷病者を救命し、社会復帰へと結びつけること」としている。

    東京都福祉保健局では、「災害時の医療救護に当たっては、現存する限られた医療スタッフや医薬品等の医療機能を最大限に活用して、可能な限り多数の傷病者の治療にあたることが必要」と説明している。

    トリアージの実施基準

    第1順位:最優先治療群(重症群)=赤色

    傷病状態及び病態:生命を救うため、直ちに処置を必要とするもの。窒息、多量の出血、ショックの危険のあるもの。

    具体的事例:気道閉塞、呼吸困難、意識障害、多発外傷、ショック、大量の外出血、血気胸、胸部開放創、腹腔内出血、腹膜炎、広範囲熱傷、気道熱傷、クラッシュシンドローム、多発骨折、など。

    第2順位:待機的治療群(中等症群)=黄色

    傷病状態及び病態:多少治療の時間が遅れても、生命には危険がないもの。基本的には、バイタルサインが安定しているもの

    具体的事例:全身状態が比較的安定しているが、入院を要する以下の傷病者(脊髄損傷、四肢長管骨骨折、脱臼、中等度熱傷など)

    第3順位:保留群(軽症群)=緑色

    傷病状態及び病態:上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としないものなど。

    具体的事例:外来処置が可能な以下の傷病者(四肢骨折、脱臼、打撲、捻挫、擦過傷、小さな切創及び挫創、軽度熱傷、過換気症候群など)

    第4順位:無呼吸群、死亡群=黒色

    傷病状態及び病態:気道を確保しても呼吸がないもの。既に死亡しているもの、又は明らかに即死状態であり、心肺蘇生を施しても蘇生の可能性のないもの。

    具体的事例:圧迫、窒息、高度脳損傷、高位頚髄損傷、心大血管損傷、心臓破裂等により心肺停止状態の傷病者。

    UPDATE

    共同通信によると、神奈川県警は28日午後、事件で新たに男子児童1人が軽傷を負っていたと発表。被害者は計19人となった。