玉木氏「年金積立金は36年後に枯渇」安倍首相「私も反論させて」(党首討論・発言詳報)

    国会では6月19日午後、安倍首相と野党党首の党首討論が開かれた。国民民主党の玉木雄一郎代表は、枝野氏に続き金融庁の金融審議会の報告書を念頭に討論した。

    国会では6月19日午後、安倍首相と野党党首の党首討論が開かれた。

    国民民主党の玉木雄一郎代表は、枝野氏に続き金融庁の金融審議会の報告書を念頭に討論。

    公的年金制度の健全性をチェックする財政検証に触れて、「5年前の財政検証の最低のケースがいまの経済実態に近い。このままでは36年後に積立金が枯渇する」と主張した。財政検証は5年に1度、発表される。

    これに対し、安倍首相はマクロ経済スライドの有用性を強調し、公的年金制度が持続できるものであると説明した。

    安倍首相と玉木氏の討論時間は14分。発言は玉木氏が3回、安倍首相が2回。やりとりは2往復だった。

    討論の詳細は以下の通り。

    玉木氏「報告書の拒否はガバナンス上問題」

    玉木1:一部報道で、総理が「金融庁は大バカ者」と激怒したと報じられているが事実か。

    安倍1:私はめったに激怒しない人間として、自由民主党では、だいたいこう理解されている。温和に、円満に生きているつもりであります。

    大切なことは、国民に誤解を与えないそういう資料を作ることではないかと思っています。

    玉木2:金融庁の本来の大臣は内閣総理大臣。総理、報告書あるのでお渡しするから読んでください。忙しいと思うので全部付箋つけてきましたから読んでください。まっとうなことが書かれている。

    今回、麻生さんが受け取らないと言ったのはまずい。行政のガバナンスとして。専門家も事務局としてとりまとめた金融庁の役人のかたも一生懸命まとめたと思う。諮問したのは麻生大臣だ。

    頼んでおいて、出てきたら受け取れないと。こんなことやっていたらやってられないということになりますよ。

    ますます行政のガバナンスが衰えていくので、その意味でもしっかり受け取って。

    総理に伺う。100年安心、これは色々な意味が込められて与野党政治家が話すが、基本的には100年間制度が安定的に保たれるということ。積立金が、101年目に1年間の支払いが残っている。

    そのために少子高齢化に合わせて自動減額の仕組みを入れて、なんとか制度を維持しようという仕組み。

    総理は年金制度の持続性は担保されていると何度も答弁されているが、その根拠がわからない。何を持っていっているのか。

    5年前の財政検証がもしその理由なら、それは崩れていると思う。

    総理に伺うが、新しい財政検証をなぜ速やかに出さないのか。これが出てこない限り、今の最新の年金制度の安心が保たれているかどうかは判断できない。

    それとも総理はこっそり、我々は見ていないが、総理は見た上で100年持ちそうだと答弁されているのか。総理もまだ見ていないのか、

    安倍首相「年金の持続可能性は担保されている」

    安倍2:まず先程の枝野さんも誤解されたかもしれないが…。

    (野次が強まる)

    これは、党首討論でありますから、討論なんですね。私が質問に答えるだけではなく、私の反論もさせていただきたい。

    (野次が強まる)

    報告書については頂いていて、読んでおりますから、わざわざ付箋を入れていただきましたが、これはもう結構です。

    (報告書を返す)

    100年安心については、平成16年の改正においておこなった。私は当時幹事長だったが、この際にマクロ経済スライドを導入する上において、その前から議論が始まっていて、部会長を務めていたこともあったので議論には参加していた。その結果、どういうことが決まったか。

    たとえばマクロ経済スライドを導入することに、短くしますが、大切なことなのでお答えさせていただきたい。国民の皆様に説明しないといけない。

    マクロ経済スライドというのは、将来の平均寿命の延伸あるいは被保険者の増減等を入れて、物価の上昇あるいは賃金の上昇にはついていけないけど、マイナスにはなっていくわけだが、マイナスをすることで持続可能性を担保する。将来の年金受給者の受給額をなるべく確保していく仕組みを導入した。

    しかし、デフレ下ではこのマクロ経済スライドは発動されなかったが、安倍政権になって消費税が引き上がった時に一回、今度初めて賃金スライドが0.6だったがマクロ経済スライドのマイナス分と、いままでのキャリーオーバー分の差を引いても、マイナス1であり、初めて発動されプラスになった。

    より持続可能性が担保されたということになる。

    これは討論でありますから、こちらの考え方も述べさせてください。年金の持続可能性について申しあげている。

    そこで、大切なことを申し上げいる。その上で、年金財政検証は5年に1度おこなう。平均寿命や出生率、支え手の増減もある。そして、今度の財政検証は在職高齢年金の見直しのオプションも入れる。

    このオプションがどうなるかも含めて議論をしていく。いま、厚労大臣がそのように答弁している。

    私自身は、もちろん財政検証をしている最中なので、その報告は受けていない。いつ出すかということについては、政治の状況とかかわらず、しっかりと専門家が出てきて数理計算をして行く上で大切な検証。

    政治とは関わらず、政局とは関わらずしっかりと検証していただき報告をしてもらいたいと考えている。

    玉木氏「年金、全然100年安心ではない」

    玉木3:簡潔にお願いします。私が申し上げいるのは、5年前の財政検証も崩れている。

    8つのパターンがあるうちに、半分の4つは、ちゃんと働いていたら、平成29年、30年、今年で厚生年金の調整は終わっている。これ以上減額しなくていい。

    でも、もっと減額をしていかないといけない。マクロ経済スライドを適応しなければいけないとうことは、5年前の前提が崩れている。

    もう一つ。新しい財政検証は出てきていないが、前提となる経済前提は3月に発表されている。ご存知か。それを見ると5年前の経済前提が、いかに楽観的で全部外れまくっていることが既に発表されている新しい財政検証の経済前提で明らかになっている。

    前の財政検証のHまであったケースのうち、最悪のケースでの実質賃金の伸びは0.7%で設定されていた。今回の最悪のケースは0.4%。ただ、安倍政権の過去6年間の実質賃金の平均値はマイナス0.6%。最悪のケースにも足りていない。

    予算委員会でも出した、いわゆるトータルファクタープロダクティビティという、一番最初の経済の成長の前提となる全要素生産性は、(前は)0.5あった。最悪のケースで。

    今回3月に発表された経済前提、最悪のケースは0.3にまでなった。2017年の生産性の実質値は0.3だった。

    5年前の財政検証の最低のケースは、いまの経済実態に一番近い。

    そのケースだと、あと17年で早くも所得代替率が50%に達して、さらに財政の均衡を達成しようとすると、100年どころか36年後に積立金が枯渇することになる。全然100年安心ではない。

    さらに5年前の経済前提よりも、この3月にもうすぐ出てくるであろう財政検証の経済前提はさらに悪い。であれば、100年間の年金財政の安心なんて、誰も確たる事は言えない状況では。

    それなのに総理が、100年安心だ安心だと。制度の安心だと言っているのは、そんなのなんの確証もない。

    で、今回の報告書の問題。やっと出てきたのに、受け取らない。なきものにする。都合の悪いことを隠蔽したり、隠したり受け取らない、なきものにする。こういう政権の態度が、国民に不安を与えている。

    将来が不安だから、もっと貯めなきゃいけないのかなと、消費が喚起されるどころが萎縮している。安倍政権のこうした隠蔽体質が、アベノミクス成功の一番の阻害要因では。

    いま総理がやるべきなのは、そういった不都合であっても真実を出して、国民にどういう年金の姿になっているのか、将来どうなるのかを正直に語る政治を実現することでは。

    今のままでは、数字も信じられない、数字を扱っている政府を信じられない。

    これでは国民の将来不安は消えない。私たち政治家がやるべきなのは、不都合であっても真実に向き合って誠実な政治を国民にみせることでは。

    選挙が近いからといって、隠したり、時には改ざんしたり、こんなことでは行政の信頼は得られない。なにより、年金制度の信頼は得られないと思う。

    極めて本質的な議論をしている。私も喋らしてください。総理、沢山しゃべっていましたからね。

    私たちが大事だと思うのは、家計を重視する経済政策に変えることでは。これから米中の貿易戦争は厳しくなる。外需には頼れなくなる。そんな中で内需、とりわけ消費、家計を下支えする経済政策が必要。

    私たちは国民民主党としても、家計第一の経済政策、これを掲げて子育てや、家賃補助などきめ細かく対応していていきたい。国民の不安に応える、そんな政治をすすめていくことをお誓い申し上げ、私の討論を終わりたい。